その職員は幻聴だと思った
ローズとバルトは検閲を受ける長い列の最後尾に並んだ。
まだ日は高く、続々とツィッタートからの商人や冒険者が後ろに並んでいく。
その誰もが、ローズと主にバルトを物珍しそうに眺めている。
それはそうだろう。
翼竜をパートナーとして手に入れたものは、普通その国のギルドかまたは国にパートナー申請をして、識別番号カードを発行してもらう。
そうすると書類だけで事前に入国申請等各種手続きが可能になり、税関を通らず入国出来る。
後は目的地に最寄りのギルドで事前手続きで受け取った書類を提出するだけでいい。
この長い列を待たなくても良いのだ。
誰だって面倒だろうと事前申請を選ぶ。
だが、ローズはパートナー申請をしていないので入国申請に必要な識別番号すら持っていない。
ここに翼竜を伴って並ぶと言うのは、申請を怠ったとか、緊急で時間がなかったとかそう言う事しか皆想像しないだろう。
普通パートナー申請は翼竜を手に入れた国で申請する。
当たり前だ、近いのだから。
ツィッタートからロザインまで、魔力の多い個体で何とか渡れるかな、くらい離れている場所へ、手に入れたばかりでどれくらい飛べるかも分からない翼竜で飛ぶ人間などいない。
漸く自分の番になり、翼竜を見た税関職員がローズに識別番号カードを求めた。
「まだ持っていないの。今日パートナーになったばかりで。」
ローズがそう言うと、職員の目が点になった。
「え?ええ?ツィッタートでパートナーになったのですよね?」
「ええ、そうよ。」
「…なぜ、ツィッタートで申請しなかったのですか?」
「初めて乗ったらとても速いし魔力の多い個体だったから、ここまで来れるかもと思って試しに飛んでみたの。
やっぱり大丈夫だったわ!」
ローズがやりきった笑顔でそう言うと、職員の顔が引きつった。
顔にはありえないと書いてある。
「それで、パートナー申請をしたいのだけど、通っても良いかしら。」
「…では、身分証を!」
ローズに声を掛けられ、はっと我に返った職員が慌てて言った。
身分証をチェックされ、無事に通された。
無事にバルトと共にロザイン入りを果たし、さっさとパートナー申請をしようと近くのギルドへの道を歩いていたけれど、ふと先にお兄様達に見せようと思いたった。
ローズも魔力は殆ど残っていないしバルトも疲れているが、屋敷は目と鼻の先だ。
ローズはバルトに乗り屋敷に向かって飛びあがった。




