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海上ブリーフィング

「行程の確認だ」


 クルーザーのキャビンに集められた冒険者達に混じり、俺とアーニャも同席する。

 集められた冒険者はどれも強者揃いだ。アドリア―ナとフェニアのAランク組は元より、C、Bランカーも腕に覚えのありそうな者達ばかりだ。


 特にイーシスでの打ち合わせの時から気になっていたのが、黒地に赤い襟袖の軍服を着た3人…あの制服は確か、帝国特務部隊『タイタス』のものだ。しかも今居るこいつらのリーダーらしき男の二つ名は確か『野獣』…。


 褐色の肌に切れ長の目、眉はなく金髪と言うその容姿は如何にもと言った風貌である。



「お初にお目に掛かる。俺の名はヤーン・ラージヒル。帝国では大尉の階級だ。噂ではビイト殿は帝国の研究員であられるとか?どこかでお会いした事は?」


「あー…初めまして大尉殿。ビイト・ホンダです。それに関して…は、あくまで噂ですよ。私はとある民間機関の者ですから」



 野獣の目が細まる。疑われているのか、或いは獲物を見定められているのか…。会合が始まると、ヤーンはすぐに俺の隣りへと移動して来た。既に帝国から目をつけられていると見た方が良いだろうか。


「ほう…民間の研究機関…『パラダイム・テクニカル』あたりですかな?」



 パラダイムはこの大陸で最も大きな企業だ。ポーションから魔導機と呼ばれる戦闘機械、果ては通常艦艇や飛行艦艇までを扱うモンスター企業であり、その本社は帝国の東隣りにある『バーダナム共和国』に存在する。



 そしてこのヤーンと言う男は元はバーダナム出身であり、傭兵稼業から帝国軍人へと成りあがった…と言う設定のはずである。そして元ネタは、リアルロボットアニメの名作からだ。


「いやー、それはちょっと言えません。何しろ極秘でして…それより大尉殿は何故このような場に?」


 少し間があったが、ヤーンはニヤリとしながら答える。

「なーに、ちょっとした休暇で来ていてな。偶々だ、偶々」


――こいつは戦闘狂で戦闘以外ではいい加減な処もあるが、軍としての規律なんかにはキッチリした部分があったはず。そんな男が軍服着用で休暇だと?絶対に帝国の差し金だろ!



 そんなヤーンとの会話の間にもドギの説明は行われていた。私語をしていてもこの放置のされ方は、ヤーンも俺と同じように客人扱いなのかもしれない。




「――であり、皆に渡してある資料のとおり本船はクラ―ケンの出没する海域を迂回してレイド島北東部の港へと向かっている。迂回とは謂えクラ―ケンの海域の傍を通過する為、戦闘準備はしていてくれ」


――そのクラ―ケンて…もういないんだけどな


「北東部の港に着いた後の道順としては第2の資料を参照してくれ。なるべく魔獣の出没の少ない川沿いの進路と言うことだけ覚えてくれていれば問題はないとは思う」


――うんうん。確かに俺のゲーム設定でレイド島に限っては、小川の周辺では出現率を抑えてたな。多少なりの安全圏を作っておこうと思ってそうしたんだっけ


「川沿いを進んだあとは、レイド島中心地であるホゾナ山周辺を探索する。この一帯にはワイバーンがよく見かけられるが、それ以外にも多くの竜種が潜んでいる。くれぐれも気を付けてくれ。尚、エンカウントした際には即時にイーシスギルドのギルマスである俺に一報を入れてくれ。応援として配置できる者を直ちに配置するのでな」


 ドギの視線が一瞬ヤーンへと向けられる。それに対してヤーンはニヤリと笑って返していた。どうやらヤーンのパーティーの持ち回りは、増援及び遊撃といったところらしい事が窺える。


「では、質問などあれば挙手を」


 受付嬢のファシアナが会場全体に視線を向けると、アドリア―ナが手を挙げた。


「現地では野営する事になると思うのですが、食料やテントなどはどのようにして運搬するのでしょうか?見た所ギルド職員の数が足りているようには見えないのですが」


 レイド島ではレイド戦が頻発する為、戦闘部隊が荷物を持っている余裕がない。その為荷物を運ぶ要員が必要であるというのが冒険者達の間での常識である。なのでこうしたギルド主体での探索に於いては、ギルドがその役を担うのだ。


「それに関しては問題ない。今回同行する研究員ビイト殿は、アイテムボックス持ちだ」


 ドギの返答に一斉に皆の視線が俺に集まる。アイテムボックス持ちは希少な存在故に、羨望の眼差しといったところだろうか。


「ほほう、そうするとビイト殿への護衛はしっかりしてもらわねばならんなぁ、猫娘」


 ヤーンがニヤニヤとしながらアーニャに告げると、アーニャはギリリと歯噛みした。…あー猫じゃなく虎ね。たぶんこの御仁はわかってて挑発してるんだろう。


「猫じゃないニャ!虎ニャ!」

「おお、すまんすまん。随分と小柄なものだから猫かと思ったぞ」

「それにウチにはアーニャと言う名前があるニャ。変な呼び方は金輪際するニャー!」


 どうやら『野獣』にはアーニャが子猫に見えるらしい。…それも仕方ない。力量も経験も違い過ぎるからな。ヤーンはBランクとして登録されているが、実力自体はSランク相当だろう。奴は狩り場に居るよりも、戦場に居る方が長いはずだ。それ故に狩りでのランク(・・・・・・・)はBなのだろう。


「あー…質問の方はもういいな?そろそろクラ―ケンの領域の付近を横切る。各自準備をしてくれ」


 ドギの溜息がこちらにも聞こえてくる。なんかすまない。。。

 イーシスに戻ったら酒の一杯でも奢っておこう。

今回はお遊びが過ぎました。

野獣大尉は赤くて3倍の人と同じくらい大好きなんです。


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