白い空間
「やあ、ようやく会えたね。異世界の創生者君」
そこは白い光に包まれていてどこまでも広く、しかしその気になれば全てに手が届きそうな…そんな不思議な空間だった。そして、そんな空間の中心に佇む存在、恐らくそれを神と言うのだろう。俺は今そいつの目の前に居るらしい。
「…あんたが俺をこの世界に呼んだのか?」
唐突な疑問がそのまま口から零れた。…俺はそう思っただけなんだが。
「驚いているね?この空間では嘘はつけない。思った事は口にでてしまうんだよ」
光が体中を覆っているそいつの姿はよく認識ができないのだが、高貴な貴族のような服装をしている事はわかった。
「眩しいんだが」
「ああ、すまないね。今もあの世界の調整に追われててね、神威を隠している余裕がないのさ」
「今も?と云う事は、あれは完成した世界ではないと?」
「そうだね。まだまだ調整中だよ。実際、君を転移させた際にその能力の変換とかにも失敗しているしね」
「失敗?あーなるほど、それでHPとMPが無限なのにも係わらず元の魔力値が低かったりしたわけか」
「そういう事さ」
なんだろう。神様らしいのだがこの親近感は?同等の…そう、普通に近所のお兄さんと話しているような…そんな感覚である。
「そう言えば『ようやく会えた』とか言っていたが、何なんだ?」
何か悩む様な仕草をした少し後に、そいつからの返答は返ってきた。
「ああ、用事と言うより詫びだね」
「詫び?」
「そう、お詫びだよ。君のアイデアの盗用と、その盗用した世界の調整の為に原作者?或いは創作者である君を、いや、君達をこの世界に召喚したね」
少しの間、俺の頭はフリーズしたように空っぽになった。何を言ってるのかよくわからなかったのかもしれない。それは神威を発しているとはいえ、そいつの近所のあんちゃんのような雰囲気に、色々錯覚を起こしたからなのかもしれない。
「……えーと、ところで元の世界に帰してもらう事はできるのだろうか?」
「うーん、やっぱりそれを聞いちゃうかー。ごめんね、当分は無理かなー」
「なんで!?あんた神なんだろ?」
ポリポリと頭をかいているような仕草がなんとなくわかる。
「今までにも幾つかの世界を管理運営はしてきたんだけどさ、この世界はゼロから創造した初めての世界なんだよねー。そのうち昔の部下なんかも合流する事にはなってるんだけど、現状一人なもんでさ、リソースやら何やら足りんのよ」
「え」
「そんなわけでさ、悪いんだけど暫く手伝ってくれないかな?」
「手伝えって、どう手伝えばいいんだよ!?」
「うん。取り敢えずクエストを消化してくれてればいいから」
なんかニッコリ微笑んでる気配はする。いや、てか、微笑まれても困る。
「それに元の世界にすぐに戻しても、君達行方不明者扱いになってるかもしれないから大変だよ?」
「はああ!?勝手に召喚したのはあんただろ!てか要は、俺達にデバッグをしろって事か!!?」
うん。なんかまたポリポリと頭をかいてるようだ。
「だからさ、元の世界の調整もするから暫く頼むよ。本当にごめんて。その代りゲーム開発中にあった機能の一部を君に返還するから、それで取り敢えずは手打ちにして欲しいんだ」
「機能の返還?」
「そう、オペレートシステムのうちのエディットモードかな?まあ、あれもこれもエディットされるとこっちも困るから、君の所有する範囲での操作を認めると云う事でどう?」
「…わかった。気は乗らないけれどデバッグを引き受けよう。ただ、完遂した際には対価を要求するけれど構わないよな?」
「ありがとうーーーーー!恩に着るよ」
ハグをしようと光に包まれた神らしき人物が俺に迫って来るのを察知して、俺は思わずバックステップで躱していた。近い近い!あんた本当に神なのか?
「釣れないなぁ~。でもまあ、契約成立と云う事で」
「ああ、約束は守ってくれよ」
最後はお互いに笑って別れた…と思う。そうして意識を取り戻せば、そこは例の野戦病院の布団の上だった。
――エディットモードの封印が解除されました――




