どこに行ってもお説教
ルイスお兄様が一年半の婚約期間を終え、隣国で結婚式を挙げる日が近づいていた。
私の誕生日に里帰りをしたかったようだけれど、流石に結婚式直前の為、諦めざるを得なかったようだ。
その代り、父の仕事の都合もあり長くは滞在できないけれど、だだをこねなくても隣国へつれていってくれるので私は大満足である。
タチアナお姉様やフィルスマイアー公爵様に会った時の注意事項が、恐ろしく多くて長くてずっと聞いているのが大変だったけど。
初めての国外旅行だ!
「ようこそ、おいでくださいました。」
朝早くから長距離用の魔導馬車にゆられ、もう日も暮れる頃、漸くフィルスマイアー公爵領に着いた。
「ルイスか。少し見ない間に良い顔をするようになったじゃないか。」
「お出迎え、ありがとうルイス。」
ルイスお兄様が初めて見る女性と二人で、私たちを出迎えてくれた。
何だか余所行きの顔で、かしこまって挨拶をしている。
うん。なんか公爵家当主って感じ。
ちょっとムズムズする。
「長旅お疲れ様です、お義父様お義母様。初めましてローズマリーさん。」
兄の隣にいる女性がそう挨拶した。
やっぱり結婚相手のタチアナさんのようだ。
ここはちゃんと挨拶しなくては。
「初めまして、タチアナお姉様。ローズマリーです。ローズと呼んでください。」
「まあ、こんなに可愛い妹が出来るなんて!仲良くしてくれると嬉しいわ。よろしくね、ローズ」
「こちらこそ!お姉様。」
お兄様と同じ、優しい目をした人だった。良かった!
「長旅でお疲れでしょう。お部屋へ案内します。」
軽く会話をしながら案内してくれたタチアナお姉様は、高位貴族令嬢にありがちな高慢さは一切なくて、お兄様から聞いた通り穏やかな方だった。
屋敷は流石公爵家、我が家も大概大きい方だと思っていたけれど、ちょっと負けているかもしれない。
趣は全然違うなぁ。
どの家具も細かく繊細な細工がなされていて、一見して高価だと分かる作りをしているけれど、決して華美ではない。
荘厳な雰囲気のこの屋敷の景色に溶け込んでいる感じ。
「晩餐までには父も帰って来ると思いますので、それまでゆっくりなさって下さい。お風呂の用意も出来ております。」
「ありがとう。心遣い感謝します。」
きょろきょろと物珍しく観察していた私の足をさりげなく踏みつけて、にっこり笑顔のお母様が応対している。
顔はお姉様に向いているのに、背後に見える般若の像がこちらを向いている。器用な。
お姉様が去った後、お風呂より何より当然お説教である。
きょろきょろしていたのを怒られるだけかと思ったら、なんと馬車の下り方からだった!
初めての国外旅行に浮かれていた自覚はあったので、粛々とお説教を聞きました。
ええ、ちゃんと聞きました。
大事な事なので2回言いました。




