表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/39

新たな拠点を求めて②

「これが空中戦艦の中か!」


 転移すると、スラフは感嘆の声をあげていた。やっぱり男の子だもんね。ワクワクするよね。…てかスラフよ、本当の目的はそっちだったのか?


「あ、ビイトお帰…り?」


 ひょこっと手を上げかけたカレンの手が止まる。もう片方の手には煎餅が光って唸っているな。


「ああ、ただいま。この二人はイーシスの銀翼亭って言う宿屋兼居酒屋の兄妹で――」

「リサと申します」

 なんだ?今、目の前の空間が弾けるような感覚が…?


「…ワタシはビイトの幼馴染のカレンよ」

 あ、なんか火花が見えたような…?


「なるほど、幼馴染でございますか。幼馴染なんですね」

「何故二度言った?てか、アンタ手を離しなさいよ。もう転移は終わってるんだから」

「いえ、私は神聖魔法で疲労したビイトさんの介助の為にこうしていますの、幼馴染の(・・・・)カレン様」


 二人の発する凄まじいオーラに、俺は後退りを――出来ない!ガッチリ手をリサに掴まれてて下がれない!!?え、俺ってば一応SSランカーなんだが?


「リサ…さん?なんか言葉遣いが変わっておられません…か?」

 恐る恐る声をかけてみるが、戦闘色のオーラに似たものを発していて俺の声が届いていないようだ。助けを求めてスラフに視線を送るが、物珍しい機器を前にぷにこにあれこれと質問をしていて、気付く気配が微塵もない。


「へえー…やたら強調してくるじゃないの?何?アンタ、ビイトの現地妻って奴?」

「現地妻…うふふふふ…それもいいですわね…。ただの幼馴染(・・・)よりは」


 今度は目でセレナに助けを請う。しかしセレナは、俺達の様子を面白そうにニヤニヤと眺めていた。

――あかん!こいつもダメだ!!


「スラフ!スラーーーーーーフ!!」

 必死にスラフに呼びかけると、ようやくこっちに気付いてくれたようで、仕方なさそうな仕草で俺の傍に戻って来た。


「ああー…話の途中で悪い。俺はこいつの兄貴でスラフと――」

「「外野は黙ってて!!」」

「あ、はい…」


 女子の剣幕は恐ろしい。酒場で鍛えたスラフでさえも尻込みするとは…。


「カレン様、リサ様、マスターがグリフォンの発進を行ないたいようです。スラフ様も空いている席に着席をしていただけませんでしょうか?」


 感情のない機械的な言葉に、リサもカレンも我に返ったようだった。…が、お互いプイっと視線を逸らすとカレンは歯軋りのようなものを、リサは勝ち誇ったような表情で艦長席の隣りに座ったのだった。

 うーーんと…リサさん、そこは副長席なんだが…まあいいか。


「セ、セレナ、光による明滅合図で軍の連中に発艦合図を出してくれないか?てか、出来るか?」

「あ、えーとね…あったあった。これね。操作マニュアルに載ってるわ。ぷくく」

「じゃあ頼む…」


 未だに変な空気に動揺して俺の声は裏返っていたが、セレナはそれを面白そうに含み笑いをしながら操作を始めた。それを気にしないように俺は発艦操作を始める。…くそっ!どいつもこいつも。。。


「よーし、量子エンジン2番3番点火、続いて1番を起動。発進する!」


 夜の海をスルスルと動き始めると、グリフォンは青白い炎を噴射しながら波をかき分ける。そして点火から30秒後に最大出力に達すると、一気に星空へと駆け上がったのだった。

 Gはない。艦内部は重力制御がされている為、例えマッハを超えようとも動揺はない。


「拍子抜けだな」

 スラフの正直な感想であろう。しかしその直後、目の前に近付いたかのように錯覚する月に、感嘆の声を漏らしていた。


「ところでビイト、進路はどこなの?」

「ああ、言い忘れていたな。空中庭園だ」


 カレンの表情に普段の明るさが戻った。

「そう、あそこに行くのね。楽しみだわー」

「ビイトさん、空中庭園て何ですか?」

「ああ、文字通り空中に浮かぶ庭園であり、空に浮いている島さ」


 カレンの目がギラリと光る。


「ふっふーん。リサさんは初めてなのね~。ワタシはビイトと何度も行ったわ!」

「ちっ」


 あれ…リサさーん、今舌打ちをしませんでしたかー?おーい

「カレン、あんまり初対面の人を煽っちゃダメよ。初めて見るのは私も一緒なんだからね」

「セレナ、ごめんごめーん」


 いい加減セレナも飽きてきたのだろう。カレンを制止してくれた事に感謝だ。


「それで?そこで何をしようって言うんだ?ビイト」

「さっきの話しの内容は覚えているだろスラフ?」

「さっきのって…ああ、ギルド連盟の議長達に言ってた…って、おいまさか!?」


「ああ、空中庭園をギルド連盟本部兼俺の棲み家にするのさ」





 空中庭園の位置をレーダーで探り当て、出発から2時間程で俺達は到着した。夜の空に浮かぶ島に――。



「進路クリア、空中庭園の桟橋に接岸開始。操作はオートでいけるな?」

「はいマスター、量子コンピューターに異常はありません」

「わかった。悪いがぷにこは俺達が戻るまで留守を頼む」

「了解いたしました」


 グリフォンのコンピューターと、庭園のコンピューターのリンクを確認すると、俺達はタラップへと向かう。その間、カレンとリサに両腕を掴まれていたが、ひたすら無心を貫いた。


「契約端末はどこにあるの?」

「ゲームと同じなら中心部の世界樹の若木の前にあるはずだ」


 セレナは冷静だな。てか、興味が完全にこの空中庭園に移ったのだろう。そして俺達は黙々と朽ち果てた廃墟の中を進み、若木の前へと向かった。


「これね」


 あった。ゲームと一緒だ。



 世界樹の若木、それは若木と言うには大き過ぎる大木である。高さは20mを越えており、太さは大人30人以上が手を繋いでも少し足りないくらいだろうか?それでもこれは若木なのだ。世界樹としてはまだまだ子供の木なのだ。


 そんな大樹の真ん前、ポツンとそれは台座に置かれていた。タブレットとしては少し大きめの端末が。



『WELL COME』

 機械的な音声が流れたあと、タッチパネルモニターが起動する。そしてそこには大きな手形が表示されていた。俺は静かにモニターの中で点滅する手形に、自分の手を合わせた。


『契約を受理。これよりこのガーデンは、貴方様の物となります』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ