とりあえず国のために戦う?らしい
きっかけは無いに等しいほどにそれはあっけなく始まった。
それは彼の心を蝕み、彼の体を壊していった。
「どこで間違えたんだろう?」
いいえ、いいえ。
貴方は間違ってなんかいなかった。
だってそれは突拍子もなく吹き上げる風のよう。
それは突然に訪れる奇跡のよう。
あぁ、かわいそう!
だから、彼に二度目の生を与えましょう!
彼が切に願った、もう一度の人生を!
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起きると、生温い水に浸っていた。
目の前には、整った顔の金髪の少女が立っている。
そして俺は、裸だった。
しかも、これは…
「ずいぶんと時間がかかったものね。ようやくお目覚めね、名を言いなさい」
少女が口を開く。
「おれは、俺は…」
「!!ちょっと待って頂戴。俺って、そのふざけた一人称は何かしら。」
戸惑ったように早口に質問を投げかける少女を尻目に、俺は自分のからだを確認する。
やっぱり、そうだよな…?
「俺、女?」
俺の胸はふっくらと控えめにではあるが膨らんでいた。
「私は、女をお願いしたはずよ。リズ?」
「まぁまぁ、いいではないか。従者として側につかせるには男のほうが都合もいいだろう。」
金髪の少女の後ろから小柄な白髪の少女が微笑を浮かべながら顔を出す。
「しかも男といっても、体は女という紛い物中の紛い物だ!それはそれで悲しむべきことなのだろうが…奴隷である今それすらも此奴には関係ないだろう?」
「どうだ、少年。もう眠いのではないか?起きたらまた話をしようではないか。」
あぁ、本当に残念だが、もう駄目みたいだ…。
ニヤニヤとしながらこちらへ近づいてくる白髪の少女を睨みながら俺は気を失った。