願ったり叶ったり
「まあそれはともかく、本人に言っても聞かない以上周りが彼女を休ませるしかない。だがメイドも彼女が寝たのを確認しているのに、なぜか夜更かしした顔で部屋から出て来るらしい。どうしたものかな。」
「研究となると周りが見えないからな…。あいつ、ひょっとしてあの魔法を使ってるのか…」
「何だ?」
「いや、以前ちょっと面白いものが偶然できて…起動すると魔法陣の中の映像を記憶して発動するとその映像を再生するんだ。最初に込めた魔力が無くなるまでずっと。現代魔法ではあるんだけど、幻影の古代魔法の研究中にできて。使いどころが分からなかったけど…寝ている自分を記憶して再生すればメイドの目を欺いて研究できるな、くらいは考えそうだと思って。」
「それだな。間違いなく。」
基本的に彼女は欲望に忠実な人間だ。
抱く欲望が常識とかけ離れているが。
二人そろってため息を吐いた。
「とにかく昔から、あいつにいう事を聞かせるには、分かりやすいご褒美を用意するのが一番効くんだ。あいつが今一番欲しい物は…魔鉱石だな。これからの研究で多分山ほどいる。」
「純度はどれくらいだ?」
「多分星5つくらいで何とかなるんじゃないか?小出しにしてくれよ?多分暫く彼女が欲しがるのはそれだけだ。」
魔鉱石の純度は星で評価される。
星が多くなればなるほど純度が高く産出量はぐっと減る。
10段階評価で3以下はクズ石と言われ装飾品の飾りや特殊護符など消耗品に使われる事が多い。
星5あたりは魔道具の魔法陣用によく使われていて、産出量は少なくないが需要が多いので値段も高めになっている。
父公爵なら湯水のごとく使えるだろうが、養われの身は許可がなければ何も買えない。
ローズは内緒で市井に下りるときは身の回りのものを換金してお小遣いにしているが、そんな物では流石に魔鉱石は買えないのである。
因みにちゃんと管理されている宝石の類はこっそり取ろうものならメイドの責任問題になって大変な事になるのでそれはしない。
せいぜい着られなくなったドレスのレースや生地を売るのだ。
「分かった。ちゃんと寝るごとに渡す事にしよう。公爵に頼んでみるかな。」
夕方目を覚ましたローズは、外が夕暮れになっていて驚いた。
「私、何時間寝ていたの?」
窓を見て呆気にとられながらつぶやくローズの後ろから、答えが返って来た。
「4時間くらいかな?おはようローズ。」
びっくりして振り返って更にびっくりした。
「アルとジーク?!なんで二人がここに?」
「「監視」」
二人はにっこり笑って、仲良く同時にそう言った。
「へ?監視だなんて、もう!…ちゃんと休んだわ。」
二人はローズの勘違いを正さずに、話し合いで決まった事を告げた。
「え、私がちゃんと寝たら、魔鉱石をくれて、教会の魔道具も見せてもらえるの?!」
なにそれおいしい!
「寝るわ!ちゃんと寝る!!」
アルとジークは満足げに頷いた。
「監視」…もちろんローズに変なことをしないよう、お互いがお互いを監視していたのですよ。
ローズが王城で寝ていると知っているのに、アルがまっすぐ帰るわけないと踏み、案の定ローズの寝ている部屋の前にいたアルを見たジークが、諦めて二人でローズの寝顔を拝み、お互いを監視していました。
話が終わって部屋に移動してから約3時間ずっと。
護衛の自分を見る目が、最近哀れな者を見る目なのがちょっと気になるジーク。




