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レイド島探索3日目

 早朝、ギルド職員達と共に宴会の後片付けをしていると、ヤーンがドギを呼び止めて何やら話し合っていた。話が終わるとドギは深い溜息を吐き、トボトボと俺の傍へと歩いて来る。何か面倒な事ならば、出来ればこちらへの飛び火は勘弁願いたい。かと言って放置するのも忍びなく思えたので声をかけた。


「どうかしたのか?」

「あ…ええ、まあ…」


 拠点のホールには今現在、ギルド職員しかいない。カレンはアドリア―ナ達と意気投合したらしく、調査協力とか言いながら、二日酔いで未だに寝ているセレナを部屋に置いてレベル上げに行ったらしい。C,Bランカー達も撃沈している一部を除いて大半が、昨日のドラゴン退治のあったあの場所に行っていると、俺の肩の上のぷにこが教えてくれた。


「帝国の連中なんですがね、急に本国から呼び出しがあったとかで離脱する事になりました」

「ふーん、呼び出しね…それだけにしては浮かない顔をしているみたいだけど」

「お見通しですか…。実は大きい声では言えないんですが、レイド島に渡ってから大陸との交信が途絶えているんで」

「途絶えている?え…でもヤーンは本国から呼び出しと…」

「そうなんですよ」


 帝国が通信を封鎖しているのか?封鎖している当事者なら抜け道も知っているはず。しかし封鎖なんて何のために?


「ひょっとして戦争…?」

「…ありえます」

「では何故ヤーン達はそんな状況下で今回のクエストに参加したんだ?」


 ドギの表情が強張っている。そして、無言で俺を見つめ返して来た。


「俺?俺なのか?」

「今のところは何とも言えませんが、恐らくビイト殿が事態に気付いて動いた時の足止めと監視だったのでは…と」


 だとすれば、帝国に狙われたのは領土とか国とかではない?何だ?何が狙いなんだ?




「狙いは帝国にあるギルド連盟総本部じゃないのかな~?」




 不意の背後からのセレナの声に、ドギも俺も一瞬動揺をしてしまった。そうか、セレナには以前、設定資料的なものを見せていたのだった。


「セレナ博士、その根拠は?」


 昨晩の宴の時に俺やカレンと違いギルド証のないセレナは、自身の身分を『博士』として自己紹介している。まあ、嘘ではない。俺もセレナもあっち(・・・)では研究員なんだし、広い意味で言えば『博士』なんだよな。


 と言うか博士と言われて、一瞬セレナの奴にやけてなかったか?


「ふふふ、ドギ氏よ。この時代に突然様々なギルドを創設したとされる人物が現れた。それはギルド連盟にとっては神のような存在ではあっても、その総本山を抱える国の国家元首にはどう見えると思うかね?」


 何処からか眼鏡(伊達)を取り出し、スチャっと装着すると、セレナは右手を眼鏡(伊達)に添えてキラーンと光らせた。…なりきってるなぁ。てか、白衣もいつの間にか羽織ってるし…。


「ぬ…そうですな。統治する者にとっては邪魔…ですか?」

「そう、統治者にとって神は…崇め奉るべき存在は2柱も存在してはならないのです!」


 ああ、なるほど。つまり俺を崇めるギルド連盟総本部は、カルト教団の大神殿に例えられるわけか。判り易い例えと言えば、そう言えるのかな。


――待てよ、これに近いイベントを確か用意していたな…




 本来俺の作っていたゲームでは、アベルガルドから冒険が始まり、竜王征討後にレイド島を経由してカインデル大陸へと渡るのが本筋であった。そしてイーシスへとやって来た冒険者が、NPCと共に幾つかのクエストをこなしてスケア帝国へと入国しようとすると、突如紛争が勃発して一旦バーダナム共和国へと逃れて…えーと…どうなっていたっけな?




「ぷにこ、スケア帝国紛争編のプロットはどうなっていたっけ?」


 肩に乗る妖精態のぷにこだけに聞こえるように小声で話しかけると、ぷにこは軽く頷き、念話で答えてくれた。そうか、そんな便利機能もあったんだったな。パーティー内での秘密の会話用に作ってあったんだっけ。


『記憶しております。帝国が起こした紛争によって一旦プレイヤーはバーダナム共和国に逃れます。その後幾つかのキークエストをクリアして帝国に再入国を計ろうとしますが、プレイヤーを含めた冒険者達を危険因子と定めた帝国は、ギルド総本部を急襲して封じ込めを謀ります。そこで――』


『そこまででいい、ありがとう。やはりアベルガルド編未踏破である状態ながら、帝国紛争編に突入していると思っていいようだね』


『はい、経緯は違いますが、もしも本当にスケア帝国が軍事的行動に出ているとすればシナリオに近いと思われます』


 そうなると恐らく、ファルコ王国やバーダナム共和国に軍が送られているはずだ。


「ドギ、急いで撤収してイーシスに戻るべきなんじゃないのか?」

「そうですな。何よりアリバイ工作の意味もなくなっていますしな。しかし、急ぎたい気持ちはあってもここからの帰還の行程がどうにも…手遅れになっていそうで…」


――確かにそうだ。港まで二日、そこから全速力で戻っても1日かかる。俺一人なら一瞬で転移できるが、まさか皆を置いて行くわけにもいかないしな…。



 暫くの沈黙の後、ぷにこが念話で囁きかける。

『マスター、ならばYD-03を使うべきではないでしょうか?』

『YD-03…グリフォン級強襲戦闘飛行艦1番艦『グリフォン』か…』


 グリフォン級強襲戦闘飛行艦1番艦『グリフォン』、それは本来シナリオを順当にこなしていけば紛争編終了後に手に入れる事が出来る飛行可能な万能戦艦である。しかし、デバッグの為に俺はそれを所持していたのだ。確かにグリフォンならば1日…いや、半日でイーシスまで行けるかもしれない。



「ドギ、足ならある。急いで集合をかけてくれないか」

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