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ホーム③

 ある程度食事が進み、誰もが落ち着いた表情になってきた時、ザスカリが何かに気付いたように俺を見てきた。


「どうしたんだ、ザスカリ?」

「あ、いえ、そういえば『ホーム』と地上との行き来は、毎回あの戦艦になるのでしょうか?」


 尤もな疑問だ。他の議長達も今更気付いたようで「あ」と言うような顔をしている。そんな議長達の表情を、スラフとリサはニコニコ…いや、ニヤニヤと見ていた。


「ビイト、もういい加減例の物を渡したらどうなんだ?」

 ニヤニヤしながらスラフに言われ、俺はアイテムボックスから人数分の指輪を取り出した。指輪と言っても質素な見た目に仕上げてある。


「指輪…でござるか」

「ふむ、大した細工もされてはいないが…ん?これは…」

「これ!裏を見て!転移魔法の魔術式が描かれてるわさ!」


 そう、ルールリの言うとおり、その指輪は転移魔法の施されたアイテムである。今朝方に錬成したばかりの代物だ。ホームに住むメンツには既に渡してある。術式を構築する技術はプログラムの構築に似ていた為、案外簡単だったんだが…。


「この術式は…ふむふむ…これは消費型ではないぞ!素晴らしい!何度でも使える仕様だ!」


 ザスカリが術式を読み解いて大きな声で驚いていると、ルールリとホムランも目を大きく開いて術式の部分を何度も覗きこんでいた。


「して、ビイト様、このアイテムの効果範囲は?」


 値踏みするような目つきでメランは指輪を眺めながら、俺に質問してきた。うーーん、俺としては超空間魔法でも割と簡単な術式のつもりで作ったんだが…。どうやら一般に普及している転移アイテムは、一度使うと消えてしまう消費型のようだ。少し頑張りすぎたかなぁ…?


「効果範囲は一応世界中の何処からでもなんだが、ホームへの一方通行の転移門を開く事ができるよ。因みにここから何処かへ行く場合は、世界樹の前に行ってその指輪に『ゲートよ開け』と唱えれば任意の場所に飛べるようになってる」



「つまり、この指輪はホームへ来るための転移アイテム兼世界樹のゲートの鍵と言うわけさ」


 スラフよ、何故お前が得意げに…まだお前も試していないだろうが…まあ、いいか。


「そういうわけで、盗難防止の為に敢えて質素な見た目にしたんだが、気に入ってもらえただろうか?」

「はい!ビイトさんから指輪を貰えるなんて、とてもとても嬉しいです!」


 リサ…君に聞いたわけじゃないんだが…しかも左手の薬指にはめてるし…。他の連中がなんか引いてるし…カレンはカレンでリサを睨み付けてるし…。はあ…。





 食事を堪能した後は、早速議長団を引き連れてギルド連盟本部…通称『城』へと足を運ぶ。カレンとセレナは、スラフ達の手伝いで銀翼亭に残った。尤もセレナは、今後店で出す予定のデザートの試食が目的のようだが。食べ過ぎないように頼む。





「まずは大会議場を目指そう。連盟本部としては、あそこがメインとなるだろうしね」

「確かにそうでありますな」


 ザスカリとメランは同意してくれているのだが…ホムランはここの鍛冶用の炉が気になるようだし、ルールリは錬金釜が気になって仕方ないようだ。そしてシュテンは…。


「私は練兵闘技場を早く見たいでござる」

 ……デカい図体で、何を我儘を言ってるんだ。




――大会議場――


 長い廊下を通り…と言っても、ここも動く歩道と同じ造りなので移動は疲れない。幾つかの自動検閲機を通過した先に大会議場はある。初めの1つ目で、武器を所持していたシュテンが検閲機のアラームに驚いていた事は置いておこう。


 自動で扉が開くとメラン以外の皆が驚きの声をあげた。グリフォンにも同じ技術が使われていたのだが、軍艦に装備されている事にはスルーだったのに、建物に装備されているだけで反応がこうも違うのかと俺も少し驚いた。どうやらそう言った設備に慣れているのは共和国や帝国で生活している者だけであるようだ。思い起こせば、確かにファルコ王国のイーシスには宿に電灯さえなかったものな。


「ここが大きな会議用の部屋になる。収容人数は500人くらいかな」

 全員の口がポカーンと開けられている。…大きくし過ぎたか。


「これほどの広さの会議場は…共和国の国会議事堂の議会場に相当しますな」

 メランが目を白黒させながら教えてくれた。ザスカリはなんか目を見開いたまま動かなくなってるけど、大丈夫なんだろうか?


「これなら、複数のギルドによる共同会議も可能かなぁ…なんて思って造ったんだが…広すぎたかな…?」

 うん、自重しよう。やり過ぎたようだ。


「確かに広い…。ギルド連盟各ギルド各支部総出で会議ができそうです。こうなると、今まで持ち回りで盟主や議長を決めていましたが、選挙によって決めると言う方法も可能になったと思います」


 壊れたロボットのように動かなくなっていたザスカリの口から出た言葉に、議長達もハッとしたような表情をした。しかしそれ以上に、ザスカリが少し嬉しそうな表情を浮かべた事が俺には印象に残った。


「なるほど、長老職であった盟主を選挙制に…ですか。それは面白い」

 どうやらメランは、今までの連盟の組織に納得がいっていなかった様子だ。ザスカリに笑みを向けている。そして当のザスカリ自身も今の会話の流れから、長い間長老として盟主の座にいた事に多少なりとも不満があったようだった。


「新本部の発足と共に、改革だわさ」

 ルールリがニコリと笑うと、ホムランもシュテンも同意したかのように笑みを浮かべた。どうやら議長間での合意は成されたようだ。そんな様子を見て、俺も釣られるようにして笑みを浮かべたのだった。

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