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面倒くさい令嬢

すみません。31話「諦めない親子」、大事な一文抜けてました。追加しています。



とうとう、王妃教育が始まってしまった。

今私は研究の手を止めしぶしぶ王城に来ている。

今日は政治のお勉強をするらしい。

数日前に教科書となる書物が王宮から届けられ、お母様に「覚えるべき事を覚えなければ、王妃教育の時間が長引き、更に研究時間が減ることでしょうね。」と脅されて、全部暗記する勢いで読み切っている。

私の今日の目標は「教える事がないので、本日は自由時間です。」である。

いざ!と、私が気合を入れメイドに案内された部屋に入ると机が二つ並んでおり、奥の席に見覚えのある令嬢が座っていた。

それから、机に向き合うように椅子が置かれていて、立派な白いひげを蓄えたおじいちゃんも座っている。


(この方が先生ね。)


「二人は面識がありますかな?」


白い髭のおじいちゃん先生が問いかけた。


「ええ、ブラントミュラー公爵家のローズマリーさんでしょう?もちろん知っていてよ。」


座っていた令嬢が肩にかかった金髪を後ろに払いながら答えた。


(ええと、誰だったかしら。見たことはあるのよね、この縦ロール。あ、そうだお茶会で見たんだわ。)


「ジークのお茶会でお会いしましたね。シュラム家の方でしょう?名前は…ええと…」


その言葉に、ぴくりと令嬢が反応した。


「ちょっと貴方、たとえ殿下が愛称を許して下さっていたとしても、公式の場では敬称で言うのが礼儀でしてよ!婚約者だからと言って何をしても許されると思ったら大間違いよ!!」


もう面倒臭いにおいがぷんぷんする。


「ああ、…殿下のお茶会でお会いしましたね。」


公式の場という事には疑問しかないが、面倒くさそうなので慌てて言い直した。


「それに、公爵家の令嬢が他の公爵家の方の名前も覚えていないなんて!ちょっと自覚が足りないのではなくて?!わたくしの名前はクリスティアーネよ!」


「失礼しました、クリスティアーネさん。」


(この方お母様と同じ人種なの?実はあの人種って結構いたりするの?嫌過ぎるんだけど。)


私はうんざりした顔で席に着いた。


「貴方がそんな様子だからきっと私が一緒に勉強することになったのですわ。」


「どういうことですか?」


「うふふ、貴方は確かに婚約者ではあるけれど、私が婚約者候補であることは変わらないということよ。つまり、貴方が王太子妃としてふさわしくないならば、私が婚約者になる、ということね。」


「そうなの?!じゃあ私ふさわしくないから、もう帰っていいのかしら!」


「ま、待て待て!待つのじゃ!」


私が嬉々としてそう言って帰ろうとすると、なぜかおじいちゃん先生が慌てている。


「婚約者はそう簡単に変わるものではないわ。それに王妃教育をクリスティアーネ嬢が一緒に受けるのは、わしはシュラム公爵のごり押しと聞いとる。婚約者候補なぞ初耳じゃ。」


「な!!わたくしは父からちゃんとそう聞いています!ごり押しだなんて!わたくしは王妃様のお気に入りですのよ!!」


何だかよく分からないが二人が言い争いを始めた。


「はて、王妃様のお気に入りはローズマリー嬢の方じゃと聞いとるが。」


「なんですって!貴方が事情を知らないだけでしょう?!たかが平民に事情を全て話すわけがないもの!」


何この状況。


「先生にたかが平民って…」


二人が言い争っている横でちょっとびっくりして呟いた。


「ふむ。随分わしの認識と違うようじゃが、まぁわしはお主ら二人に教えるように言われておる。どんな理由であろうとそれは変わらぬ。ローズマリー嬢、お主の父からは興味のない事は聞かぬと聞いておるが、わしの授業で落第者なぞ出すわけにいかんので、聞かぬならば聞くまで聞かせるまでじゃ。分かるの?」


(お母様の言っていた通り、研究時間が減るのね!?)


私はこくこくと頷いた。


「では始めるとしようかの。まずは、自己紹介じゃな。

わしはヴィンセント・ヴィルケ。貴族籍は持っとらんので好きに呼ぶと良い。」


それを聞いて、クリスティアーネさんがふんっと鼻を鳴らしたのが聞こえた。


(貴族籍を持っていない…。さっきクリスティアーネさんが平民と言っていたからまさかとは思ったけど…。でもこんな威厳のある平民見たことないわ。確かに気安そうではあるけれど…。本来の身分を隠している?うん、その方がしっくりくる。)


ローズマリーは屋敷を脱走して市井に下り平民のふりをして遊ぶ、と言う事をかなり小さい時から繰り返している。

平民をよく知るローズマリーからすれば、彼が平民など絶対にありえないという感覚だった。


「世界各地を旅した経験をかわれて、お主らの家庭教師に選ばれたようだの。まあじゃからわしの前ではマナーなどどうでもよいぞ。」


そう言ってにっこり笑ったが、ローズマリーはぞくっとしたものを感じた。

最初は好々爺として気安く人の良い印象だったが、よくよく見れば油断ならない気配を感じるのだ。


(この人、見た目通りの人じゃないわ。そうよ、ただの平民が王妃教育なんて出来るわけがないもの。)


油断なく見つめながら、ごくっと唾を飲み込んだ。



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