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勇者の鑑定

 ドギ達と調査の簡単な打ち合わせを終えると、ドギとアドリア―ナ達は帰って行った。勿論今回の飲み代はドギに払わせた…のだが、まだお開きにはなっていない。何故なら…。


「まさかビイトがそんなに偉い人だとは思わなかったニャー」

 何でいつまでヘラヘラしながら骨つき肉をしゃぶってるんだ。お前は…

「…それでアーニャ、お前は結局何をしに来たんだ?」


 ビクリとアーニャの肩が震えた。そして「えへへー」と言いながらペコリと頭を下げる。


「ビイト、もうすぐCランクのアタシに声を掛けてくれてありがとニャ。このクエストが無事に終わればウチは晴れてCランクの仲間入りニャ。本当に恩に着るニャ」

 決してDランクとは言わないところが意地と言うか何と言うか…。


「随分としおらしいじゃないか。…まあ、ギルドに直訴しに行くほどレイド島に行きたかったみたいだしな。力になれたなら良かったよ」

 そうは言いつつも骨付き肉を手放さないあたり、ブレないなアーニャ。


「この恩はいつかAランカー・アーニャ様が返すから、待ってるがいいニャ!」

 そう言うと、アーニャは骨付き肉を手に持ったままスタコラと銀翼亭を飛び出して行った。


 …Aランカー?まだ先だろ。てか、追加の支払いは俺かよ。。。





 翌日は昨日のメンバーも含めた調査に参加する冒険者パーティーとの打ち合わせを行なった。だいたい20人くらいの冒険者が集まっている。俺の立場を『研究員』とした事で、思ったよりもあっさり受け入れられた。この大陸のスケア帝国の権威が想像以上に高い。その帝都『ファーストファンタジア』から来た遺跡研究員か何かと勘違いしてもらえた事が幸いしたようだ。


 無論、冒険者達には俺のランクやギルドの登録ナンバーは秘密である。


 集まった面子は探索を得意とするCランカーが2組、Aランクに昇進したいBランカーが3組と言った具合で、戦闘を指揮するのはアドリア―ナのAランクパーティーとなっている。


 そうして集まった連中を眺めると、通常のパーティー編成は3~5人のようだ。アドリア―ナ組の二人と言う編成は、恐らく異質だ。失礼だがこっそり鑑定してみると、やはり彼女には称号が付いていた。


 アドリア―ナ・クリステア

 LV032

 HP 75

 MP 32

 攻撃力 102(202)

 魔力 53

 防御力 82(162)

 敏捷性 71

 器用さ 66

 運 120

 職業 戦士

 称号 町勇者

 スキル 剣技LV06 魔法LV03 家事LV01 礼法LV03 鑑定LV02

 装備 武器:聖剣ドラグナー(+100) 防具:ミスリルプレート(+80) 


「町勇者か…」

 思わず呟いてしまい、アドリア―ナの方を見る。どうやら気付かれてはいないようで「どうしましたか?」と聞かれた。しまった…墓穴を掘った…。


「あ、いや…ああ、そういえば鑑定とはどういう風に見えるものなのかなぁ?なんてね」

 俺達の周りにはフィニアとアーニャしかいない。他は各々のパーティーで話し合っている。アドリア―ナの鑑定がどこまで見えているのか試すのなら今だろう。


「鑑定ですか?えーとですね、図にすると」


 アドリア―ナ・クリステア

 戦闘A

 知力C

 政治D

 策略D

 成長Å

 運A


「こんな感じに見えます」


――え…俺と見え方が違う?恐ろしくざっくりしてるな…。ならあの時見られても問題なかったか?


「ふむ、では今の君に俺はどう見える?」

「見てもいいんですか?」

「ああ、構わない」

「では…」


 アドリア―ナは片目に手を当て、じっと俺を見据える。そして「ム?ムムム?」と口走っている。


「どうした?」

「えーと…さすがビイトさんですね。ボクの鑑定眼を弾いてしまうようで、朧げにしか見えないんですが…」

 それでも何とか頑張って、アドリア―ナは書きだしてくれた。


 ビイト・ホンダ

 戦闘力? (見えず)

 知力SS? (おぼろげだけどたぶん)

 政治A? (同じく)

 策略B? (違うかも)

 成長SS? (なんとか見えたー)

 運E (これだけハッキリ見えたー!)


――ああ、やっぱり俺って運悪いのかよーーーーーーーーー!!

「は…ははは、唯一はっきり見えた『運』がEか…」


 引き攣った表情の俺を見て、一瞬アドリア―ナが視線を避けた気がする。そんなに酷い顔をしたのだろうか…。


「あ、あの、こういったステータスって、成長と共にまた変わっていくものなので…それにほら、運Eって、運イーに見えたり…しません…か…?」

 申し訳なさそうにアドリア―ナが励ましてくれたが…もう20代も後半で、成長と言われても16、7の君達に比べたらおっさんなんだが?


「それにしても、それ以外のステータスはさすがですよね。運以外はどこぞの宰相レベルじゃないですか。運以外は」

 フィニアがニコニコしながら追い打ち…いや、助け舟を出してくれた。…若い二人に気を遣わせたな。スマン。。。




 その日はそれぞれ準備があるので、真相を知るメンバー以外は打ち合わせ後にパーティーごとにバラけて行った。そしてギルドの会議場に残った俺達は、俺が仕込んだ偽の調査結果に関しての打ち合わせを始めた。


「現地にはバラバラになった帆船と、ワイバーンの死骸を数体置いてきてある」

「わ、ワイバーンですか!?」

「数匹って…複数討伐ともなれば高ランクでもパーティー、Bランクではいくつかのパーティーによるレイド戦で倒すものですよ!?」


 アドリア―ナとフィニアが目をひん剥いて俺を見る。まあ、実際苦戦したよ。減らないHPのおかげでゴリ押せたが、普通なら確実に死んでるな。おかげでレベルがまた上がったし。


 ビイト・ホンダ

 LV048

 所持金 99999G

 HP ∞

 MP ∞

 攻撃力 382

 魔力 2380

 防御力 358(468)

 敏捷性 431(471)

 器用さ 315

 運 35

 職業 創造主

 称号 創世王

 スキル スキルマスターLV03


 魔力の上がり具合がやはり異常だ。敏捷性の上がり具合がいいのは装備による影響かな?んでもって最も謎なのが、全く所持金が減らない事なんだが?ロックでもかかってるのかねぇ?まあ、預金すれば預金口座にはしっかり増えるので問題はないんだけれどね。


 そして、そんな話をしている間もアーニャは…飴をボリボリ食べている。…飴は舐めるものだぞ。


「んで、それをどうしようって言うんだ?」

 ようやくドギは仰々しい話し方をやめてくれたようだ。お互い疲れるもんな。


「帆船はとある戦闘で魔石炉をぶち抜いてあるんだが、これを光の原因にしようと思っている」

「しかし陸地に帆船の残骸って、不自然じゃないですか?」

「アドリア―ナ、その為の複数のワイバーンの死骸だ」

「え?」


「ワイバーンの群れが航行中の帆船を襲って連れ去った。その際にうっかり炉心を攻撃して吹っ飛んだ。そんな感じのシナリオだよ」


「「「なるほど」」」


 どうやら納得してもらえたようだ。………飴に夢中なアーニャ以外にはな。。。




 二日後、快晴の日を選んでようやく調査隊は出発した。足としては帝国製の大型クルーザーがギルドによって手配された。

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