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塀の向こう



私が魔法を知ってから、3か月程経った頃。

私はとうとう塀を越えた。

越えられたのだ。


「出来た!!」


隠密魔法そのものは結局10種類くらい出来た。

でもどれがどのくらい効果があるのかは分からない。

上手く隠れられているかどうかは、自分では分からないのだ。


ああ、自分がもう一人欲しい。



取り敢えず、一番詠唱が短い物で試してみた。

するとメイドは私を見失い、私の目の前で私を探し始めたのだ。

私はメイドから見えない位置まで移動した。

隠密魔法に限らず、自分が対象となる魔法を発動しているときは、魔法同士が干渉するので別の魔法が使えない。

つまり足場になる結界魔法を使って塀を越える時は、隠密魔法は解除しなければならないのだ。

誰かに見つからないかとドキドキしながら、階段のように結界魔法を作って塀を越えた。


「出来たは良いけれど…、どっちに行こう?」


折角なのでてくてくと、気の向くまま歩いてみた。

迷子になるのは嫌なので、出来るだけ真っ直ぐ。

景色が覚えていられるように、よく日の当たる太い道を選んで景色を眺めながら歩いた。

だんだんと、周囲の家が小さくなり、通りを歩く人が増えて来た。

けれど、人が多ければ多い程何だか私、浮いてない?

暫く歩いていると、魔力の動く気配を近くで感じた。


(あれ?何で?)


平民で魔力持ちは殆どいない。

魔力がゼロと言う訳ではないけれど、感じ取れるほどないのだ。

実際、今自分が見ている道行く人の中で攻撃魔法が放てる程の魔力を有する人は皆無。

だからこそ、魔力を持っている貴族の子供は犯罪者に狙われやすい。

とくに女性は子を産めるので、悲惨な目に合うと、塀の向こうを眺めていた私に、いつも一番私を監視しているメイドが何にも聞いていないのに言っていた。


けれど、確かに魔法の発動を感じた。

「きゃぁ!」と言う、僅かな悲鳴も。

方角は分かるけれど、細くて暗い路地を通らなければならないようだ。


(道、覚えていられるかな?)


ドキドキしながらも、好奇心には抗えず私は細い路地に入った。

念のため開発した隠密魔法の中でも、魔力をたくさん使う方を自分に掛ける。

表通りにある商家の横を通り更に奥へ。

魔力を感じた方へ向かって行くと、屈強な体つきで人相の悪い男三人が、大きな頭陀袋を囲んでいるところに遭遇した。

一人が袋の口を縛り、一人はそれを「早くしろ!」なんてせかしている。

残る一人は周囲を警戒しているようだ。

さっき感じた魔力を持っているのはその警戒している人だけれど、攻撃魔法が放てる程はもう残っていないようだ。

頭陀袋の中から感じる魔力の方がまだ多いくらい。


(あの中、人が入ってる。)


サイズ的にどう考えても子供だ。

さっきの悲鳴の主かもしれない。

助けてあげたいけれど、力ではどう頑張っても勝てないだろう。

頭の中で、今までに覚えた魔法の中で使える物を探す。

いくつか攻撃魔法を思い出したけれど、隠密魔法を自分に掛けている今の状態では発動できない。

それに一人にしか掛けられないから、残りの二人に口を押さえられてしまっては終わりだ。

仕方なく、隠密魔法を掛けたまま三人の後をつけて行った。



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