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社交界デビュー・再び面倒くさい令嬢



ジークと並んで会場に入ると、一斉に視線が集まった。

それはそうだろう。

殿下は只でさえ注目の的なのに、婚約者は皆名前しか知らない人が多いのだ。

将来、王妃になることが決まっている令嬢と仲良くなりたくない貴族はいないのだ。

そもそも公爵家ともなれば、大抵の貴族がすり寄ってくる。

もちろん、中にはローズマリーを蹴落として、後釜に自分がと思っている令嬢もいるけれど。

そしてそんな令嬢の筆頭が、早速二人を見つけ向かって来た。


「ごきげんよう、ローズマリーさん」


髪をもりもりにもって、これでもかと生花を飾ったクリスティアーナがにこやかに声を掛けてきた。ドレスの色は新緑である。

それを見たジークの呆れた気配を感じた。

殿下は上位になるので、公式の場では気軽に声を掛けてはいけない存在の為、二人が離れない内に声を掛けて来たようだ。

国王陛下と王妃に挨拶を済ませば、二人はそれぞれ別行動をとる可能性がある。

もっともジークがローズを離す訳はないのだが、そんなことを彼女は夢にも思わないだろう。


「ごきげんよう。」


ローズマリーも王妃様直伝のにこやかな表情を浮かべ対応した。

話題は振らない。

貴方と話す事はない、の意思表示である。


「最近とてもお忙しそうですけれど、王妃教育は終わりまして?」


(またその話題なの?ジークに聞かなかったのかしら。)


「いいえ。」


「まあそれは大変!私はもう終わりましたけれど、そんなに難しかったかしら?頑張ってくださいまし。応援しておりますわ。」


何を返そうか迷っていると、隣でジークがふっと笑った。


「クリスティアーナ嬢、何か勘違いしているようだけれど、君の王妃教育のレベルは彼女はとっくに超えているよ?彼女は教師全員から気に入られていてね、是非もっと先に進めて欲しいと教師陣から要望があって、こちらが彼女にお願いしているんだ。」


(ジークったら。前に彼女とお茶会をした時、てっきり誤解を解いてくれているのかと思っていたのに、こういう公の場でやり返す為に態と言わなかったわね。)


「君も知っての通り、王妃教育は私の成績によって進度が決められるが、ありがたい事に私も教師陣から評価は高くてね、今代の王妃教育のレベルは最低水準なんだ。だから簡単だったでしょう?彼女は1年程で終わったそうだよ。」


「な、そんな事…うそでしょう?だって誰も…何も言わなかったわ。」


「誰に何を聞きましたの?貴方と私の家庭教師は全員別ですのに。」


(え、ひょっとして教師陣もグルなの?なにそれ怖い。)


貴族社会で敵を作ることの怖さに恐れおののいていると、ジークが私の腰を引き寄せた。


「ローズが優秀で、私も鼻が高いよ。」


そう言って、私のこめかみの上あたりに触れるか触れないかのキスを落とした。


(ち、近い。)


流石に顔が赤くなるのを自覚した。


「応援ありがとう。お気持ちは頂きますわ。」


物凄く注目されているこの場からさっさと離れたい一心で、お気持ちさえ遠慮したい所だが、にこやかにそう言ってその場を後にした。


そうして、真っ直ぐ国王陛下の上座まで進んでいく。

するとなぜかモーゼの海割りがごとく道が開く。


(あれ、なんで?私実はめっちゃ嫌われてる?)


かなり不安だが、王妃教育で不安な時こそ笑えと教えられている。

「背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を向いて唇には微笑を。」ああ、王妃様の声が聞こえるようだわ。

少し落ち着いた。

因みに王と王妃に挨拶をするのは王太子とその婚約者の二人は形式的な物で、それを邪魔しない事は暗黙の了解である。

挨拶を終えるまでに声を掛けても構わないのは、親族とかろうじて婚約者の家の爵位と同じかそれ以上のものとされているので、クリスティアーネはぎりぎり大丈夫だ。

この夜会に出ている公爵家は他にいないので、海割れのような現象が起こっただけである。


二人の御前で、私は王妃様仕込みの臣下の礼を取り、頭を下げた。

ジークも隣で礼を取っている。


「ローズか、今日は一段と美しいな。」


「待っていてよ、ローズ。貴方と私の仲ですもの、堅苦しい挨拶など結構よ。こちらにいらっしゃい。」


陛下と妃殿下の気安い挨拶で周囲が少しざわついた。

ジークと共に言われた通り、近くに寄ると何だかほっとした。

王妃様は私にとって、第二の母のような存在だ。

時に優しく、時に厳しく、人として大事なことをたくさん教わった。


「ふふ、ドレスとても似合っていてよ。一生懸命考えたかいがあったわ。」


「ありがとうございます。ふふふ、お袖のレースをお揃いにして下さったのですね。どこがお揃いになっているのか楽しみにしていたのです!」


数か月前、ある部分をお揃いにしたのよと王妃様から教えてもらってから、とても楽しみにしていたのだ。


「母上、あまりローズを独り占めしないで下さい。」


「嫉妬深い男は嫌われるわよ。あなたは宝飾品を全て選んだのだから、このくらいは許して欲しいわ。」


「そんなことより、ローズ、そなた少し根を詰め過ぎではないのか?ヘルマンが王妃教育の後帰宅しても、休むことなく魔法研究に明け暮れていると心配していたぞ。」


「ご心配ありがとうございます。ですが、大丈夫ですわ。王妃様や殿下がお茶に誘って

下さって、癒してくれていますもの。それに、魔法研究はわたくしの趣味です!禁止なんてしないで下さいまし。」


「ふ、ははははは!」


どこに笑う要素があったのか私には分からなかったが、陛下が大声で笑った。隣で王妃様も笑っている。


「本当にそなたは変わった娘だ。早く嫁いで来てほしい物よ、のうテレーゼ。」


「ええ、早くお嫁にいらっしゃい。」


どこからそんな話に?!

こ、こんな公の場でその話題?!

ぼんっと音がしそうなほど、一気に顔が熱くなった。


(へ、へ、平常心よ!今こそ王妃教育の教えを!)


その後、どうやって御前を下りたかあんまり記憶にない。



あんまり内容的に納得いっていません。書き直そうか散々迷ったけれど、いい流れを思いつかないので結局そのままアップしました。うーん…ナンカチガウ

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