通学路にて(1)
2020年4月2日、今日から新しいクラスでの授業が始まる。王都立天門学園、これが俺の通う学校だ。俺が産まれた頃はまだ残っていた戦争の傷跡も街からは消えて、さすがは天空都市アルウェリアと言ったところか、見よ!この華やかな街並み!いやー無理を押し切って受験したかいがあったよ、うんうん。
俺の出身は人間の国「マリテカ」そのちょっと端っこのナージという街なのだが、とにかく田舎っぽいのだ。今でもただの機械に頼りきって生活しているのだからもう…。しかしエンジェラは違う!戦争に勝利し、全ての最先端をゆく国!最強ッ!ここまで発展してるとただ歩いてるだけでも幸せになってくるぜ。
「なーにニヤニヤしてんだよハル、きもいぞ。」
んなっ、コイツはまた!ほんとに俺の核霊は俺に対して口が悪い。
「あっはは、またネロに悪口言われてるのかい?」
「シオン…笑ってんじゃねー!」
シオンはこの国に来てから出来た初めての友人。道に迷っていたところ声をかけてくれたのが始まりで、同じ学園かつ同じクラスという狙いすましたような展開があって、それから仲良しってわけだ。年中黒い髪が目を覆い隠している。ボブヘア…っていうのか?が一番近い気がする。最初後ろ姿を見た時女子かと思ったのは内緒だ(ホントに女子ならもはや運命的な出会いだったのに…)。
「シオンはいいよなー、アルルリと仲良いんだもんよー。」
「僕からしてみればハルとネロも仲良しに見えるよ?」
「うんむ、仲良く見えるぞ?」
シオンの後ろから純白の頭がこちらを見ている。シオンの核霊、アルルリだ。垂れ耳の犬っているだろ?アレが二本足で立って、黒いローブを着た感じ。長い角も生えてるし、顔も犬より可愛げがある。身長は2m無いくらいか?シオンが小柄だからな。ちょっと分かりにくい。
「ネロはツンデレなんだよな?」
「違う!ていうかお前はシオンに甘すぎないか?この前なんてマシュマロ何袋開けたよ?」
「ネロお前、この前っていつの事だ…?俺は知らないぞ。まさかまた勝手に…。」
「ギクッ!?」
「来てたな、我が家に。」
「なっ…アルルリお前裏切ったな!」
俺の核霊であるネロはドラゴンのような見た目をしている。ザ・ドラゴンて感じだ、まじで。見た目はいいんだけどなぁ。こいつめ、俺が昼寝してる間にシオンの家にお邪魔しているようなのである。それもスイーツをご馳走になるために!
「いつもごめんなシオン。」
「僕は別に気にしないよ?ハルも来ればいいのに。」
「ハルと一緒に来たらオレの取り分がっ。」
…こいつほんとに俺の核霊なのか?
まぁシオンの家に行きたくなる気持ちは分からなくはない。シオン・ロスハートはかなりの豪邸に住んでいる。なんでも祖父が貴族だったらしい。父の代で落ちぶれたと話していたが、それでもあの豪邸は冗談がきつい。メイドだっているんだぜ?
でもここがシオンのいいところで、なんていうか庶民的なのだ。シオンが豪邸に住んでいると知ったのはつい最近で、よくいる高飛車な貴族の雰囲気がまったくもってない。まぁ貴族では無いみたいなので当たり前なのかも。
ちなみにシオンには妹がいるが、両親はいない。事故で亡くなったそうだ。…結構波のある人生だよな。
「…?どうかしたの?」
「あ、あぁいやなんでもない。今年も同じクラスだといいなって思ってさ。」
「ハルにはシオン以外に仲良い友達いないもんな。」
「お前なー!」
ネロの口の悪さは何とかならないものか。俺にだけ口が悪い。何故だ。…まぁでも、シオンより仲の良い友人がいないのも確かだ。だが友達がいないなんてことは無いんだ。そりゃシオンと同じクラスのがいいけど。
ドッ
「あ、ごめんなさい。」
ネロを睨んでて前見てなかった。これは俺が悪そうな気配がする。
「俺の方こそごめんなさ…あれ、お前ー」