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紅竜の住処



翌日、朝日と共にローズは起き上がった。

修道院で過ごして以来、この習慣は続いている。

テント代わりのドームを土に戻し、朝日の中で紅茶を淹れた。

紅茶を片手に朝食代わりの焼き菓子を頬張る。

それはもう優雅に。

他の冒険者たちはまだ寝ているようだ。幸いにも。

相変わらずローズに非常識をやっている自覚はない。

これっぽっちもない。


「さて、そろそろ出発しようっと。」


今日は周囲を警戒しながらゆっくり進む。

道が整備されていないと言うのは、つまりこの辺りから翼竜がよく出没し始め攻撃される可能性が高いと言う事だ。

小一時間程警戒しながら歩いた所で、けもの道が二手に分かれていた。

先を見ると一つはもっと上へ登って行くようだ。

もう一つは何だろう?

そちらへ行ってみる事にした。

迂回するかのように大きくカーブし、あまり傾斜はない。

つまり火口には向かっていないようだ。

しばらく歩くと、森を抜け右手は崖のように岩肌が剥き出ている。

頭上でたくさんの魔力を感じた。

はっとして上を見ると、真紅の色が、岩肌からポコポコと突き出ている。

崖に穴を掘ってその中で翼竜が体を休めているのだ。

あまり深い穴を掘らないので体が半分出ている。


「巣だ。…ああ、この道はギルドが頭数を把握するための観察ポイントまでの道だったんだわ。」


パートナーになるにはまず背中に乗らなければならないので、あの巣よりも上へ登って、己の脚力か風魔法で飛び乗るのだろう。


(そう言えばみんなどうやって、独身の翼竜を見分けているのかしら?)


(つがい)を持っている翼竜とは絶対にパートナーにはなれない。

つまり、まだ独身の翼竜に飛び乗らなければ、骨折り損なのである。

けれど、パッと見ただけでどの翼竜が独身かは分からない。

しばらくローズは、翼竜たちを観察することにした。

よく巣穴を見ていると、浅い穴ばかりではないことに気付く。

そして深い穴の奥から、別の魔力を感じる。

番を持つ者の巣穴は翼竜二頭分の深さのため深いのだ。

けれど、穴の深さなどそれこそ上からでは見えないだろう。

ここで、ある程度目をつけその魔力を覚えておくのが良いかもしれない。

しばらくそうやって観察していると、急に翼竜たちが騒ぎ始めた。

警戒音をならし、たくさんの翼竜が巣を飛び出した。

上の方を見ると、人影があった。

恐らく冒険者なのだろう。

比較的体の小さな個体が、冒険者に向かって火を噴いた。

その冒険者はその火を、崖下に向かって落ちる事で避けた。一つの巣穴に向かって真っすぐに落ちて行き風魔法を使って浅い穴の入り口に着地した。

その穴はもう飛び立っている翼竜の巣穴で翼竜はいない。

だがそこをねぐらにしている翼竜が冒険者に向かって攻撃を始めた。

冒険者は翼竜に向かっておもいっきりジャンプした。

届かない分を風魔法で補って、背中に乗ろうとしている。

だが翼竜も簡単には乗せてくれない。

すっと身を翻して、冒険者を避けた。

結局その冒険者はその後も果敢に挑戦していたが、魔力が尽きたのか諦めたように逃げて行った。

けれど、まだ翼竜は騒いでいる。

どうやら別の冒険者が来たようだ。

その冒険者も、先ほどの冒険者と同じように浅い洞穴に向かってジャンプした。


(なるほど。独身の翼竜の住処を知ってそこに行けば、巣の持ち主が攻撃をしに帰って来るのね。)


二人とも今までに何度か挑戦し浅い穴の場所を覚えているのだろう。

ローズは今度は自分がどの翼竜を狙おうか観察を始めた。


翼竜をパートナーにする時、重視するのはその個体の大きさと答える者が多い。

それは大きい個体の方が保有魔力や体力が多いと思われているからだ。

けれど、必ずしもそうと言うわけではない。

体の大きさと魔力量は人もそうだが比例しない。


自分以外の人や魔物の保有魔力量は、大半の人間は全く分からない。

それを分かるようになるためには繊細な魔力コントロールを鍛える必要がある。

だがそれは家庭教師から理論やコツを教えてもらいながら、訓練することで育っていくもの。

適性があることは大前提だ。

つまり大抵の冒険者が保有魔力量など分かるはずもなく、結局選ぶ基準は大きさになるのだ。

ローズはもちろん、翼竜の魔力量は手に取るように分かる。


ふと思い出す。

そう言えば、リリーは魔力がかなり多い個体だった。

同じ竜騎士の翼竜を何度か見たことがあるが、リリーほどの魔力量の個体は見たことがない。

そして翼竜をパートナーにする時に、大抵魔力を無理やり核の場所まで叩き込み、自分の魔力をそこに刻むことでパートナーになるのだが、兄はそうではなかったらしい。

リリーは少し魔力を流しただけで、導かれるように核に魔力を刻んだから殆ど魔力を必要としなかったと言っていた。

そう言う事はまれにあると聞く。


(人とパートナーになるのに積極的なのは、魔力量と関係あるのかしら。)


そんなことを考えつつ、冒険者たちが去り大人しくなってきた翼竜たちを観察する。

日が高くなり気温が上がり始めると、翼竜たちは狩りに出かけるのか巣を離れる者が増えてきた。


(この群れの中で、魔力が一番多いのは、あのオスの翼竜ね…番は持っていない。)


その翼竜は餌を求めて巣を離れて行った。


(普通、群れで暮らす動物の多くが、優秀な子孫を残す為強いオスを望むのに、なぜあのオスはまだ独身なのかしら?)


そう思って番を持っている翼竜の観察をして気付いた。


(魔力量が殆ど同じだわ…。

ひょっとして翼竜も人と同じで魔力差が少ない相手を選ぶのかしら。)


番で子供を育てている翼竜は、一番遅く片方の翼竜が巣を離れて行った。

そうして殆どの翼竜が巣を離れてすぐ、一番魔力を持つ個体が何かを捕まえて巣に戻ってきた。


(流石ね。もう狩りを終えてるなんて、魔力量だけじゃなく、優秀なんだわ。

決めた!あの翼竜にしよう。)


ローズはそっとその場を離れ、分岐のあった場所まで戻り火口を目指した。



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