057 ヘルメット
ハリーがまだ疑ってるので、ダンジョンの1階だけ同行してもらう事になった。
目の届かなくなる深い階層では裏切られても助けが来ないからだとか。
素直にそれを話したら「警戒するのは良い事だ。冒険者には必要な能力だよ」と笑って言われた。大人だ。
「私の名前はリョハン。パーティー『マサケント』のリーダーをしている」
「自分はロキスルです」
『俺はハリー』
簡単な自己紹介をダンジョンに向かいながらした。
マサケントは、4人組のパーティーで、戦士が2人・斥候が1人・盾役が1人という構成。
戦士がリョハンさんとオガコウさん。
斥候がマリンさんという女性。
盾役がアーヴェルというボディビルダーみたいな男性。戦闘時以外は荷物運びを兼任している。
ちなみにマリンさんとオガコウさんが夫婦なんだって。
レベルは全員が50~60というベテランチーム。
戦闘スタイルは、斥候が罠解除や索敵をして、戦闘になれば盾役が道を塞ぎ、その隙間から戦士が攻撃するらしい。
以前は魔法使いも居たらしいが、炎系の魔法が使えなくなった事で新たな魔法習得の為に今は居ないらしい。
……スミマセン!
で、俺達の戦闘スタイルも話そうとしたのだが、それは言わなくても良いとの事。
「気軽に話さない方が良いよ。有能なら勧誘がひっきりなしに来るからね」と言われた。
じゃあ何で自分達は話したのかと聞くと、ベテランクラスになれば誰もが知ってるかららしい。
ダンジョンに到着し、手続きをして中に入る…………前に止められた。
はい、想像通り「装備」が普通に街を歩く格好だから。
「お金が無いんですか?! だったら貸しますので、ヘルメットくらいは被ってください!!」
ダンジョン前を守ってる兵士さんは良い人だった。
このままここで押し問答してもしょうがないので、ヘルメットを装備する事に。
買ってくるので少しだけ待っててください、と言って街の方へ走り、物陰へ隠れる。
そこから収納魔法を使って中に入る。
「確か兜達はこの辺に置いたと思うけど……あったあった」
そう、ここには城から返された怪しい兜が沢山あるのだ。
埋めて無くて良かった。
俺が装備してもそんなに違和感の無さそうな物を数点持ち出す。
「怪しい兜ばかりだけど、どれならOKとか精霊は判らないかな?」
もし判ってもドラゴンが居ないので、意思の疎通に問題があるな……。
どうしようか? よし、実験だ!!
「今から炎を出すので、装備したらダメだと思う兜だけ燃やして欲しい」
こう言って種火を出す魔法を使う。
指先から30cm先辺りに種火が出る魔法だ。
普通はこれで燃えやすい物に着火するんだけど。
その種火が勝手に分裂して、それぞれが兜に向かう。
そして触れたかと思うと、兜が燃え上がる事もなく溶けていく……。どれだけの高温なんだよ。
延焼しないようにはしてくれているみたいだけど、地面が一緒に溶けてますけど……。
そうして数箇所の穴と、兜が1つだけ残った。
穴は周囲の土を被せて隠しておいた。
残った兜は、近代の自転車競技で使うようなヘルメットっぽい形。流線型っていうのかな?
素材は不明。金属でも植物でも無いような感触。でもめっちゃ軽い。
間違いなく呪われている一品なんだろうけど、精霊が大丈夫と許可した物だ。
どんな呪いなんだろうか?
ここで思い出した。
俺は、役に立たないと言われる鑑定魔法が使える事を。
物は試しでやってみても良いだろう。
「神のメモ帳を読む魔法」だから誰かが後付けした呪いまでは出てこない可能性もあるけど。
鑑定魔法を発動すると、兜に付箋のような物がくっついているのが見えた。
これが神のメモか。
それに書かれているのは……
『分類:兜
追記:アホが魔力を吸って固くなる呪い付けやがった。吸い続けるから魔力の少ない人類は死ぬに決まってるだろ!
ムカつくからそいつの運をマイナスにしてやった。タンスに足の小指をぶつけて死ね!』
神様ご立腹です。
と、とにかく、魔力を吸い続ける兜って事は判った。
俺なら問題は無いな。
見なかった事にして、皆の所に急いで戻ろう。