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チートの家に引きこもる  作者: ニビル
第一章 家
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緩衝地帯

 パルティノア大陸は日本の四国のような形をした巨大な大陸。その周囲に無数の小さな島がある。

 パルティノア大陸には大まかに2つの勢力が存在する。

 東に各種の獣人族・エルフ族・ドワーフ族を中心とした亜人連合。

 西に人間至上主義を掲げる人間の同盟国。亜人を嫌悪して亜人絶滅を掲げている。


 人間と亜人はどちらも仲が悪い。しかし、四半世紀前(25年前)の魔物の大氾濫により、両国は疲弊してしまった。辛うじて、魔物の侵攻をくい止めたものの、元の状態に戻すのは数十年かかると試算された。そのため、人間同盟と亜人連合は、互いに不可侵条約を結び、経済活動だけの交流だけにして、一時的に争うのを止めた。

 魔物を殲滅することはパルティノア大陸の住民の義務でもある。この大氾濫と呼ばれる時期だけは両者協力して、魔物討伐に全力を挙げる。魔物の大氾濫はおよそ300年周期で起こる。東と西に両国対峙しているが、北のジグラス山脈より北は魔界と呼ばれている。そこから魔物が周期的に大量に発生して、山脈を超えて人間と亜人が暮らす領域に攻めてくる。

 大量発生させないように間引けばいいのでは、と昔の偉い人も考えた。だが……、ジグラス山脈は魔物の中で“最強”の龍種のテリトリーであるため近づけない。踏み込んだ国は一夜にして滅ぼされてしまった。龍種は、広大なジグラス山脈のテリトリー以外からほぼ移動しないので、人間と亜人達は放置しざる負えない状況。一部の人間や亜人には神に近い存在として崇められている。高い知能を備えて、なおかつ、全ての魔物を合わせた数より、龍種は強いとされている。



 人間同盟と亜人連合の丁度中間にある、小国程の森林地帯。

 ここは“緩衝地帯”とされて両者とも立ち入ることを禁止されている……。というのは建前である。だが、二つだけ守らなければいけない掟がある。最低限、自身を守る術の鉄製品以外の鉄装備の持ち込みの禁止。居住区の制作の禁止。一時的な天幕の設営すら不可という厳しい制約。


 その“緩衝地帯”に一人の美しい女性がいた。

 着こなした茶色のローブ姿の隙間から2つの尖った耳がある。白い肌に、緑色エメラルドの瞳。

 彼女はエルフ族の女性。“緩衝地帯”の森も、人間や亜人が放っておくと、魔物は発生するので定期的に駆除しなければならない。そこで人間側と、亜人側も暗黙の了解の元、魔物駆除をしている。

 エルフの女性が手にしている武器は短弓ショートボウ。黒い漆黒の色をして闇に溶け込む。

 身軽な足取りで森の中を自在に歩き回る。時には猿のように木に登り、時には地面を見つめて、時には魔法を使って魔物の存在を感じ取る。


 「はぁ……。定時巡回も終了おわりね。今日も魔物の発見はなしか。平和なのはいいけど、退屈しちゃうわ……。何か面白い事でも起こらないかな?」


 のほほんと、呑気なことを考えていると、天から神々しい光が降りてきた。ただ光の存在を認識するだけで心が震えあがる。圧倒的な存在感。人智を超えた存在を感じ取る。まさしく彼女は“神の存在”を感じ取った。自然に頭を光に向けて下げる。

 木々のざわめき、小鳥のさえずり。風の音。全てが無音となる。光が消えると、いつも通りの“緩衝地帯”の森に戻った。

 

 「……」

 

 心の震えが止まらない。アレはなんだったのか。

 一滴の涙が頬を流れ落ちていた。

 ハンカチで涙を綺麗にぬぐい取る。ただ一つだけ言えることがある……。

 

 「あそこ……光が降臨した場所に、今すぐに向かわなくては。人間族より速く。他の定期巡回している亜人達より速く。誰よりも早く。私なら行けるはず。森と共に生きるエルフ族の“ダリア”なら」


 自身に言い聞かせる。エルフ族にとって足場の悪い、深い森の中の移動は苦にならない。むしろ他の種族と比べると有利アドバンテージとなる。

 

 「2日以内に必ず、到達してみせる……!」


 ダリアの目に決意の光が宿った。


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