13)戻ったエレノアと友人
今回は区切りの都合で短くなっています。
教室に入ると、クラリスとブランシュがわっと寄ってきてくれた。
「エレノアさま! 今日はフィンリーさまとご一緒にいらしたのではないのですか?」
「おはようございます、毎朝エレノアさまに話しかけてよいものかドキドキしておりましたわ」
「今日は、帰りに一緒に帰ろうと……フィンリーさまが誘ってくださいました」
「まあ! お帰りデートですか……素敵ですね。この頃フィンリーさまの雰囲気がどこか変わられたような気がするのです。エレノアさま、お幸せそうですわ」
「そうでしょうか、ありがとう。幸せというかとても楽しいです。わたくしのことばかりではなく、クラリスさまとブランシュさまだってお幸せですよね? クラリスさまのお誕生日のドレスの話をまだ聞いていませんし、ブランシュさまの手作りクッキーのお話も聞かなくては!」
「まあ、エレノアさまもなんとなく雰囲気が違いますわ。
でも今のほうがエレノアさまもフィンリーさまもとても素敵です」
エレノアは席に着いた。
フィンリーは痛む手足でどうしているだろう。
エレノアがフィンリーと入れ替わっていたときに、その痛みを自分の痛みとして知っている。
学園には杖を使わずに行くと言っていた。
馬車を降りてからそんなに距離はないし、学園内ではあまり移動しないようにするからと。
そのフィンリーの気持ちは少し分かるような気がした。
たくさんの友人たちの手前、あまり弱弱しいところを見せたくないのかもしれない。
エレノアが門まで行ったほうがいいだろうかと思案していたら、廊下が少し騒がしくなり
フィンリーが杖をついて歩いてやってきた。
(フィンリーさまは、ありのままの姿のほうをお選びになったのね……)
「まあ、杖をついて登園だなんて、そんなに大袈裟なお怪我でしたのね」
そのときメイジー嬢がエレノアに聞こえるようにそう言った。
聞こえるようにではなく、エレノアに聞かせているのが分かった。
その声に何が含まれているのか、これまでのエレノアならその答えが自分なりにみつかるまでは無反応でいることにしていたが、自分もフィンリーのようにありのままでいたい。
「そうなのです、大袈裟ではなく足と手の骨を折る大怪我です。最初は熱もあって眠ることもままならず、痛みも相当だったようですわ。
手と足の両方を折っているということは、うまくかばえないということのですから、学園に来るだけでも相当大変なことです」
メイジー嬢は驚いた顔でエレノアを見て、すぐに目を逸らした。
そんなメイジー嬢に背中を向けて、エレノアは廊下に出る。
言い返してもすっきりすることもないし、メイジー嬢も特に私の言葉など気にもかけないだろう。
ただ自分の中に何も溜め込まず、その都度外に出していくことをこれからは心がけていこうと思った。
「フィンリーさま、杖でいらしたのですね」
「ああ、やっぱり杖があったほうが、バランスが取りやすいと思ってね。
授業が全部終わったら、門のところで待っている。ローレンス家の馬車は来なくていいと伝えてくれたよね」
「はい、今日の帰りはフィンリーさまに送っていただきますと伝えました」
「それならよかった。あ、君のクラスの先生が教室に入ったようだよ、戻ったほうがいい。では帰りに」
フィンリーに促され教室に入った。
エレノアは席に座り落ち着かない気持ちでいる。
自意識過剰かもしれないが、みんなの視線が身体中に刺さるようだ。
恥ずかしさでいっぱいになりながらも、フィンリーが杖でやってきたことを嬉しく思っていた。
あの日、体裁を気にして大事なことから目を逸らすのは止めると言ったように、周囲からどう思われようとも杖をついてきた姿に温かい気持ちになった。
フィンリーさまは言葉だけでなく、きちんと行動にしている。
そして自分もメイジー嬢の言葉に返すことができた。
今まではすべて聞こえないふりをしていた。
あの距離で聞こえていないわけがないのにそうするしかできなかったが、これからは明らかに自分のことを言われていたら、どんどん応えていこう。
もしかしたら、自分たちは入れ替わって元に戻ったのではなく、どこか新たに生まれ変わったのかもしれないとエレノアは思い始めていた。




