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ツィッタートへ



メイドに促されるまま湯浴みをして、服を着ようと思ったら、見慣れないワンピースが準備されていて、私の服が見当たらなかった。


「これを着ろってことね。お姉様のお古かしら。」


それにしてはちょっとお姉様の普段の装いとタイプがかなり違う。

お姉様は迫力のある美人顔なので、服装は装飾が控えめで洗練されたデザインの、より体形が強調されるような服を着ていることが多いが、このワンピースはどう考えてもそれとは真逆だ。

可愛らしい。

襟元に小花と細いリボンがあしらわれ、袖や襟は細かなレースで縁どられている。

胸元は襟元のリボンでしめたり緩めたり調節ができるようにあみあみになっていて、それも可愛い。

流石に、冒険者の格好でお茶をするのは駄目らしい。

素直に着替え案内された部屋へ入った。


「まあ、やっぱり可愛い!よく似合っていてよ。」


部屋へ入ってすぐのお姉様の反応である。

その反応で、私は理解した。


「お姉様、ひょっとして私の為に仕立てて下さったのですか?」


どう考えても新品だったし、そうではないかと思っていた。


「ええ、もちろんよ。冒険者には貴族の護衛の仕事もあるもの。

貴方の様に女性でしかも元貴族なら、きっと貴族令嬢から引っ張りだこよ!

その服ならさっき着ていた冒険者の装備も、下に着られるわ。

下に装備がつけられる特殊なドレスも仕立てているのよ。

間に合わなかったけれど。そちらも受け取ってもらえると嬉しいわ。」


「お姉様、ありがとうございます!!また遊びに来ます!」


自分が思うよりずっと、周りは冒険者の自分を受け入れてくれている事を知って、本当にほっとした。


「さあさあ、こっちに座って!お茶をしましょう!!」


「はい!でもそれより、私甥っ子が見たいです!!」


そう言うと、お姉様はくすくす笑ってメイドに目配せした。

どうやらこちらに連れて来てくれるようだ。


「そうね、ローズはまだラルフに会っていないものね。

連れていけたら良かったのだけれど…。」


ローズが社交界デビューを迎えた頃に、馬車旅が何とか可能な3歳になったラルフは、その後ローズの夜会参加解禁で、他国に赴いたり他国からの使者の歓待の夜会などに連れ回されるようになり、会う機会が全くなかったのだ。

その後はいろいろあって修道院にいたし。


暫く待っていると、扉が開き先ほど出て行ったメイドが戻ってきた。


「奥様、お連れしました。」


「おかあしゃま!」


てとてとと、可愛らしい男の子がこちらに向かって歩いてきた。


(か、可愛い!!!超絶可愛い!!)


髪の色や目の色は、レオお兄様そっくりだが、顔はお姉様にそっくりだ。

くっきりした目鼻立ちでくりっとした目が愛らしい。

将来美形に間違いない。


「ご挨拶はできるかしら?」


お姉様がそう言うと、はっとしてこちらを見た。


「らるう・ぶらんとみゅあーでしゅ!」


「私はローズです。貴方の叔母さんですよ。よろしくお願いします!」


胸を張ってそう言ったけれど、よく分からなかったのか、首をかしげている。


(かっ!可愛いいがすぎる!!)


ローズは目を押さえ悶えた。

ローズは自身の思うまま、存分に甥っ子を堪能した。


お菓子で自身の膝に誘い、身を委ねるくらい安心してきたら頬ずりとなでなで。

あー幸せ。

幸せいっぱいに堪能していると、ボロボロのぼろ雑巾のようになったお兄様が部屋に入ってきた。

恨みがましい目で睨まれた。

うん。お疲れ、お兄様。


「ラルフ、パパを癒やしておくれ~。」


と、お兄様が両手を広げて待ったが、あまりのボロボロ具合にラルフの顔がひきつっている。


「さっさと湯浴みをなさい!」


そこへ容赦ないお姉様の檄が飛んできて、お兄様は部屋を追い出された。

ちょっと不憫だった。

助ける気は全くないけど。

美人が怒ると迫力が凄い。

戦闘をすぐ止めたおじい様といい、先程のお兄様といい、この家のカースト一位はお姉様と見た。




翌日早朝、お姉様たちに別れを告げてツィッタートに向けて出発した。

海の旅は船員の風魔法で追い風を受け航行するので、距離はあるのに意外と早く着く。

5時間ほどで、ツィッタートの港町モッリスに着いた。


目指すは紅竜の山だ。

翼竜は、生息地によって色が違う。

ロザインの北部が生息地である翼竜は灰色をしている。

つまり、リリーの出身地はそこである。

ツィッタートの北部には火山があり、その火口付近には深い紅色をした翼竜の住処があるのだ。


ここに来た理由は、もちろん翼竜とパートナーになるためだ。

ローズにとって、竜騎士であった兄は憧れでもあった。

けれどかつての自分では、翼竜とパートナーになることなど、望むべくもなかった。

魔法力だけでは自分の身は守れても、体力がなさ過ぎて、背中に乗れたとしても振り落とされるのがオチだからだ。


だが今の自分は違う。


それに、ローズは対人戦こそ毎日のようにしていたが、魔物との戦闘は一度も経験がない。

純粋に力試しがしてみたかったのもある。

そんなわけで、ツィッタートの港町モッリスにあるギルドで、拠点の移動申請と紅竜の山の入山許可を貰い、登山準備の為市場へ向かった。

拠点の移動申請は、しておかなければその土地の依頼が受けられない為、移動してすぐの申請を冒険者登録の最初の説明でお勧めされた。

入山許可は、せずに入山すると憲兵に捕まり、罰金が発生する。

悪質な場合禁固刑が待っている。

翼竜は増えすぎたり減り過ぎたりしないよう、国が依頼する形でギルドが管理している為だ。


因みに翼竜とパートナーになったからと言って、竜騎士にならなければいけないという法律はない。

腕のいい冒険者の場合、翼竜を足として使う者は一定数いる。

それ以外にも宅配業者のような事をしている者もいる。

ただ一番安定した高給取りはやはり竜騎士だろう。

戦時でないならば一番人気の職業である。


ローズはもちろん足として使う予定である。

実家にも時々帰るつもりだし、最終的にフィノイスには行かなければならない。

まだ、リリーを取り返す算段は付いていないけれど。

もう、いよいよだめなら隠密魔法を駆使するつもりだ。

もう外交問題にはなるまい。


多分。





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