052 ダンジョンの街「プレム」
到着した街の名は「プレム」。
王都に最も近い、ダンジョンのある街だ。
と言うよりも、ダンジョンがあったから街が出来たってのが正解なんだけど。
ダンジョンは街外れ(北側)にあるらしい。
中心だとばかり思っていた。
今でも外部から獣が寄ってくるので、街外れにあるんだって。
だから冒険者も、ダンジョンに入る組と、外部の獣退治する組に分かれるそうだ。
俺達は貰った紙を出して、速攻で街に入れて貰った。
紙を見た兵士は二度見どころか十度見くらいしてたけど。
通る時には「誰にも言いませんので!」と言われた。
やはり“国の調査官”という肩書のせいだろう。
何者かの不正を調べに来たとでも思っているのだろうか。
もし本当に誰かが不正してて、調べる前に隠匿されれば、真っ先に疑われるのはこの人になるね。そりゃ怯えるわ。
まぁ、俺にそんな事を調べる気は無いんだけど。
『じゃあ早速!』
「ああ、ダンジョンだな」
『そう、ダンジョン…………違うわ! まず宿だろ!!』
「え? 何で? 預けなきゃいけない馬車は荷物も無いし、ダンジョンに入ったらしばらく戻って来ないんだぞ?
宿に行ったって無駄じゃないか? ダンジョンから戻ってからでも良くない?
ついでに言えば、別に疲れてもないし」
時間的にはまだ夕方とは言えないくらい。
今から宿に行く必要は無いだろ。
行くならせいぜい飯屋くらいじゃないか?
『宿に泊まる事に意味があるんだよ!』
「どんな?」
『そこから物語が始まるんだよ!
新たな出会いとか、その宿が荒くれ者に狙われてるとか、俺達が泊まる事で繁盛するとか!』
「ダンジョンに行っても新たな出会いはあるだろ。
荒くれ者に狙われてるような宿には泊まりたくないな。
俺達が泊まったら繁盛するのは、意味が判らない」
『風呂の良さを教えたり、異世界の料理を教えたり、そういう感じだよ!』
「風呂に入りたければ……ほら、そこに銭湯があるぞ。
異世界の料理? 俺は作れないけど、ハリーは作れるのか? あっちに居る時に料理とかしてた?」
『……してない』
「じゃあレシピとか知ってるのか?」
『コンビニ飯とパン、後はレンチンとカップ麺ばっかだった…………』
「無理じゃね?」
『ああっ!! こんな事なら料理を勉強しときゃ良かった!!』
無駄な後悔をしてる。
ま、料理が出来たとしても意味無いと思うけどな。
だって、日本食に必要な醤油と味噌が無い。
この世界にある素材と調味料で創作料理を作れるような人は、元の世界でも凄い料理人だったと思うぞ。
「って事で、このままダンジョンな」
『何でそんなに行きたいんだよ!』
「それが目的で来てるからだよ。気になるじゃないか!」
『そういえば、お前はそういうヤツだったわ。忘れてた……』
って事で、早速やってきました、ダンジョン!
ってか、ただの洞穴!
『なぁなぁ、ちょっと質問があるんだが』
「なんだよ」
『何でダンジョンには戦士みたいなヤツばっか入って行くんだ?』
言われてダンジョンの入り口を見れば、確かに鎧兜を着て、腰には剣を着けている人ばかりだ。
「……別に良いんじゃない?」
『いやいや、冷静に考えろよ。ラノベでダンジョンに行く冒険者をイメージしてみ?
戦士や盗賊、魔法使いや弓使い、僧侶や荷物持ち、こんなのが想像出来たろ?』
「言われれば、確かにそうだね」
『なのに入るのは戦士ばかりって変だろ!』
「……別に良いんじゃない?」
『良くない!!』
ハリーが騒ぐので、ダンジョン前を警備してる兵士がこっちにやってきた。
とりあえずまた紙を見せて身分の証明をしておく。
「ご、ご苦労さまです。ところで何やら言い争いをされていたようですが……。何事でしょうか?」
「いえ、何でもありませ……」
『何で戦士ばかりダンジョンに入るんだ?!』
なんでも無いと言おうとしたのに、ハリーに邪魔された。
「い、いえ、さまざまな冒険者が入っておりますが……」
『そんな訳無いじゃん! だって、全員似たような格好だぞ!?』
「え~と……」
「すみません、こいつはほら知性のある獣ですから。
人間の事には詳しくないのですよ! 説明していただけると助かります」
俺がそう言うと、兵士は納得した顔になった。
逆にハリーが納得出来ない顔になったけど。
「そういう事でしたら。
あの格好はですね。ダンジョンに入る場合の標準的な装備ですね」
「標準的ですか?」
「はい。ダンジョンとはいえ、洞窟です。
落石もあれば、鍾乳洞の場合もありますので」
すご~く納得した。
つまり、魔法使いだからと三角帽子にローブ姿じゃダメだという事だ。
上からの落下物があるから、頭部を守る為にヘルメットが必要。
壁の出っ張りとかが危ないから鎧が必要。
元の世界で言うなら、山登りするのに短パンに半袖で来るヤツは居ないのと同じって感じ。
ハリーは、納得したけど納得できないって顔してた。




