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――続・大会議場――
大会議場の広さを堪能したあと、各々思い思いの席に座ってもらった。椅子の硬さやデスクの高さとかを見てもらおうと思ったわけなんだが…。
「こ、これは!!」
突如ファシアナが叫び声にも似た声をあげる。その声に他のお歴々も何故か納得と同意の表情をしている。…何がどうしたんだ?
「どうしたんだファシアナ。何か不具合でも――」
「なんて…なんて凶悪な!このように心地の良い椅子、もうここから離れたくはなくなるではないですかあ!!!」
今度は大量の涙を流している。あー……座り心地に感動してくれてるんですね。
「ふっ、同意。今にも夢の世界に誘われかねんほどの心地良さでござるな」
ちょっとそれは問題あるかなー…会議中に居眠りする人が増えそうだし。
「ビイト様、この椅子と同様の物が我々の執務室にも?」
「ああ、置いているよ、メラン」
「我が社で開発している物にもここまでの製品はございません。商品展開の方はお考えか?」
「…いや、全く。ただ欲しければ図面をあとで渡すよ」
「え、宜しいのですか!?」
「ああ、そんな物でいいなら」
だって、俺的には割とありふれた物だし。…そう言えば、ゲームを作っていた時点ではこういった生活用品って、かなり適当にデザインしていたかもなー…ちょっと罪悪感があるかも。
「では、後ほど商品化された際のビイト様の取り分を御相談させていただきますな」
「ああ、わかった。セレナと打ち合わせてくれれば確実かな」
「了解いたしました。今後はセレナ博士を窓口にと云う事ですな」
「そうだね。他にも目につく物があれば、セレナに相談してくれれば助かるかな」
「「「はっ!」」」
メラン、ホムラン、ルールリの3人が同時に傅いた。ちゃっかりホムランとルールリが話に乗っかって来るとは…まあ、セレナに投げたからいいや。
「さて、それじゃあこの会議場の機能を見せようか」
俺はおもむろに、自分の席に備え付けられているスイッチの一つをONに入れると、議長連+αを見渡した。スーっと上昇する感覚。全員の視線を下の方から受ける。
「ビイト様の席が浮いた…のか?」
「これは、浮遊魔法?」
ニヤニヤとしたいところだが、俺は堪えながら手許のスティックを操作しつつ椅子に取りつけられているボタンを押す。椅子はスティックの操作どおりに右に左にと空中を浮遊し、俺の背面には巨大な透過モニターが出現した。
「「「「おお!」」」」
「今は取り敢えずこの世界の地図を映し出しているが、このモニターを使えば全体に見えるように会議の議題内容を映し出せるし、動画なんかも映写可能だ。そしてこうして、講演者なりが直接映像の横に立つ(?)事も出来る。操作方法などはデスク横にあるので、それを参照して欲しい」
技術職の連中も感動しているが、ザスカリも偉く感動しているようだった。シュテンは…口をポカーンと開けてるなあ。
「さあ、大まかにはこんな感じだ。では次に行こうか」
椅子を元の位置に移動させて降りると、俺はぷにこと共に会議場の入り口の方へと足を進めた。
――練兵闘技場――
「うおおおおお!ここか!いや、ここが闘技場でござるか!!」
シュテンの喜びようが半端ではない。
広さは先程の会議場より広く、観客席なども勿論ある。
「あの機銃のような物はなんじゃろう?」
ホムランよ、いい所に気付いてくれた。
「あれは動く的などを射出する装置だ。魔法や弓などの訓練に使えるかなと思って設置したんだ」
「射出でござるか!回避の特訓にも使えそうでござるな!!」
え…それはいくらなんでも危なくないか?
「盾を構えて挑めば、防御の訓練にもなりそうじゃわい」
ホムラン?お前もか!
「…脳筋は置いといて、ザスカリはどう思う?」
おや?なんか目を輝かせているような…?
「素晴らしい!!物理防御魔法の耐久実験を是非ともやりたかったのでありますが、この環境ならば可能でありましょう!!」
あ…こっちもヤバかったかも…。
その後、実際に器具を試す事になったのだが、鉄球を射出してそれを盾と剣で捌くシュテンの姿を目の当たりにしたのだった。脳筋恐るべし…。
そうして『城』の各所を巡り、最終的には各自の執務室を案内した。こちらには仮眠室なども併設しておいたのだが、この『おまけ』の方が喜ばれた感がある。
ルールリなどは「今日はここに泊まるわさ!」と、ベッドの上で跳ねながら駄々をこねていた。どうやら椅子同様、ベッドの感触も大好評だったみたいだ。メランはこれにも食指が動いたようで、『おねだり手帳』に更なる書き込みを加えていたようだった。
夕食も、やはり銀翼亭で試食会込みで行われた。昼よりもデザート類が増えている。飲み物に至っては、厨房で自動生成される生ビールを堪能した。
「くう!癒されるわさ~~~!」
「ぷはあ!生とはなんとも贅沢!わしはここから離れんぞ~~!!」
ホムラン、それはリサ達に迷惑だ。
「ふむ、エールとは違い身に沁みますな」
ザスカリは味を確かめるようにチビチビと飲んでいる。ビールは初めてらしい。
「これは冒険者達にうけそうでござる。マスター、おかわりを!」
シュテン、お前はもう何杯目だ?目の前がジョッキで埋め尽くされているじゃないか…。運んでいるリサも、厨房にいるスラフも、顔は笑ってるが口元が震えてるぞ。
そんな事を思っていたら案の定、厨房のスラフと目が合うなり手をヒラヒラさせて呼びつけられた。
「今晩の分は請求してかまわないよな?」
「あ、ああ…材料費はかかってないが、労力が…な…。連盟宛てでいいんじゃないか?」
「…ビイト、接待に夢中になっていて気付いてないな」
「なにが……あ」
スラフの指差す方向には、カレンとセレナ、そしてファシアナが座っている。彼女等はカウンターにいるのだが、そのカウンター席…主にセレナの前には、シュテンの席と同じような光景が広がっていたのだった。
「俺の払いでいいや…」
「毎度!」




