別離の時
それから二日間お兄様は家にいて、一緒に過ごした。
お兄様の臨時休暇は5日間で、二日をこちらで過ごし、三日をフィノイスの自宅で過ごすらしい。
この二日間王妃教育は全てお休みにし、父も午前中少し登城するだけで直ぐ帰ってきた。
たくさん話をして、たくさんリリーとも遊んだ。
ピクニックもした。
お父様までいるピクニックなんて記憶にある中では一度もない。
父もたくさん笑っていた。
そして別れの日、
お兄様が見えなくなるまで追いかけようと思っていたら、色々と察したお兄様が、屋敷の裏の丘で見送ってくれるかい?と聞いてきた。
お父様たちは屋敷の庭でお別れを済ませ、私はリリーに一緒に乗って、昔よく一緒に遊んでもらった丘に降り立った。
頂上までの少しの距離を、昔と同じように手をつないで登った。
空は私の心の様に曇天で今にも泣きだしそうな気配がしている。
頂上に着き、丘の上から景色を眺めた。
すぐに音もなく静かに霧のような雨が降り始めた。
「そろそろ行かないと濡れちゃうね。」
お兄様が困ったような顔で言った。
「…もう、行っちゃうの?」
お兄様の顔を見上げて言った。
お兄様は眉根を下げ、困ったような顔をした。
「…うん。」
また二人で少し景色を見てから、ピィィィーとお兄様が指笛をふいた。
バサバサと、すぐそばに待機していたリリーが下りて来た。
「リリー」
ローズが名を呼ぶと、リリーはすぐに顔を擦り付けてきた。
「ローズがそんな顔をしているから、リリーも心配しているよ。」
「だって…」
ローズは俯いた。
「大丈夫だよ。何も心配はいらない。」
兄はローズの頭をやさしくなでた。
そうして背を向け、乗りやすいように伏せた翼竜の背に飛び乗った。
「ローズ」
名を呼ばれ見上げた兄は、悲しくなるほど優しい顔をしていた。
「愛しているよ。ローズ」
そう言って飛び去った兄の背中を、見えなくなるまでずっと見つめていた。
裏山は崖っぽくなってて、追いかけにくいんです。




