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14)戻ったフィンリーと友人たち

今回は区切りの都合で短めです。


「そんなに大怪我だったんだね、大丈夫なの?」

「ああ、腕の骨と足の骨を折ってしまったよ。でもまあ少しずつ痛みは引いているんだ」


昼の休みを告げる鐘がなって、ざわついた教室でジェイクが話しかけてきた。

杖をつく姿がそんなに珍しかっただろうか。


「本当は何があったのかしら。婚約者さまもだけど、なんだかどこかおかしく感じるわ」


男子の教室に遠慮なく入ってきたメイジー嬢が、ジェイクに向かって言った。

すぐそばにフィンリーがいるのに、やはり直接話しかけてはこない。

そんなメイジー嬢に、フィンリーは目を見据えて言った。


「エレノアと一緒にあの大階段から転がり落ちたんだ。

頭も身体も打って大怪我をした。

そして僕たちは今まで見えていなかったものや見ないようにしていたものが見えるようになった。

僕は、高位貴族が払うべき見えない税なんて払うつもりはない。

そんな見えないものではなく、目に見える形でやっていくよ。

いずれ公爵家を継ぐ日が来たら、継いだものを失くさないようにするだけでたぶん僕は死に物狂いだ。増やすことなんてできやしないだろう。

家で夕食を家族と毎夜食べることもたぶんままならない。僕の父がそうであるように。

自分の領地と人々を守りながら国を支えていくというのは、そういうことだ。

でもたった一人の婚約者を守ることもできない者に、領地やましてや国など守れるわけがないんだ。

だから申し訳ないが、エレノアにはもうやめてくれないか。

何か言いたいことがあったら、僕に向かって直接言ってほしい。

今までそうできなかったのだとしたら、それは僕のせいでもある」


メイジー嬢はびっくりしたような顔をしたが、すぐにいつもの何か含んだ笑顔になる。


「……婚約者さまはとうとう言いつけたの?」

「いや、あのとき僕も一緒にいたんだ。一緒にいて、直接この耳で聞いたよ」


本当はあの場にいたエレノアこそがフィンリーだったとは言えないし、言ったとしても理解されないだろう。


「そう……聞いていたの。でもわたくしがこんな風に言うのは決してあなたのせいではないわ。高位貴族様にそう言われるのは逆に腹が立つ。

わたくしはいつも自分の判断で話しているの。

……でも、ごめんなさい。

あなたの婚約者さまに、こんな風にはもう言わないと約束するわ」

「いや、エレノアにも直接言いたいことを言うのはかまわないと僕は思う、直接ならね。

面と向かって言われたことなら言葉で返せるから」

「知らないわよ? そんなことを言って。あなたの大事な婚約者さまにわたくしが何を言うかも分からないのに」

「大丈夫だ。エレノアはとても強いから」

「そうね、さっきも聞こえるかどうかくらいの声で言ったことに、婚約者さまはきっぱり言い返してこられたわ。今までそんなことはなかったのに、階段を落ちたときに頭を打ったのかしら」

「エレノアが言い返したのか! それはいいニュースだ。僕の婚約者は強くて素敵だろう?」

「……まさかあなたの口からノロけを聞かされるとは思わなかったわ……フィンリーさまも頭を打ったの?」

「いくらでもこれから聞けるから覚悟がいるかもしれないな。

ついでにひとつ頼みがあるのだが、流行りの髪飾りはどこで買うのがいいか教えてくれないか。僕はそういうことに少し疎くて」

「え?」


メイジー嬢が今までで一番驚いた顔でフィンリーのことを見た。

驚いているのはメイジー嬢だけではなく、ジェイクも、周りの者たちも幽霊に遭遇したような顔をしている。


「少し、疎くて……? ……少し? そりゃあいいや!」


ジェイクが身体を折って笑った。

そしてその笑いが引くと、


「僕も今まで君や婚約者殿に失礼な態度を取っていたことを謝る。申し訳なかった。

この学園を出たら君のことを『君』とも言えなくなるという事実に、僕は負けていたのかもしれない」


なんとなく神妙な雰囲気になってしまったが、ここでまた先ほどのように『それは僕のせいでもある』と言うのもどこか違う気がして、フィンリーは黙ってうなずいた。


それからメイジー嬢のお気に入りの店や婚約者や恋人に最近髪飾りを贈ったという者たちが、いろいろな店の名前を挙げてくれたりした。

授業が終わってもその話でもちきりになり、女子クラスのエレノアの友人たちも加わって、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

これではエレノアに内緒で髪飾りを贈るのは難しそうだと、そこはフィンリーの誤算だった。


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