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レイド島探索2日目①

 探索初日に汎用拠点で宿泊した俺達は、今朝は5時くらいに起床して、6時くらいには出発という事になっている。…なっているんだよ。


「ふん、他愛もない。イーシスの冒険者はこの程度か?」

 せせら笑うヤーンに組み付くBクラス冒険者、その背後には既にヤーンによって弾き飛ばされた者が数人転がっていた。朝っぱらからこいつらは何をしているんだ…。


「くうっ我々を馬鹿にするか、この帝国の犬があ!!」

 組み付いた冒険者が叫んだのも束の間、彼もまた一瞬にして転がる仲間の元へと投げ飛ばされた。見事な一本背負いだ。


 パチパチ


 呆れ顔で俺は手を叩き、ヤーンの背後へと歩を進める。その様子を見ながら、奴はニヤニヤとしながら振り返った。


「朝も早くから精がでるね」

「なーに、ひよっこ共をちょいと扱いてやっていたところだ。ビイト殿も1戦いかがかな?」

「遠慮するよ。ホゾナ山の麓に着いたら原因の探索が待っているしね」


 ステータス的には負ける気はしないが、こういう歴戦の強者って奴はそれさえもひっくり返す能力を持ってたりする。況してや幾つもの戦場を駆けて来た野獣なんぞと遣り合うなんて疲れるだけだ。


 拠点宿舎の入り口に視線を向けると、ドギが頭を抱えていた。ギルマスって職業は大変だなと同情してやりたいが、恐らくこの探査が終わって帝国の総本部に行けば、それ以上の厄介事が俺を待っていそうで思わず溜息を吐いた。


「はあ…冒険者ギルドだけで済んで欲しいな…」

 溜め息と共に零れた言葉は切実な願いではあるのだが、恐らくそうはいくまい。全てのギルドが手ぐすねを引いて待っていそうで怖い。


――俺はただ、ゲームをしたいだけだったのに!!




 なんとか定刻どおりに6時に出発、更に川沿いを上る。

 幾つかの魔物の群れと遭遇するが、Cランカーでも対処可能なエビルラットと云う角の生えた鼠や、ボーダーウルフと云う名前のとおりボーダー柄の狼の魔物に遭遇した程度であった。


「妙だな」

 ドギが口走った言葉は、俺の感想と相違ない。斥候部隊と共に先行していたヤーンも、報告を上げながらいつも以上に目つきを鋭くしている。


「ああ、本来ならここまで上流に上がってくれば、もっと上位の魔物に遭遇してもおかしくはないんだがな」

 ヤーンとドギが、チラリと鋭い目つきのまま俺を見る。いや、俺、何もしてないんだが?


 そうして昼を過ぎ、ちょっとした渓谷を越えた頃、ようやく麓の草原へと辿り着く。そこは見事なサバンナだった。象やライオンなどに混じって、幾つかの魔物の姿もある…のだが、やはり動物も魔物も本来よりも数が少なすぎる。


 おかしい…ここは本来魔物や動物達との激戦区のはずなのだが?


 訝しい表情で辺りを見回していると、先行していた斥候のCランカー達が青ざめた表情でドギの元へと集まって来ていた。そのうちの数人がガタガタと身体を振るわせている。連中が向かっていた方角は確か、例の仕掛けを施した場所の方角だったような?


 ドギが報告を聞くなり俺の方を睨んできた。只事ではないのはわかる…だが何故睨むんだ?


 ゆっくりとした歩調、しかし怒気のようなものを発しながらドギが俺の横に立つ。そして他の者に聞こえないように小声で耳打ちをしてきた。

「…確かワイバーンを数体と言っておられたと記憶しているが、間違いはないか」

「…ああ、間違いない」


 ドギは俺の返事を聞くと再度周囲を見回し、大きな溜息を吐いた。


「例の場所だが…すぐには詳しく調べる事が出来ない」

「何故だ?」

「…ワイバーン以上の大物がそこに居座っているらしい」


 ワイバーン以上の大物?つまり何らかの魔物…しかもこの言い回しからすると竜種がそこに居ると言う事か?


「何が居るんだドギ」

「…魔竜、しかも亜種だそうだ」


 ゴクリと喉を鳴らすと、ゲーム制作時の記憶が甦る。

 魔竜の亜種…あれは確か、竜の古代種は神に近い存在として設定しているので狩るのは不自然と思い、レイド島への配置はしなかったんだった。その代りに、その能力を落とした狩り用のモンスターとして魔竜を作った…はず。


 しかも亜種か…どっちだろう?元の魔竜よりも強く設定した方か?それとも弱く設定した方か?


「魔竜の属性種は?」

 竜には火水土風、そして光と闇の6つの属性種を配置している。光と闇は火水土風の4属性の上位に位置しており、発現数は少なく『希少種』と呼ばれている。つまり今回現れた魔竜はこれに該当しない。


「土系統だな。情報から恐らくグラットドラゴンの亜種だ」


 グラット…グラットン…日本語で大喰らい…ああ、あいつか。ティラノサウルスをモデルにした奴だ。体高は元のグラットドラゴンは6~7mだったか?それよりも大きければ強力なタイプだ。


「ワイバーンの死肉に引き寄せられたのだろう。本来のグラットドラゴンに比べて黒っぽい柄が入っているらしいが、大きさは変わりないとの事だ」


「大きさが元の種と同じくらいで黒っぽいか…あ」

「ビイト殿、どうされた?」


――それって弱いタイプで、しかも希少な素材が出る奴じゃん!

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