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チートの家に引きこもる  作者: ニビル
第三章 世界
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異界の森

 時の流れは早い。地球から異世界ミールの森の奥に新野が転移して早3カ月たつ。季節は8月。森の緑は青く濃くなり、昆虫や小鳥が最も活発に活動する時期になる。

 ヒト族。エルフ族。魔物勢が同時に“家”に来てから2カ月もたった。最高位の神から直接労働を免除され、チートの家を貰った。一生引きこもれる環境の“家”なので、誰にも邪魔をされず、干渉を受けることなく、その生涯を異世界ミールの森の中でひっそりと終えるつもりだった。だが、最高位の神に愛され、異世界人である新野真をこちらの住民は放っておいてはくれなかった。あの手、この手を使い、“異世界である地球から来訪した青年”を、チートの“家”から“外”へ引きだそうとする。


 ヒト族の中で大国ミマス帝国は、武力や加護チートの力を使い新野を“家”から“外”へ引きだそうとした。

 

 エルフ族は、エルフの中からさらに器量のよい者を集め、色気で新野を“家”から“外”へ引きだそうとした。


 魔物の代表魔王は、家族に向ける情で新野を“家”から“外”へ引きだそうとした。


 しかし、どんなに外野が騒ごうとも、新野が自分から“家”から“外”に出ることはなかった。



 新野が異世界に呼ばれた地は、緩衝地帯の森と呼ばれる小国ほどの大きさがある森の中央だった。

 半径300キロもある広大な森。そのほぼ全てが手つかずで原始の森が広がる。

 人間と亜人(エルフ・ドワーフ・獣人)は敵対していた。緩衝地帯の森は人間勢力と亜人勢力の中央に位置していた。そのため、緩衝地帯の森にはある決まり(ルール)があった。


 その一、自身を守る以外の鉄製の武器の所持の禁止。

 その二、居住区の制作の禁止。


 この決まりももはや形骸化しつつある。

 そしていつしか、緩衝地帯の森も『異界の森』と呼ばれるようになっていた。



 ◇



 異界の森の切り開かれた『空き地』に、ミマス帝国軍の『野営地』が並ぶ。また野営地の周りには『武装』した人族の兵士が何人もいた。

 ここは異世界人が『降臨』した地より西に3キロ進んだ場所。近くにヒトや物資を転送する『転移門』もある。

 異世界人の王が住まう地より半径3キロ以内は無断で侵入できない。

 無断で侵入した場合、厳重な処分が下る。またその決まりを破る者はいない。 


 「何で武装するんだろうな?この異界の森には野生の魔物はいないのにな……」

 「トールは馬鹿だなぁ。そんなことも分からねえのか。異界の森には俺たち『ヒト』以外に、『亜人』に『魔王』がいる。そいつらがいつ襲ってくるとは限らないからなあ。いざ襲われて、あの時武装していたら……なんてことになりかねないから。俺はそんなことで死にたくない」

 「でもさ、今は“協定”が結ばれて、“異界の森”では互いに協力しあっているんだろ?」

 「建前はな……」

  

 野営地の周囲を見回り中の2名の兵士は、呑気に仲間とおしゃべりをしていた。

  

 「それもそうか。今日の昼飯は何味にする?」

 「俺はとんこつ味だな」

 「お前それ好きだなー」

 「トールはどうせ塩味だろ?」

 「まあな」

 「何もない異界の森に配属された時はどうしようかと思ったが。異世界の食べ物を至急されるのはいい役得だよな」

 「お前は食べ物の話になると食いついてくるよな?」


 背の高い兵士が隣のやや肥満気味な兵士に意見を言う。

 約30人が異界の森にミマス帝国の兵士は滞在している。

 兵士の特権として、カップラーメンが7日2個、一人ずつ配給される。

 世間にも出回っているが、数が少数なのでなかなか手に入りにくい。


 「だから何だ。異世界の食べ物。世界は新たな味に飢えている!!とんこつ、醤油、みそ!」

 「お前は恐れ多くも最高位の神の加護を授かった者に敬意はないのか!あの“神の声”を夢で聞いてそれでも……。ん?おい、どうした」

 「……」

 「いや、食べ物のことにしか頭になかったけどよ……。よくよく考えたら怖くなってきた」

 「いまさら?」


 肥満気味の兵士の顔が青くなる。

 神が存在する異世界ミール。下々の民は、神々から加護を与えられた者は特別な存在として扱われ、畏敬の念を抱いている。


 「訳が分からないよな」

 「は?今度は何がだ?」

 

 肥満気味の兵士が懐からとんこつ味のカップ麺を出す。

 それを見ていた背の高い若者は顔をしかめる。

 

 「ゴミだよ。食べ終えたらどうしようと思っていた。だが、ゴミがまるでそこに初めからないように消える。不思議だ。異世界の食べ物はそういうもんなのか」

 「どうでもいいさ。俺たちにとっては便利なことに変わりない」

 「それもそうだな」

 

 新野の“家”から出た食べ物等は、持ち主が“ゴミ”だと認識すれば幻の様に消える。これには新野も驚いた。無限に食料は増やせる。しかし、でたゴミの処理に困っていた。どうしたものかと悩んでいた。何となく消えないかなと考えたら消えた。


 「あの“噂”を知っているか?」

 

 背の高い若い兵士が声を小さくして肥満気味な兵士に語りかける。


 「ン?」

 

 噂を知らない兵士は首を傾げる。


 「異世界から来た王が降臨した地として、緩衝地帯の森は『異界の森』と呼ばれるようになった。そして、異界の森は異世界からの物資が出回り易い。そこで、この『異界の森』に、新しく町を建築する計画があるらしい」

 「町!?」

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