小さな研究者
超貴重な魔道具だって、魔法オタクの二人からすればおもちゃである。
今日も今日とて古代魔法の刻まれた指輪に魔力を込めたり発動したり、色々してみたがさっぱり原理が分からない。
現代魔法と古代魔法の一番大きな違いは魔力効率だ。
古代魔法は、効率が恐ろしく良いのだ。
そして何より一番の違いは他の魔法と干渉しない事。
現代魔法の結界魔法は、内側からの魔法にも反応する為、結界魔法で自分を守りつつ相手を攻撃する、なんてことは不可能だ。
だが守りの魔法は、結界内の攻撃は結界をすり抜け相手に届く。
つまり自分を守りつつ、攻撃することができるのだ。
守りの魔法にもいくつか種類があるらしく、性能は物によって少々違うが、大抵の守りの魔法が刻まれた魔道具はこの性質を持っている。
ローズマリーが手に入れた魔道具は、魔力を込めた時だけ発動する守りの魔法陣が刻まれた魔道具と言うことだけは分かったのだが。
ただ、魔力の流れに敏感なローズマリーよりさらに敏感なアルトゥールが言った、「ぼく一人の魔力を込めた時より、ローズの魔力が入ってる時に込めた時の方が、なんか中の魔力の揺らぎが強い気がする。」という一言が、ローズマリーは気になった。
「ねぇ、同時に魔力を込めてみる?」
「いいね。やってみよう。」
二人は指輪に手を翳し、同時に魔力を込めた。
「あ、分かる!一人の時より揺らぎがわかるわ!」
「うん、同時の方がずっと強い。でも魔法陣を読み取れる程じゃないな。」
「そうね。でも魔法陣が今と同じ円形な事は何となく分かったよね?」
「どうしたらもっと分かるだろう。方向性は悪くないよな。」
「揺らぎが強くなる原因って何かしら。一人と違う事は…。魔紋が複雑になるとか、かしら。」
「ああ、あの魔力を可視化するって言って色々やったときの。そう言えばあの魔道具に二人で同時に流したら、どんな模様になるんだろう?」
実は二人は以前、親しい人だと魔力を感じただけで誰か分かるのを、視覚的にできないか、と言うテーマで色々研究したことがあるのだ。
結果、指紋のように一人一人特徴のある模様を浮かび上がらせる魔道具ができた。
テストしてくれた人の中で同じ模様の人はいなかったので、魔紋と名付けたのだが。
会う人会う人に魔力を流してもらって、しばらく遊んだけれど、ある程度サンプルができたらどうでもよくなって放置である。
久しぶりに引っ張り出して、二人同時に流してみた。
「わぁ!!すごい!!」
「なんだこれ?!」
そこには、一人の時にはなかった規則性のある模様が出ていた。
縦横の幅の間隔は違うけれど、綺麗な格子模様だったのだ。
再び二人は、会う人会う人にお願いして、二人のどちらかと同時に魔力を流してもらった。
すると、魔力の多い者同士なら、きれいな格子ができるが、魔力差があると格子っぽくはなるがところどころ切れるところができる事が分かった。
因みに魔力が少なめの二人では切れている個所は少ないが、格子の数が少なかった。
「これ、ひょっとしてきれいな格子になればなるほど、あの魔力の揺らぎが分かるんじゃない?」
「それを証明するには、さっき縦横の線の間隔が違っていたから、間隔が一緒になった時の魔力の揺らぎを調べる事だね。でも、どうすれば一緒になるんだ?」
「きっと魔力の強さを調節するんだわ。
一人の時、模様は人によって全然違ってたけど、二人だとどの人との組み合わせでも格子になったのよ?
格子のサイズは随分違ってたけど。
もう流す魔力量しか考えられないじゃない。
人が魔道具に無意識で流す魔力量なんて、本来の魔力量に比例しているはずだもの。」
「そっか。じゃあ二人で魔力を流す量を全く一緒にすればいいのか。」
二人はどちらがちょっと多いだの少ないだの言いながら何度も試したが、なかなか縦横の線の間隔を一緒にすることはできなかった。
そこで片方の手を合わせ、お互いの魔力を相手に流すように押し合い、押す力が拮抗した所で、その圧と同じ圧で反対側の手から魔力を押し出す、という事で無事解決した。
そこで、いざ本番である。
指輪を中央に置き、片手を合わせる。
「拮抗したわ。」
「よし、流すよ。せーの!」
二人が魔力を流した直後、指輪についた魔鉱石の中央、いつも揺らぎを感じていた部分に、見たこともない魔法陣が浮かび上がった。
「「ああ!!!」」
二人とも興奮して魔力のコントロールを忘れてしまったせいで、あっという間に消えてしまったが、二人は夢中で近くの紙に覚えている限りの魔法陣を写した。
完成させた魔法陣を護符に書き写し、魔力を流してみる。
「すごい…。ちゃんと発動してる…」
二人は感動してしばらく放心していた。




