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SS. 可愛い妹と可愛くない義弟(予定)



「お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」

「ちちうえ、いってらっしゃいましぇ!」


早朝、3歳になったばかりの息子と愛妻に見送られリリーに乗って出発した。

今日は可愛い妹の社交界デビューなのだ。

もう12歳だと言うのに、何時までたっても子供っぽくて心配ではあるが、自分に飛びついてくるローズを抱きしめると、何時までもそのままでいて欲しいとも思う。


「リリー、兄上に負けたくない。ちょっと急ごう。」


リリーにちょっと魔力を分けてスピードを上げた。

大人げない自覚はあるが自重する気はない。

このペースなら午前中に着けるはずだ。


予定通り午前中に屋敷の上に到着したが、今日はローズの出迎えがないようだ。


「それもそうか、流石に夜会用のドレスで来られても俺も対処できないな。」


いつもなら、屋敷の上空まで来ると、得意の魔法を駆使してリリーの上まで飛びついてくるのだ。

母上が見ていない時限定だが。

今日はドレスを汚されないように、母上もローズに張り付いているはずだ。

ふと入口を見ると、馬車が入ってこようとしているのが見えた。


「やば!兄上に先を越される。リリー急いで下りて。」


屋敷の入口ギリギリに下りて、何とか兄上より先に屋敷に入った。

玄関ホールにも可愛い妹の姿がなくて、メイドを見ると問いかけなくてもすぐに談話室ですと返事が返ってきた。

二階に上がると、豪華な夜会用のドレスのせいで歩みが遅くなった妹が一生懸命こちらに向かっていた。うん可愛い。

めちゃくちゃ可愛い。

とはいえ、この口から出てくるのはせいぜいこんなセリフだ。


「やあ、馬子にも衣装だね。久しぶり、ローズ。」


けれど、この可愛い妹は私の気持ちを分かってくれる。

毎回帰るとまっすぐ胸に飛び込んでくれるのだ。

今日はドレスのせいで無理だったようだが。


よくよく考えれば、リリーで帰って来るのに玄関ホールより外で出迎えるなんて、異常なんだと初めて気付いた。

馬車ならば門の所で屋敷内に知らせが届くので、そこから玄関先に進む間に、玄関ホールまで来るのは普通だが、自分は空から門を通らずやってくるのに妹はどうやって気付いて出迎えていたんだろうか。

後で母上がいない所できいてみよう。

多分母上に怒られる様な手段を使っているはずだ。


談話室で話をしていると、殿下の到着の知らせがきた。

ローズが一人で玄関に向かおうとしている。


「エスコート役が二人もいるのに、何一人で行こうとしてるの。」


夜会用のドレスを着ていても相変わらず行動はローズだった。

エスコートしようと立ち上がったら、兄上に即座にローズの横を陣取られてしまった。

急ぎっぷりが大人げない。

白い目を送っておいた。


一階に下りると玄関ホールに正装姿の殿下が待っていた。

ちょっとイラッとした。

エスコートを代わる時、ローズの背中で兄上が殿下ににこやかに威圧を放っていた。

大人げないとは思いつつ、胸がすっとした。


二人が出発すると、母上をせかして急いで登城した。

母上は慣習を守って、ゆっくりいこうと説得されるかと思ったが、意外にもあっさりと出発した。

陛下たちへの挨拶をさっさと済ませると、父上が母上に捕まっていた。

間違いない、母上は殿下との仲を裂こうとしている父上に気付いて登城を早めたのだ。

父上がローズを頼むと目線を送ってきたので力強く頷いておいた。

殿下と一緒のローズを早々に見つけ、さり気なくローズの両脇を兄上と固めた。


「お兄様方、私がローズを守りますから、大丈夫ですよ。」


「帰れよ。」の副音声を拾った。


「気にしないでくれ。俺たちにとっても久しぶりの夜会を楽しんでいるだけだから。」


「誰が帰るかよ。」の副音声を送っておいた。


そんな空気に気付くことなくローズが欲望のままにお菓子が食べたいと言い出した。

殿下相手に随分取り繕わなくなったもんだと驚いたが、いくらなんでも婚約者の前で食い気を前面に出すローズがローズで笑えた。


「このデザートコーナー、私の好きな物ばかりで目移りします!」


その言葉に、はっとした。

確かにローズの大好物ばかりだ。

ローズがあまり好まない、もそっとした食感のお菓子が一つも見当たらない。

こいつ王太子の特権でローズの好物ばかりにしたのか!

こいつも大概だな。

そうは思ったが取りあえず、お菓子を前にローズにすることは一つだ。

ローズの口元に好きそうなお菓子を持っていく。

母上の言いつけを守ろうとする健気なローズを言いくるめ、いつも通りお菓子を食べさせる事に成功した。

うん、やっぱりうちの妹は最高に可愛い。

兄上も負けじとローズの好きなクッキーを口元に持っていく。

この顔が最高だよな?と目で会話した。

殿下がボソッと「ローズが人の手から躊躇いなく食べるのは、この二人が原因か。」と呟いていた。

正解だ。

正確にはメイド達も昔からローズの口に飴やクッキーを入れているので我が家というのが正解だ。

次にどのお菓子を食べさせようかとテーブルを見ていたら、激怒した母上に見つかってしまった。

どうやら父上の挨拶回り(時間稼ぎ)が終わってしまったらしい。

仕方ない。

帰ってお説教を聞くしかないようだ。ちっ。

ふと振り返った時に見た、殿下の満面の笑みに殺意が湧いたのは秘密だ。



書いてて楽しかったです。

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