報告会
次の日、人払いをした談話室に家族が全員集まった。
いよいよ、この一か月の報告を私にもしてくれるようだ。
「まず、ルイスの婚約が決まった。婚約期間は一年半、半年間はうちにいるが残り一年は隣国に行き、フィルスマイアー公爵の元で過ごす事になった。」
「半年後だなんて…おめでたい事ですけれど、少し寂しいです…。」
口に出すと急に寂しくなって、ルイスお兄様の隣へ座って抱き着いた。
「ははは、隣国と言ってもロザイン寄りだからね、リリーに乗って時々は帰ってくるさ。」
そう言って、頭をやさしく撫でてくれた。
「でも、どうしてお兄様が隣国の公爵になるのです?」
それがな…、と父は難しい顔をして話してくれた。
この婚約は国の友好の為の政略結婚だったようだ。
兄が政略の駒として使われた理由は、フィノイス王国の、ロザイン王国とは反対側に位置する隣国テラマグナ帝国の一部の部族が、時折フィノイスの国境を越え、たびたび小競り合いが起こるようになった事が原因だった。
これがもし侵略戦争に発展してしまうと、大国であるテラマグナの国力を考えればロザイン王国も影響は大きく、最悪友好国であることを理由にフィノイスと一緒に飲み込まれてしまう可能性もある。
ただ救いなのは、国境を越えて来るのは一部の先住民族だけで、テラマグナ帝国の意思ではない事である。
だが再三に渡って、これについてテラマグナに苦情を申し入れても静観の構えを取っており、どうもキナ臭いのだ。
もしその部族との小競り合いで白黒はっきりした結果を出したり、相手の領土を侵してしまうと、戦争に発展する可能性が大きいと見ている。
戦争を阻止するには、つまり国境を越えさせないようにすることが最善なのだ。
国境すべてを、兵で固めるのはそれこそ挑発行為なのでできないが、知らぬ間に国境を越えられてしまうのは困る。
そこで活躍するのが竜騎士である。
上空でパトロールすることで一早く異変に気づき対応することができるのだ。
けれどフィノイスの竜騎士隊はロザインより少なく20にも満たない。
そこでフィノイス王国は、ロザインの竜騎士隊を貸してほしいと打診してきたらしい。
だがもし竜騎士隊を貸し出すと、万が一戦争に発展した時、ロザインに攻め込む大義名分になってしまう。
しかし友好国となっている現在、何もしなければこの揉め事が解決した後、今度はフィノイスとロザインの関係が悪化してしまう。
そこで、この婚姻である。フィノイス側からすれば竜騎士一人ではあるが、借りるのではなく、自国の竜騎士が増えるこの提案は悪くないのだ。
そして婚姻によって騎士を譲り受ける為その相手に選ばれたのは、跡取りのいない公爵家の令嬢だった。
この公爵家も親族にふさわしい跡取りがおらず、次期公爵の椅子を巡って骨肉の争いに発展し始めていた。
ルイスは公爵令嬢と年齢もつり合いが取れ、ロザインの公爵家の次男である為公爵家当主になれるだけの教育も受けている。
何より王命なら、醜い争いを繰り広げているうるさい親族達を黙らせることができる。
この難しい問題全てを兄一人で解決することができるのだ。
そんな理由で半年後、ルイスお兄様は婿入りの為隣国へ行くことが決まった。




