護衛は様式
パーティーの翌日、朝食は部屋で取り、昼食会も遠慮して王都観光をして帰る事になった。
護衛はつくけれど、私は必要ないと思っている。
私より弱いし。
それに気付いている護衛たちの表情も物凄く微妙である。
叩きのめしたことのあるルフスなんて、目さえ合わせてくれない。
何はともあれ久々の市井だ!
昔のように平民の服ではないから、私とジークの周りは微妙に人が避けていくのが寂しいけれど、それは言うまい。
大通りにはたくさんの市が立ち、活気に溢れている。
「うふふ、ジーク何か食べませんか?」
「いいね。どれにしようか。」
久しぶり過ぎてワクワクしてしまう。
「あ、あれ!あの串焼きが食べたいです!」
「嬉しそうだね。」
クスッと笑ってそう言うジーク自身も、とっても嬉しそうだ。
そうやって思うまま観光を楽しんでいた時だった。
「ねぇジーク、道の向こうの雑貨の露天を見ている男性って知ってる?」
ジークがそれを聞いてさり気なく私の言った方を見た。
「いいや。不審人物なの?」
「ああ、いや。物凄い魔力量だからきっと高位貴族だと思うのだけれど。」
「見たことないなあ。あんなに鮮やかな赤毛、一度見たら忘れないだろうし。」
「そうよね。」
「まあ、建国祭に呼ばれている貴族だろうね。」
「あんな魔力量を隠しもしないなんて、何か目的でもあるのかしら?」
魔力は目に見えるものではないが、分かる人間には分かるので、大抵魔力を自分の体内に引っ込め、あまりおおっぴらにはしないようにする。
これは別に理由があるわけではなく、感覚的なものだ。
魔力を出しっぱなしで歩くというのは、例えるなら踵を踏んで歩く、とか、背中を曲げて歩く、とか人によってイメージは違うだろうが、そんな感じなのである。
正直私は気持ち悪い。
こそこそと話しながら、顔は向けないように暫く目の端で観察する。
すると男性がこちらを見た。
嫌なものを感じ、ジークとさり気なくその場を離れた。
背中を向け歩いていると、ふっと先程まで感じていた魔力を感じなくなった。
(え?)
びっくりして、つい条件反射で振り向いてしまった。
「ひっ」
思わず変な声が出た。
男性が目の前にいたのだ。
(気配を気づけないなんて…!)
護衛も全員反応出来なかったようだ。
「何か用ですか?」
ジークがすかさず私と男性の間に入った。
「そこのお嬢さんって未婚?」
底のしれない笑みを浮かべ、鮮やかな琥珀色の瞳が、前にいるジークではなく私を真っ直ぐに見つめている。
「彼女は私の婚約者だ。」
「そ。ざーんねん。」
そう一言言って、あっという間に雑踏に消えた。
「何だったんだ?」
「さあ…。」
気にはなったけれど、取り敢えず実害はなかったので、気を取り直して観光を楽しんだ。
そうして、ジークと二人で皆にお土産を買って帰路に着いた。




