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勇者を諦めたらスライムに勧誘された件~俺がダンジョンのボスだって!?~  作者: 飛龍 ナツキ
ダンジョンのボス、始めました。
5/40

性別不詳系です

 先日はダンジョンのボスになって欲しいと期待され、根負けしてしまったが、このまま即ダンジョン暮らし、というわけにもいかない。


 村を出るとなれば自分の家に置いてある荷物を纏めたり、お世話になった人に挨拶をしたりと、色々やらなければならないことがある。


「……じゃあ、とりあえず、聞きたいことがあるんだけど」


 なので、一度帰る前にある程度の話をしておこうということになり、ミヒトは目の前のティナ達に何を質問しようか考えた。


「えーっと……、キミ達以外に、人間と意思疎通出来る魔物はどれくらい居るんだ?」


 まず、一番大事なのがこれだろう。


 昔から人に化けて人里を襲ったり、群れを成して幻術で村人に成り代わるような魔物もいる。が、話すことまで出来る種族は魔物全体で見れば極少数に過ぎない。

 セイレーンや吸血鬼といった人と近い種族は言葉も共通であることが多いが、そうではない――言語の通じない相手に意思を伝えるのは、とても大変なことだ。+


「ここの子達は、話せる子こそ殆ど居ませんが……、私達が人の言葉で話しかけているので、それなりに通じると思います。戦力にはあまりならないでしょうが……」


 ティナの視線を追うと、岩陰からスライムやモグラ、コウモリの魔物がこちらを伺っているのが見えた。そもそも大型の魔物が居ないのだろうか。


「話せるのはキミ達だけなのか?」

「もう一人居ますよ、今は買い出しに行っていて……」


 そろそろ帰って来ると思います、とティナが口にするが早いか、ただいま、と声が聞こえ、そちらを見ると、荷物を抱えた、太陽のような黄色い髪を持つ人影と目が合った。


「あっ……、お、お客様ですか?」


 少女とも少年とも取れる小柄な人物が、手荷物をとりあえず床に置いて、何事かと辺りを見回している。そこに、サリーがぱたぱたと走って行って状況を説明した。


「なるほど、彼がここの新しいボス……、……ってええー!?」

「そーいうことだからよろしくデース!」


 ビシッと手を上げるサリーに、いやいや、とツッコミが入る。


「だって彼は人間じゃないですか! 人に人を撃退させるんですか!?」

「おお……ようやく普通の感性をしたやつが……」


 ミヒトが感心している中で、突如スライムがぴょこんと黄色い髪に飛び乗って、ミヒトに向かって、「この子の種族なんだと思う?」と問いかける。


「種族……?」


 買い物から戻ってきたらダンジョンにボスが増えていた上に、急に話の中心に持って来られ、明らかに困惑している小さな身体を、上からじっと見つめ、考える。


――身長は百四十……いや、百三十前半程だろうか。髪は黄色で、柔らかさのあるショートヘア。青く大きい瞳は困惑で潤んでいて、全体的に魔物らしさは感じられない。


 服装は白いシャツの上に裾が足元まである丸みを帯びた紺色の羽織を着て、シンプルな紺のズボンと合わせた、胸元に下げている十字架の首飾りと相まって聖職者をイメージさせる大人しい物であり、種族の特定には至らないどころか、魔物離れしている。


 しかし、魔族である以上、この子供のような外見には意味があるのかもしれない。


 こうして間近で見ても無害な人間にしか見えない外見。油断を誘い、おびき寄せることを目的に子供のような姿をしているのだとすれば、恐らくは、夢魔――

 と、そこまで考えて、答えようと口を開いたところで、思考が止まる。


(……この子、どっちなんだ?)


 体が小さくて体格が分からないし、衣装も性別の特定には至らない。もっとよく観察したいところだけれど、初対面で、しかもこんな理由であまりじろじろ見ては失礼だろうと、見るのをやめて、持っている知識から軽い推測をして答える。


「――サキュバスだ!」

「ふぁいなるあんさー?」


 間髪入れずに問いかけて来たスライムに、頷く。小柄な体格の方が有利と言うならば、相手が男性であるサキュバスだろう。と思ったのだ、が……、周囲の空気と、目の前でやけに癇に障るしたり顔をするスライムを見て、次の言葉を悟った。


「――ぶっぶー! 正解はインキュバス! インキュバスの“マリオン”だよ!」


『インキュバス』

 レア度 ☆☆☆☆

 生まれ持った美貌と魔法の才能を活用し、人間に擬態して巧みに女性を誘惑しては捕食する悪魔。夢魔は雄雌共に身体能力こそ高くないが、魅了されると厄介なので異性の夢魔が相手の時は聖職者を連れるか三人以上のパーティで戦うのが望ましい。嗜好性の違いからか、雌個体のサキュバスとは繁殖期以外は干渉しないようだ。


「すまん! 悪かった!」

「いいですよ別に……。僕、こういうの慣れているので」


 マリオン、と紹介されたインキュバスは、そう言いながらも明らかに拗ねた顔で見上げて来て、罪悪感に胸を突かれるが、しかたがないと思う。一人称も聞いてなかったし、なんなら長い羽織が遠目に見るとスカートか何かに見える。


「まあ、ワタシの弟はベリーキュートなので、間違えるのも無理はないデス!」


 そう言ってサリーがマリオンの頭に手を置いたものだから、ぎょっとして二人を見る。髪色は近い(それでも少し違う)が、目の色も違えば、種族も違うと思うのだが……。


 そんな思いを察してか、サリーは何故か得意気にマリオンの肩に手を乗せた。


「産まれが違う生き分れてない血の繋がっていない弟デス!」


 それは他人とは違うのか? そんな疑問を抱いたが、彼女にそんな正論は言うだけ無駄だろうと達観するミヒトに、マリオンがサリーの隣で声を掛ける。


「ところで、あなたは今日からここで暮らすのですか?」


 マリオンに問いかけられ、ミヒトはいや、と答えた。


「今日は一旦荷物を纏めに帰って、明日から滞在させて貰おうと思ってる」

「それなら、今日はもう帰った方がよろしいかと」


 日が傾き始めていたので、と告げられ、確かに、あまり遅く帰るとお世話になった人に挨拶をする時間が取れないと、ミヒトは帰り支度を始める。


「じゃあ、今日はこれで。また明日な」

「はい! あなたのお部屋を、ちゃんと準備してお待ちしてますね」


 水場から顔を出してヒラヒラ手を振るティナに、手を振り返し、帰路に着く――

メインキャラが一通り出揃って参りました。この作品を面白いと思っていただけたら、是非評価や感想等いただけますと励みになります。よろしくお願いいたします…!

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