善人と悪人
「私はね皆に完璧人間とか聖人とか言われるけど全然そんなことないんだ」
今僕らは公園のベンチで横並びに座っている。人一人分のスペースを空けて。
彼女とは学校の食堂で隣の席になってからよく遭遇するのだ。そのたびに何となく会話してから別れるのが恒例となっている。特に仲がいいわけではないが気が合う友人というところだろうか。
「あーそうなんだ」
「なによその気のない返事は」
「まあ周りに比べたら君はそうなのかもしれないな」
正義が服を着たらこんな人になるだろうと彼女を見ていて僕はいつも思っていた。
「自分でも少し度が過ぎているとは思うのよ」
「ならやめたらいいんじゃない?」
「それができるならもうやめているわよ」
彼女は子供の頃は今のような正義マンではなく普通だったらしい。しかしちょっとした出来心でお菓子を万引きした。ばれなかったが後々それをとても後悔した。それからは正しい人間でいようと考えるようになり今に至るというわけだ。短くするとこんな感じのことを彼女は話した。
「なるほどねー」
「あの時のことがいつも頭をちらついて多くの人が見過ごしてもいいと考えるようなことでも無視できなくなってたわ」
「僕なんか友達をぶん殴って失明させたことがあるけれど今の話聞くまで忘れていたよ」
「……あなた意外に乱暴な子供だったのね」
「別に普通の子供だったよ」
「普通の悪ガキね」
少し元気になったようだ。
「ところで僕にそんな話してよかったの?もしかしたら聖人じゃなくて盗人って呼ばれることになるかもしれないよ」
「大丈夫よ。あなたに普段話をする友達なんていないの知っているんだから」
「なるほど」
「それに失明させるほど殴るような悪ガキの話なんて誰も聞かないわよ」
元気になったみたいだ。
「ちょっと肌寒くなってきたし、今日はこのあたりでお開きにしましょうか」
「そうだね」
「今日はありがとうね。気を遣ってくれたんでしょう?悪ガキさん」
「君の気持が少し軽くなったのなら友達殴ってよかったよ」
「よくないわよ」
馬鹿じゃないの?と彼女は楽しそうに言った。
かなり元気になったみたいだ。
「バイバイ、また学校で」
「じゃ」
こうして僕たちは帰路に着いた。




