手懐ける方法
新たな守りの魔法陣に興奮しているローズマリーに、我に返った王妃が話しかけた。
「ねぇローズ、このことはお父様に報告していないのかしら?」
すると、途端に彼女はおどおどし始めた。
「あの、…それは…、これって報告したら怒られると思いますか?」
不安そうにそんな事を聞いてきた。
どういう事か聞くと、父親に研究結果を報告すると結構な確率で怒られるらしい。
彼女には怒られる理由がよく分からないから、最近は殆ど報告していないのだとか。
王妃は、恐らく彼女はその研究の過程でやらかした事を怒られていて、研究を怒られたとしか彼女が思わないだけなのだろうと真実を正確に理解した。
「ローズ、これを見るには2人いるのでしょう?相手が公爵でないのなら、誰と発見したのかしら。」
「アルトゥール・メルローです。」
「ああ、アルトゥール侯爵の嫡男ね。彼は誰かに話したのかしら?」
「ああ、それはないと思いますわ。彼は今までの研究結果をストラになってから発表するのですって。この研究は私と連名にすると言っていましたわ。私はどうでもいいのですけれど。」
「貴方と話していると、だんだん常識というものが、どこにあるのか分からなくなってきたわ。」
「母上、私も今同じことを思っていました。」
二人は視線で分かり合った。
「ねぇローズ、また私とお茶をしてくれるかしら?」
王妃がローズマリーに尋ねると、彼女は慌てふためきあからさまに狼狽していた。
顔に面倒くさいという文字が見えるようだ。
「王宮の宝物庫に守りの魔法陣が刻まれた魔道具がまだあるの。よけれ「ぜひまた呼んでください!!」
彼女の顔はさっきの狼狽した顔がうそみたいに輝いていて、キラキラした目で王妃を見つめていた。
(ああこの顔、このキラキラした目…、えーとあれなんて言ったかしら、ほら木の実をあげると物凄くキラキラした目でいいの?ってちょっと首をかしげて、うるうるしながら見つめてくるあの小動物。)
名前は思い出せないが、王妃はとりあえずローズの頭をなでなでしておいた。
それを殿下がちょっと羨ましそうに見ていた。
だんだん彼女の人となりが分かってきた王妃は、この危なっかしい娘が面白くなってきた。
「これ、今が旬のフルーツのジャムがたっぷり中に入っているの、美味しいわよ。召し上がれ。」
そう言って、にっこり笑ってローズマリーの口元にお菓子を差し出すと、ぱぁっと顔が喜色満面に輝き嬉しそうに直接かぶりついた。
王妃の手から直接。
ためらいもなく。
そして王妃が手を離すと両手にもってもぐもぐするローズマリー。
(なにこのかわいい生き物。)
仕草や立ち居振る舞いは高位貴族のそれなのに、ちょいちょい気になる非常識。
そして、お菓子を前にした時の年相応のキラキラ顔。
マルタから聞いた通りである。
お茶会がお開きになり、ローズマリーがほくほく顔で帰った後。
「母上、婚約者は彼女が良いです。」
「よく言ったわ、ジーク!陛下に報告して、直ぐに公爵に打診してもらいましょう。」
こうして、ローズマリーはさらに公爵が胃を痛める方向につき進んでいた。
りすかな。




