017 運搬
「では準備をするとしよう。ドラゴンの所まで何日くらいかかる?」
いきなりの難しい質問。
重力を減らして跳んできたからなぁ。
普通に歩いていったらどれだけかかるのだろうか?
いや、歩いて行く必要は無いか。
全員が重力魔法で跳んで行けば良いのだ。
でも、その場合、着地の練習が必要か。
「ちょっと聞きたいんですけど、同行者は木の上に着地出来ますか?」
「出来る訳無いだろ。何だ、そのバカな質問は」
一蹴された。
まぁそうだよな。
おれもドラゴンに特訓させられたもん。
出来るなんて言われたら1年くらい練習した俺が可哀想だ。
そうなると……俺が運ぶしかないか。
全員に荷台にでも乗ってもらって、それを俺が持ち上げて跳ぶ。
重さは精霊に頼んでいい感じにしてもらえば可能じゃないか?
「同行者が乗れるほどの荷台を用意してください。
それで底に取っ手を付けて下さい」
「……もしかしてドラゴンに運ばせるつもりか?」
「そんな事しませんし、ドラゴンも運んでくれませんって。
俺が運びます」
「またバカな事を言いだしたぞ。お前が馬の役目をするってのか?」
「違いますよ。持ち上げて跳んで行くんです」
「そんなヒョロヒョロの体で?」
ヒョロヒョロで悪かったね。
良い物食べてないんだからしょうがないでしょ。
「魔法を使います」
「そんな魔法があるのか? もしかしてそれもドラゴンから教わったのか?」
「そうです」
「今、ここでやってみせろ」
「良いですよ」
俺は兵士二人に、体育座りになってもらった。
精霊に兵士にかかる重力を1にしてもらい、襟首を持って持ち上げる。
6を1にしたけど、重さは単純に1/6ではないんだ。どういう法則か現在は不明だが、一人辺り1kgくらい。
この法則も近い内に解き明かす予定。
「ど、どうなってる?!」
師団長さんが驚いている。
普通は驚くよね。俺も最初は驚いた。
判る判る。
「分かりやすく言えば、この一人の重さを1kgくらいにしました」
「はぁ?!」
「だからこの通り持ち上げられますし、投げる事も出来ますよ」
「投げるな!」「止めろ! いや、止めて下さい!」
持ち上げたビビリまくりの二人の兵士から静止の声がかかる。
師団長さんは投げて欲しかったのか、受け取る格好になってた。
ゆっくり空中を跳ぶのって結構楽しいのにな。慣れれば、だけど。
二人の兵士を降ろし、重力を元に戻してもらう。
腰が抜けたようで、立ち上がれないようだ。
「こんな感じで、荷台を持ち上げて運ぶつもりですけど……ダメですかね?」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ」
「落とさないか? 途中で魔力が切れるとか魔法の効力が切れて落ちるとか、無いだろうな?」
「無いですね」
そもそも魔力を使ってないし。
精霊が止めない限り大丈夫だ。契約してるので言わなきゃ止めないし。
「……荷台を用意しよう。取っ手もつけよう。
それから実験だ。まずは荷物を乗せて、次は兵士を乗せて、最後に荷物と兵士を乗せてみよう。
問題無いなら、それで行こうと思うが……その前に聞いておく」
「何でしょう?」
「徒歩では行けないのか?」
最初に戻ってしまった。
行けない事は無いけどなぁ。
でも、師団長さんが指摘したように、俺ヒョロヒョロですよ?
体力の無さには自信がある!
もし徒歩なら、到着に1ヶ月以上かかりそうだ。
ここは適当な事を言って誤魔化そうか。
「徒歩でも行けますけど、途中に渓谷とかあって大変ですよ? 獣やモンスターも襲ってくるでしょうし」
「……判った。ではお前の魔法で行く前提としよう。
実験は明日から始める。今日はここに泊めてやる。服も1着だけだがタダでやろう」
ラッキー!
宿と服、ゲットだぜ!
……
その日の俺の宿泊先は牢屋でした。
服? 勿論、囚人服だよ!




