古代魔法の謎・3
ローズの屋敷にもどった二人はさっそく書き留めた魔法陣を眺めた。
真ん中の一際大きな魔法陣は間違いなく守りの魔法陣だ。
少し違う部分は他の魔法陣との連携に必要なものかもしれない。
「一番手前の小さな魔法陣は…制御の為かもしれないな。制御する性質の魔法文字がかなり多いな。」
「ええ、私もそう思うわ。
最下層のこの魔法陣、状態保存かしら?
劣化を防ぐ物や状態を記憶する魔法文字があるけれど…、それだけじゃないわ。
ちょっとこれは解読に時間がかかりそう…。」
「魔法陣が立体的なのも気になるよな。本来なら表面に刻んでいる魔法陣だ。
どうやってこんな中に刻んだんだ?」
「ねえアル、私書き起こしている時に思ったんだけど、今まで見た古代魔法って、本当に表面に刻まれていたのかしら?」
普通現代魔法なら表面に刻み、刻んだ面を隠すように台座に取り付ける。
刻んだ部分が傷などで魔法陣が壊れないようにするためだ。
つまり底に書かれた魔法陣が透けて見えている状態なのだ。
二人ともそれが普通なので気にしたこともなかった。
「そうか…その可能性は高いな。もう一度見たくなったな。大きめの石の方が分かりやすいよな。」
「ジークの腕輪をもう一度借りようかしら。大きいし台座が平坦で囲われている感じではなかったわ。」
そう言うと、アルがなぜか苦い顔をした。
「いいよ、ちょっと大きめのを探しておくよ。」
「宛てがあるの?」
「…ないけど、まあ…」
アルにしては歯切れが悪い。
「午後からの王妃教育が終わったら、きっとジークがお茶に誘ってくれるだろうから、見て来るわ。」
そう言ったが、アルはなぜか機嫌の悪い顔をした。
午後、今日は王妃様のマナー教育である。
マナー教育といっても、自国だけでなく他国のマナーも、他国の独自ルールも全て身についている今、この時間はローズの休息の時間でもあった。
根を詰め過ぎる彼女は、周りがこういった時間を取らないと気付かない間にやつれていくのだ。
「いらっしゃい、ローズ。今日はいい天気よ。庭園でお茶にしましょう?」
優雅にガーデンテーブルでお茶を飲んでいる王妃様が、手招きをした。
「王妃様、実はお願いがあるのです。防音魔法をかけていただけますか?」
王妃は頷くと、すぐブレスレットに魔力を流した。
「もう一度、ジークの腕輪の魔法陣を確認したいのです。」
アルにはああ言ったが、ジークのお茶会まで待てないのがローズである。
「教会の魔道具を見たのですって?新しい発見があったのね?」
「はい。立体的で魔法陣が中心近くに埋め込まれていたのです。」
「ええ?表面に刻んでいたわけではなかったの?
ああ、それであなたは他のものも確認したくなったのね?
いいわ。ジークを呼びましょう。そのかわり、その後は研究を忘れてのんびりするのよ?」
「はい!王妃様。最近はちゃんと寝てもいるのですよ!」
魔鉱石につられているだけだが。
くすりと笑って王妃様はすぐにジークに連絡してくれた。
「ジーク無理を言ってごめんなさい。公務もあったのでしょう?」
「大丈夫だよ、ローズ。こんなわがままならいくらでも言って?」
暫くしてすぐに現れたジークに、なぜか王妃様は生暖かい目を向けている。
「それで、この腕輪がもう一度見たいって?」
「ええ、魔法陣を確認したくて。ジーク手伝ってくれる?」
「もちろんだよ。」
にっこり笑ってすぐに出したジークの手に自分の手を重ねる。
魔力を流し、現れた魔法陣を頭を低くしてテーブルの横から眺める。
見難そうにしていたら、王妃様がくすっと笑って見やすいように、目の前に持ってきてくれた。
魔力を流すのに邪魔にならないよう配慮しつつ、ちゃんと横向きで。
お蔭でとてもよく見えた。
目を凝らしてじっと見つめる。
「やっぱり…魔法陣は中に入ってる…。ん、でも…何か…。王妃様、そのままゆっくり正面になるように動かしてもらえますか?」
「こうかしら?」
ゆっくりと角度を変えてくれるのを瞬きもせず見つめた。
正面に来たときに確信に変わる。
「やっぱり、この魔法文字だけ階層が違うわ。ありがとうジーク、王妃様。」
魔力を止め腕輪を返した。
そうして一人腕を組んでうんうんと考え事をしていたら、王妃様に頭をつんつんされた。
「ローズ、お約束よ。これを見たら研究から離れてゆっくりお茶をするのでしょう?」
こうやっていつも王妃様は私の体を気遣ってくれる。
「あ、そうでした。」
あははと笑って、少しぬるくなってしまった紅茶を飲んだ。
やさしい味がした。




