030 部屋と訪問者
俺の部屋は二階だった。
部屋に案内してもらい、中に入る。
おおっ! 広い!
二部屋あり、一つは寝室で、もう一つはソファやテーブルのある部屋。
貴族御用達だからかな? この部屋で客に会うんじゃないだろうか?
そして驚いた事に、二階にもトイレがあった!
上がってきた階段の横にあって、一階に降りなくても良い!
最後の驚きは風呂もあった事。
さすがに一階にしかないけど、それは日本の旅館の大浴場のような物で同じでしょ。
まぁ、中には上階にある旅館もあるけど。
部屋をウロウロしたら金庫発見!
鍵がかかってないので意味無いかと思ったら、金庫の中に鍵が入ってた。
この金庫、ちゃんと考えてあって、金庫の内側にも鍵を差す所がある。
理由は、ここに鍵を差し、表にあるダイヤルキーを変更する為。
これで自分の決めた数字に変える事が出来る。
だって、前にこの部屋を利用した人が、この鍵の複製を作ったら簡単に開けられるからね。
それを出来ないようにダイヤルキーが付いている。
ダイヤルキーは全面に4つ付いていて、どれも数字が変更出来る。
0~9なので10000通りになる。
これなら鍵を複製しても、総当たりで開けようとしても時間がかかる。
高級宿は考えられているねぇ。
ちなみに高級品は受付でも預けられる。
そりゃ朝出て夜まで帰って来ないなら、部屋の金庫は危険だからね。
このように部屋を散策していると、呼び鈴が鳴った。
廊下に紐があり、それを引くとこの部屋にある鈴が鳴る仕組み。
「は~い、今出ます」
「パトリエル様にお客様がいらっしゃっております。どうなさいますか?」
受付の男性だった。
客? 領主さんか師団長さんかな?
「どうする、とはどういう意味でしょう?」
「ロビーで会われるか、お断りされるか、このお部屋で会われるか、という意味に御座います」
そういう事か。
部屋を知られたくなければロビーで、って事ね。
俺にはここでの知り合いは領主さんか師団長さんか御者さんしかいない。
ならばここで会っても問題無いだろう。
「部屋で会いますよ」
「判りました。では案内して参ります」
「お願いします」
師団長さんかな?
寝室にはベッドが2つあるし、ここに泊まるのかも。
「失礼します」
予想に反して、案内されてきたのは、全然知らない男の人だった。
誰? 何の用?
「ええっと……俺に用なんですよね?」
「はい、そうです」
「じゃ、じゃあ、どうぞ入って下さい。あっ、座って下さい」
「ありがとうございます」
「パトリエル様、何か飲み物をお持ちしましょうか?」
「あっ、そうですね! お願いします」
「承知致しました」
受付の人は万能です。
細かい事に気づき教えてくれる。
助かります。
飲み物が届き、受付の人が退席すると、知らない男の人が話しだした。
「私は、ランディと申します」
「ランディさんですか。……お会いしてませんよね?」
「はい。初めてで御座います」
「え~と、どのようなご用件で?」
「私は使者で御座います」
使者? 死者? 支社?
「パトリエル様を王城へご案内する為に参りました」
「…………はい?」