腐女子は異世界でも腐教する2 ~少女布教編~
「まてどもまてども便りがなく・・・」
私の書いたBLが音読されていました
・・・誰か殺してください
わたくしは唯の男爵令嬢です
ただBLを愛するだけの平凡な転生者です
問題がこの異世界にBLがなかっただけ
ただそれだけです
「なければ自分で作ればよい」
BL好きならば一度は聞くセリフですよね
好みのBLがないなら自分で書けばよい
そういうことです
無いならば有にしてみようホトトギス(笑)
書いてみたんですよBL
そうしたら大好評でした
おかげで朗読会にお呼ばれする始末
わたしのような素人が読むよりも慣れた人間が読む方が良いというのは判ります
実際に下手な人間が読んでいるとモノを投げたくなりますからね
「だったら書いた本を貸すので勝手にやってください」
自分の書いたBLを朗読されるだけでなく、朗読会のたびに同じ詩を聞かされるのでそう訴えました
ところが育ちが良い方というのは権利というのをしっかりと考えてくださるわけですよ
書いた人間を蔑ろになんてしない
いい機会だから人脈を広げてね?
・・・小さな親切大きなお世話、ですね
向上心も野心もない人間にはただの大迷惑でした
とまあ今日も朗読会にお呼ばれして、自分の書いたBLを聞かされるという苦行を受けていました
・・・漫画家がネームを担当さんに呼ばれるというのはこんな感じなんですね、と真っ白に燃え尽きていました
ふと見ると部屋の片隅で6歳くらいの少女がポツンと椅子に座っていました
たぶん母親とか姉が朗読会に出るので寂しくなってついてきた?
いや朗読会の会場のお貴族様のお家の子でしょう
子供には難しすぎて暇している、ですかね?
これが真実はいつも一つ!、というやつですね(エッヘン)
ぼっち同志ということもあり隣の椅子に座って話しかけます
「お飲み物はいかがですか?」
すかさずメイドさんがジュースを持ってきました
どうやらこの家の子のようです
使用人が話しかける訳にはいかないけれど、気にはなっていたようです
愛されてますね
「お話わからないの・・・」
ジュースを飲んでホッとしたせいか教えてくれました
そりゃそうです
6歳児にBLを判れというのは無理ってものです
「じゃあどんなお話かお姉さんが話してもいいかな?」
そう言うと
「お願いします」
との返事が返ってきました
上流階級の娘さんは幼くても賢いんですね
腐っているわたしとは大違いです(汗)
「あるところにお姫様がいました」
そう言って少女を見ます
そうすると
『わたしのこと?』
と目で聞いてきました
コクンと頷くとにっこりとしました
掴みはOK、というやつですね
漫才だと最初の10秒が大事らしいです
それと同じですね
まあBLと内容が違ってきますがそこはほら全年齢版ということで勘弁してください
・・・少女にBLを語ってどうするんだ、と怒られますからね
「お姫様にはとても強いお父様がいました」
と適当に話を作って続けると
「私のお父様はとてもお強いの」
とのことでした
どうやら騎士団の方のお嬢様のようです
ちょうどいいですね
騎士団の先輩×後輩モノでしたから
話の流れはそのままに登場人物をちょっと変えていくことにしました
「ある日、お隣の国と戦争、え~っと喧嘩が始まりました「けんかはダメなのよ?」」
お嬢様から鋭いツッコミが来ました
将来はお笑いのテッペンを目指せるかもしれません
お嬢様、恐ろしい子(笑)
「ええそうですね、けんかはダメですよね」
話を中断されましたが怒りませんよ
さすがに腐っているクズ人間ですが子供相手に大人げないことはしませんって
「でもケンカが起こってしまいました。そしてお父様はケンカを止めるために旅立ちました」
ちょっと違いますけど子供相手ですからね
正しいよりも分かり易いを優先します
「お父様、行っちゃうの?」
お嬢様が涙目です
・・・現実とお話の区別がつかないお年頃ですものね
ちなみにここにも歳いっているのに現実に関係なく攻めと受けの話を作る腐が居ますけどね(苦笑)
「大丈夫ですよ」
そう言って背中をポンポンと軽く叩いて宥めました
しかしここまで話に食いついてくると作者冥利に尽きますね
これだから創作は辞められません
「何日も何日もお父様は帰ってきませんでした。でもケンカが終わってようやく帰ってくることができました。お姫様は帰ってきたお父様に抱き着きました。おしまい」
話を終えるとお嬢様はホッとしたようです
ニコニコになりました
・・・現実とお話の境界が曖昧な子は腐にハマりやすいです
さしずめお嬢様は将来のBL愛好家予備軍ってところですね
そろそろ人類腐化計画を始めてもいいかもしれませんね