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チートの家に引きこもる  作者: ニビル
第一章 家
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 異世界人であるエルフの女と会話が通じた。これが“家”の効果なのかは分からない。もしかしたら、エルフが魔法で、異世界言語が日本語に聞こえるようにしてくれたのかもしれない。

 青年自身、“家”についてまだ知らないことが多すぎる。

 

 こちらも名前は既に名乗り、地球という異世界から転移して、ここが何所なのか、何も分からないと正直にダリアに話した。自分の置かれた状況を説明出来たと思う。彼女は、青年の話をなぜか信じたようで、この世界の事を説明をしてくれた。それによると、ここは人間陣営と亜人陣営の間にある場所。誰の所有地でもない、緩衝地帯の森らしい。名前は特にない。昔はあったらしいが、緩衝地帯になってからは緩衝地帯の森と言えば通じるからだ。大きさは小国以上もあるらしい。結構……大きいな。歩いて脱出は難しい。魔法という摩訶不思議な力が存在する世界だとも聞いた。

 ここで彼女と出会えたのも奇跡といえなくもない。あの光を見なければ、一番奥地のここまで来ることは通常ありえないと教えてくれた。


 居住区を設けてはいけないという、緩衝地帯のルールも聞いた。


 「新野シンノはこれからどうなさるつもりですか……?」

 

 これから……って、ここから出てけということか?


 「僕はこの“家”から立ち去るつもりはありません。この“家”は僕の所有物です」

 「分かりました」

 「……僕とダリアさんは初対面です。今日会った見知らずの人間である僕の話を、全て信じてくれるのですか?」

 「はい、我々エルフ族は元来、嘘を見抜く事が出来る性質があります。それに、このような異質な建造物は見たことも、聞いたこともありません。人間の国でもおそらくないでしょう。いくら緩衝地帯といえども、ここまで大掛かりな建物を築くのであれば、数カ月は要するはずです。我々エルフ族や、獣人族が察知できないはずがありません。また、建物の外観から築数十年と思われます。それまで、強い魔物が生息する奥地で無事だとは考えずらいと――」

 

 彼女なりに色々考えてるみたいだ。エルフ族に嘘は通じないと興味深い話も聞けた。発言には気をつけようと、新野は心を引き締める。


 「魔物ですか。もしかして、そこに落ちてる……死んでいるヘビフクロウは魔物なのでしょうか?」

 「ヘビフクロウ……ふふっ。私たちはトゥティーと呼んでいる魔物ですね。森の奥地に棲息する魔物で、一度獲物を見つけたら、何度でも執念深く襲いかかってくる魔物です。市場に出回らなく、貴重でもあり、すごく珍味で美味しいんですよ!私も一度しか食べたことがないんです」

 

 ダリアは余程、気になるのか、ヘビフクロウ(トゥティー)をチラチラ見ている。


 「ヘビフクロウ(トゥティー)が必要ならあげますよ。お近づきの印だと思ってくれてかましません」

 「い、いいんですか!もう返せって言われても返しませんよ」


 ダリアは途端にニコニコと笑顔になる。

 珍味には興味はあるけど、新野はヘビとフクロウと蝙蝠の生き物を食べたいとは思わない。

 無料で提供なんて甘いことはない。こちらに少しは恩を感じてくれれば、何かで役につのではと下心が一応ある。

 袋にヘビフクロウを入れると彼女は新野に、


 「ところで、トゥティーは超音波を使った魔法を使いますが……」


 ……魔法?あの爪で黒板を引っかいたような不快な音か!これも“家”の防衛機能が守ってくれたんだろう。


 「魔法は問題ありませんでしたよ。ダリアさんは今晩はどうしますか?」

 「……今晩だけでも“家”に泊めて頂くことはできませんか?に報告しないといけないこともありますし……」

 「……」


 多分無理だと思うけど、試してみる価値はありそうだ。


 「まずは……に入ってもらえませんか?」

 「ありがとうございます」


 ダリアは、ブロック塀の途切れている入り口から敷地に入ろうとした。


 「えっ……?何、え。見えない壁があるみたいで入れないわ」


 彼女は透明の壁を興味深そうにペタペタ触っている。一通り調べて入れないと分かった。彼女は諦めたような表情を、新野に向ける。


 「やはり……入ることはできませんか……」

 

 エルフのダリアと新野を隔てる薄い透明の壁。

 近くにいて、遠い存在を感じた。

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