ホーム①
あらかた必要な建物を建造し終えた頃には、既に夜中になっていた。
作ったのは自分達の家とスラフ達の家、そして宿屋と言うよりホテル…?兼居酒屋…ではないな…見た目は一流レストランだ。後でシャンデリアでも追加しておこうか?
だが、今回建てた一番重要な施設は勿論、ギルド連盟本部だ。
「まるで城か砦だな」
スラフの感想である。リサもカレンもこれには同意のようだ。
「ビイト氏、研究施設なんかも入れてくれてある?」
セレナは箱よりも中身が気になるらしい。
「ああ、魔法、錬金、鍛冶、商工ギルドには必要だろうからね。それぞれに用意してあるよ。あと、冒険者ギルドと魔法ギルド共用になるけれど、練兵闘技場も入ってる」
「練兵闘技場かぁ!あとでアドリア―ナ達と使っていい?」
こちらにはカレンが食いついたな。喜んでくれているようで嬉しい。
「ああ、構わないよ。何せこのガーデンは、こちらでの俺達の棲み家なんだから」
「棲み家ねえ…」
「なんか表現が山賊とか海賊みたいな…」
「「「……」」」
俺達がそうして物思いに耽っている間、リサとスラフは新居よりも先にホテルの様子を見に行っていた。
「……じゃあ、ホームってのはどうよ?」
「ホームかぁ…」
「いいかもしれないわね」
気付けばタッチパネルをタッチして、俺は入力を始めていた。
『名称変更を受け付けました。これよりこの島の名称は、『ガーデン』から『ホーム』となります』
俺達はその日、夜中の2時を回った頃になって、ようやくそれぞれの新居で睡眠をとったのだった。
――翌日正午過ぎ
俺とカレン、セレナの3人で飛行戦艦グリフォンに乗り込み、イーシスへと向かう。ぷにこはスラフ達のお手伝いとして残した。
さて、今回はギルド連盟旗を掲げていたし2度目の寄港でもある為か、軍港からは挨拶程度の光魔法の合図しかなかった。
漁港沖に停泊すると、桟橋先端から合図があったので軍港と同じようにこちらも合図を送る。すると昨日の艀舟にファシアナが乗船してグリフォンへとやって来た。ドギは恐らく破壊されたギルド会館の後処理で忙しいのであろう。
「到着お待ちしておりました。議長団一行とその介添えとなります私、イーシス冒険者ギルド長の代理として参りましたファシアナの乗艦許可をお願い致します」
「歓迎しよう。今日は少し波が荒い、海に落ちる事のないように気を付けて乗り移ってくれ」
ドギの代理と言うお題目があるせいか、ファシアナは緊張しており、どこかギクシャクしていた。まあ、5大ギルド長を引き連れての乗艦ともなれば、仕方のない事なんだろう。
ザスカリを先頭に、順次艀からグリフォンに乗り移ると、最後はファシアナが乗艦した。海風に長いスカートが捲り上げられそうになり、顔を赤らめている。…降りた時のように作業ズボンで来れば良かったのでは?と思ったが、お偉方の接待役みたいなものも兼ねているのだろう。着慣れない少し高そうなドレス姿が、少し気の毒に思えた。
連盟議長団は、ブリッジまでの道程で随分と声をあげていた。特に興味深そうにしていたのは、やはりこの道のプロとも言えるメランとルールリ、そしてホムランであった。
「ふむ、この技術は我々が製造している飛行艦の一歩先を行っておりますな」
「わしは何よりもこの艦の構造材が気になるのう。今まで見た事ない輝きじゃ。ドワーフ魂が擽られるわい」
「それだけじゃないわさ。この艦は戦闘面だけではなく居住性に関しても考えられているんだわさ」
わさ?わさわさ?ルールリの素の話し方ってこんな風に設計したっけかなぁ…?ホビット族の訛りかな?
「3人にはあとで、この艦の設計図を渡そう。再現できるかどうかはわからないけどね」
何しろ構造材がオリハルコンやらミスリルやらアダマンタイトやらのレアメタルの複合材を使いまくってるし、パラダイム・テクニカルで作っている艦よりも2~3世代先の技術をふんだんに使っているはずだから、まあ、まず再現不可能だと思うよ。
「な、なんと!是非お願い致します!」「さすがは我らがアークマスター!」「太っ腹すぎてクラクラするわさ!」
喜んでくれているようで嬉しいけど、ザスカリとシュテンが羨ましそうな顔してるなあ。こいつらにも何か土産を用意してやるか。
「ザスカリとシュテン、二人には魔法体系書とスキル名鑑でいいか?」
「「有り難き幸せであります」」
ありふれた物に思われただろうが、少しだけ二人の表情が明るくなったから良しとしよう。
ブリッジに辿り着きカレンとセレナを紹介すると、シュテンがズンズンと先行してカレンに握手を求めた。
「カレン様、お初にお目にかかります。シュテン・オーグラーと申しまする。以後お見知りおきを…」
2メートル以上の大男が、150センチ程の女性に深々と頭を下げている様子は異様と思えた。実際、同じように挨拶をしようとしていた他の議長団は、若干引いているように見える。
「え、えと、シュテンさん?」
「ビイト様と並んで伝説のSSランクの冒険者であられた貴女様に会えた事、このシュテン、感無量でござる!!」
そういう事か。ゲーム制作中に、カレンと二人でデバッグと称してモンスターを狩りまくってたんだから、そうなるよなぁ。でもカレンの場合、俺と違ってHPMPは普通だったみたいだけどな。第2期召喚て事で補正されたんだろう。
「あ~…でも今の私はシュテンさんより弱くなってると思うから、期待ハズレだと思いますよ?」
「それでもであります!それでも!貴女様は生きた伝説なのでござる!鍛え直すのであれば、何時でもお呼びくだされ!!」
「ビ、ビイト…」
シュテンの迫力に押されて、カレンが涙目で俺を見て来るが…暑苦しそうなので、シュテンはお前に任せたぞカレン!
そしてセレナの前には、いつの間にかルールリが握手を求めて迫っていた。
「セレナ博士でありんすね!私、錬金ギルド議長のルールリ・ルーラーでございます。どうぞよしなに」
「ええ、よろしく」
一体セレナに関してはどう伝わっているのだろうか?デバッグには参加していないが、一部のプログラムの補正をリモートで手伝ってもらった事があるから、妙な権威が付いてしまっているのはそのせいなんだろう。
「皆、一応安全の為に適当な席に着いてくれ。これより飛行艦グリフォンは発進する」
「量子反応アクティブ」
「各エンジン異常なし」
「飛行戦艦グリフォン、発進!!」




