小さな鬼百合
ニグリウスの父アルビターが生まれてからイゥニスの王になる迄のお話。
本編まだ投稿してないのでわかりにくい所も沢山有ります。
誤字脱字あったらすみません。
弱きを守り戦う事此れが僕の全てだと思っていた。
兄を守り国を支えるのが使命だと思っていた。
全て奪われた、力も、家族も、己の矜持すらも。
僕は鳳凰じゃなかった。
パトリックから聞いた衝撃の事実に泣く事も出来なかった。
私は不義理の息子だったのか、そんな事も知らずに僕は本当に馬鹿だ。
鳳凰じゃない僕はこのまま死ぬのだろう。
その目が嫌いだと目をくり抜かれ、二度と喋る事ができないように喉を焼かれ舌を抜かれた、逃げる事ができないように手足の腱を砕かれ羽を折られた。
壮絶な拷問の末に父上と母上にばれぬよう煉獄宮の奥深くに捨てられた。
いっそ処刑してくれれば良かったのに。
殺してくれれば良かったのに、何故生かしたのかわからない。
父上、母上、もう、会えないのか
痛い、悲しい、辛い、死にたい
アルビターは絶望とともに意識を手放した。
其れから間も無くして煉獄宮に似つかわしくない着物を着た白髪の美しい女が意識の無いアルビターを見下ろしていた。
「おやおや、だいぶ酷くやられなんしたねぇ。しかも、こんな所(煉獄宮)に捨て置かれるなんて一体何を仕出かしたんでありんすか?」
鳳凰かと思ったけど脱色で赤くして鳳凰の色にして有るのね…何と愚かな。
私が煉獄宮に来なければこの子は一体どうなっていたのかしら?
「千寿様!こんな所にいらっしゃったのですか?これは!!いったい何があったのです?」
「千寿様お怪我はございませんか?」
後ろから来た2人の男は女に駆け寄った。
千寿は2人に薄ら微笑んで言った。
「この者に呼ばれやんした。黙って出掛けて申し訳ありんせん。
一矢、Claude
私とこの者を火の柱PhoenixのFlamma様の元まで連れて行っておくれやす。」
「千寿様、鳳凰族はピーニックスには入れません。」
「そのまま死ぬでしょうが遊廓に連れて帰りましょう。」
「一矢もクロードも何か勘違いしているようですが、この者は同胞でありんすえ。」
千寿の言葉を聞き2人は真っ青になった。
「何と酷い事を。クロードその者をお前の外套で包め。私の打ち掛けで止血します。さっさとフラマ様の所へ行きますよ。」
「一矢、無駄とは思うが神聖術をかける。傷を治す事はできぬだろうが痛みを和らげるくらいはできるだろう。千寿様お力をお貸し下さい。」
クロードは千寿の袖に口付けた。
「ここに来る時に狩った魔獣の凝血石が丁度六つありんす。」
「では、血冥六花の秘術を試しましょう。」
命の美しき花、芳しき芳香、狂い乱れ咲けこの者の苦痛を糧に。
穢れた血に根をはり業を打ち砕け。
魂の穢れを清め赤き血の美しき花を咲かせよ。
凝血石から6輪の真っ赤な彼岸花が咲きあたりにも彼岸花が咲き、アルビターは人の姿から金色の子狼に姿が変わった。
「これで少しは痛みを感じる事なく眠れるでしょう。
こんなに幼いのに反獣も出来るなんてとても素晴らしい素質を持って生まれたんでありんすねぇ。」
千寿は優しく抱き上げた。
「それでは千寿様転移門を開きます。」
「ピーニックスへ」
一矢が言うと4人は光に包まれ、消えた。
辺りを覆い尽くす彼岸花花だけが残っていた。
ピーニックス最上階、命光炉の間にて。
「フラマ様お願いでやんす。
この者の命光炉を癒やして下さいませ。
見た目だけの怪我では有りんせん。
不死鳥で無ければ確実に死んでおりんした。
私はこのような仕打ちをした者を許せません、不死鳥と知っての狼藉ならなおのことっ!」
普段穏やかな千寿が感情を露わにし声を荒げフラマに詰め寄っていた。
「千寿よ落ち着きなさい。
鬼百合は目をくり抜かれ、喉を焼かれ舌を抜かれ、手足の腱を砕かれ羽を折られている。
仙脈を封じられ、金丹と修為、霊識までも奪われている。
神脈と龍骨が無事なのはこの仕打ちをした者が鬼百合を不死鳥と知らなかったからだろう。
辱めを受けていなかったのはせめてもの救いだが…
命光炉で身体の傷は癒やせても記憶は消せないし、心の傷は治せない。
千寿、お前は鬼百合を治して鬼百合をどうするつもりなのだ?」
千寿の頬を撫でながらフラマはにっこり笑う。
「わ、私の遊廓で大切に育てますわ。
この者が何者であれ、助けを求めていなくても私が拾ったのです。
コレは私のモノで、例えフラマ様でも私譲っては差し上げられません。」
千寿は扇子を広げて口元を隠した。
「千寿、喋り方が戻ってるよ。
鬼百合は私の孫だ。私の孫ではあるが神魂の系譜を現生させる片割れでもある。
遠い未来私の末の妹か弟を現生させる使命を持っている。」
フラマは静かに告げた。
「まさか、長らく不在であった樹の柱Taikiの守護者でありんすかえ?
プリミティーヴァ様の十三番目の尊き御子。
ならばなおさら私が隠して大切に育てるでありんす。
フラマ様も手伝っておくれやす。」
千寿は床に両手をついて頭を下げた。
普段千寿は千寿の認めた身内以外の他者に優しくないし、仕事以外で興味を示す事も関わりをもとうとする事も一切ない。
そんな千寿が出会ったばかりの同族の為に土下座して頼み事をしたのにフラマは内心驚いた。
いつもの千寿で有れば鬼百合をフラマに渡してすぐ遊廓に戻っていただろう。
千寿が他の者に関心を持つのは良い傾向と思うべきか。
鬼百合を選ぶのか、もしそうなら鬼百合は最強の一角になるかもしれないな。
「頭を上げなさい、千寿。其方に言われずとも、我が孫は助ける。
まさか其方が頭を下げるとは思わなかったが。」
フラマは穏やかに微笑んだ。
千寿は頬を赤らめた。
「一矢、クロード神殿に行って処女を下まで連れてきてくれるかな?
血冥六花の秘術では傷や病いは治せるても欠損部位は治らないからね。
確実な処女を連れてくるために幼女を借りてきて下さいね。」
「「かしこまりました親方様」」
2人は光に包まれて消えた。
「フラマ様、この子に処女同衾の奇跡を使うんでありんすか?」
「ああ鬼百合はまだ若過ぎて神刀を持っていないからね。
全てを元に戻すには処女同衾の奇跡も必要だろう。」
フラマはアルビターを膝に乗せて撫でた。
フラマ…しかし、狼というよりチワワだな。可愛らしい。
千寿…モフモフ、ドキドキ。モフモフしたいです。
gnisイゥニス
テザゥルム内の獣人を統べる国。
イゥニスは不死鳥族が治めている。
獣人は種族ごとに王族がいる。
王族は国は持たないが領地を持ち、種族を守っている。
不死鳥
不死鳥族は全てイゥニスにある火の柱Phoenixピーニックスで繋がっている。
不死鳥の現生と同時に象徴華の彫られた命光炉めいこうろがピーニックスに出現する。
命光炉の象徴華は全て違い、不死鳥は羽や汗から己の象徴華の芳香がする。
不死の炎とは命光炉の中にある火種の事で炎の色は不死鳥の持つ色で決まる。
命光炉を破壊されると不死ではなくなるが、命光炉はピーニックスの一部なのでピーニックスの守護者は破壊された命光炉を療す事が出来る。
本来、不死鳥は鳳凰から稀に生まれる。もしくは不死鳥同士にしか生まれる事のない希少種。
不死鳥族はエレメンタルピラーで護られた不死の炎が消えない限り滅びることはない。その代わり不死鳥族として生まれる者は限りなく少ない。鳳凰族と違い生まれ変わるだけでなく、そのままの姿で再生するため。鳳凰族は一生で1人しか愛さない一度でも愛してしまうと一生一途に愛するのに対して、不死鳥は多情で軽薄だが同じ不死鳥に対してだけは愛情深く慈しみ深い。これは不死鳥の担う役割の為の進化で他者に対して感情の起伏が少ないので冷徹だったり穏やかに見える。
不死鳥は身の危険を感じると1番近くにいる仲間に助けを求める。
それは卵であっても変わらない。
不死鳥は必ず魂の片割れとなる刀、神刀(もしくは神炉刀とも言う。)が有る。進炉刀は命光炉を使用して作られる、不死鳥が刀神として宿る。刀の刀神は一神だけと思われがちだが、優れた神炉刀には沢山の刀神が宿る。
神炉刀は認めた主人以外の言う事を聞かない。
神炉刀は主人以外に触られると自分で封印して鞘から抜けないようになるくらい主人を思うものが多い。
鳳凰
死んでも肉体や身体の一部でも燃やせば生まれ変われる。
赤ちゃんからやり直し。
鳳凰は死んでしまった他種族を一度だけ復活させる事ができる奇跡を使える。ただし、奇跡を使った鳳凰は不死ではなくなる。
鳳凰の羽根は色々な触媒に使われるので弱い鳳凰は狩られる事も多い。
一度愛すると一生一途に思い続ける。
鳳凰族は番が死ぬと生まれ変わるか、神殿で眠りにつく。
毎週木曜日に更新します。