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人は自分の持っていないものを欲しがる生き物だ。相手の持っているものを欲しがるし、その相手も何か自分には持っていないものを欲しがっているのかもしれない。

愛が欲しい人もいれば、それよりも地位や名誉を求める人もいる。人の欲求は当人が満たされていないために発生する。


今の生活に不満は無かった。けれどどこか満たされていない感覚だけがあった。クラスでは仲のいい友人もいるし、家族との仲も悪くない。集団の中に入れば自分が悩んでいたことも忘れて騒ぐくらいだ。それでも何か物足りなさを感じながら日々を過ごしていた。


そんな時ふと自分が普段関わらない人に興味を持った。自分と違う趣味を持つ人や考えの違う人と関わることで何かが変わると思ったのだろうか。きっと母親に「多くの人と関わることが人を豊かにする」とか言われたのが少し引っかかっていたのだろう。


「なあ、何を読んでいるんだ?」


俺はグループに属さずいつも本を読んでいる女子に話しかけた。


「大したものは読んでいないけれど、今は技術書をよんでいるわ」


女子はつまらなそうに答えた。

いつもの俺なら難しい本読んでるんだね、あははで会話を切り上げるところだがもう少し会話を続けることにする。


「へーどんな中身なの?」


女子は少し驚いた後に「プログラミング…」と答えた。

すぐにまた質問する。


「なんでまたそんなの読んでるの?」


女子は少しこちらを見つめて溜息をついた。俺を追っ払うのはあきらめたのだろう。


「何読んでるの?って聞かれて技術書って言っておけばすぐに会話が終わると思って読んでいたの。技術書の話で盛り上がる高校生なんていないじゃない?」


「確かにな、一理ある。けれどなんで会話をしたくないんだ?」


「あなたたちみたいに昨日のテレビや話題の映画なんかでテンションを上げて話をするのは疲れるの。私は基本的に静かに過ごしたいの」


「なるほど。つまりは俺みたいのとは話したくないということか」


「まあそういうことになるわね」


こんなことを言われたが俺は全然彼女に対して悪い感情を持っていなかった。クラスの連中は大抵相手の顔色を窺って素直な気持ちを言うやつはいないからいっそ清々しかった。


「でも社会に出ればいろんな人間がいる。そいつらの中にはあんたの苦手なタイプの人間もいるだろう。そいつらとトラブルにならないように今からいろんな人間と話したほうがいいと思うぞ」


「その時はその時よ。今はその時じゃないわ」


即答だった。


「どうやら俺はフラれたらしいな」


「そうね」


「また出直してくるよ」


「もうこなくていいわよ」


どうやらあまりいい印象は持たれていないみたいだ。

何か間違えてしまったのか、それとも彼女は誰に対してもこうなのかもしれない。まあ済んだことは仕方ない、また明日の俺に期待しよう。丁度チャイムが鳴ったので会話を切り上げる。

この会話が俺にプラスになったのかはわからないが当分は退屈しなくて済みそうだ。

次にどうやってアタックするか俺は早速考えていた。すでにさっきまで悩んでいたことなんて忘れていた。

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