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チートの家に引きこもる  作者: ニビル
第二章 外
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天の月舟

 死者の魂と会話できるアスフォデルヌンスを支配するレア。新野と自称姉クローバーの会話をレアは黙って聞いていた。新野たちがアスフォデルヌンスの加護の力を使いたいということは察しているだろう。

 

 「勝手に話をまとめられたものだねぇ。何度でも言う。こちらの条件は一つ。新野が“外”に出ること。それ以外にはアスフォデルヌンスは貸し出さない」


 分かっていた。ただその願いは新野にとっては無理な条件だ。


 「ねえ、シンくん。“外”に出てくれない?おねえちゃんも直接シンくんに触れたいの。もっと近くで話したいの。だけど、この忌々しい“結界”は私にも壊せそうにない」


 クローバーも新野ぼくの事を“家”から“外”に出そうとしている。クローバーが、結界を叩くがビクともしない。魔王でさえ新野の“家”の結界を壊せない。物理的に結界を壊すのは不可能。


 「レアが死んだら“支配”の加護からアスフォデルヌンスは解放される……」

 

 ふと、新野は思っていたことを口にだしていた。


 「ほう、ボクを直接狙うのか?こちらには黒龍と不死の加護を持つ王女がいる」

 「ならこちらは魔王に悪魔(本当は魔物が変化しただけど……)、この最高位の神の加護を授かる僕がいることになる」

 「シンくん子供っぽい……」

 「……」


 誰の為に冥府の加護の力を使いたいと思っているんだとクローバ―に言いたかった。

 今何時だっけ?スマホで時間を確認した。もうこんな時間かよ。


 「せっかくの日曜日が……」

 

 無職になったので毎日が日曜日と言っても過言ではない。それでも貴重な日曜日に変わりない。

 今日の所は、魔物勢も人間達も帰ってもらいたい。

 自分が律儀に対応するから悪い。“家”に引きこもれば誰も新野を引きだすことはできないのだ。


 「あ、そろそろ昼寝の時間なので……。お二方、この話はなかったことに」


 ――なんてことはできそうにない。


 今度こそ、というタイミングで地面に影ができる。空を見上げて驚愕する。


 「UFO?」


 外にある空き地の上空に、未確認飛行物体の所謂UFOが滞空していた。丸い円形の形。銀色の輝きは太陽の光を反射している。大きさは10mはあると思う。音もなく、そのUFOが上空100mという至近距離に存在していた。

 新野は混乱している。こちらの世界は魔法があるため、科学が発達していないのでは。しかしだ。目の前にUFOがある。どういうことだ?これも魔法なのか。もはや何が何だか理解できない。

 

 「うそ……。これが……」

 「何だ!」


 どういうわけか、周囲も新野と同様に驚いていた。

 この反応からUFOの存在は一般的でないと確認できた。

 やがて、UFOは地面に着陸する。銀色の継ぎ目も見えないUFOの表面がドアのような形に開く。

 中から人が出てきた。

 彼らはエルフだった。


 「あなたは……」


 先頭にたつ女性のエルフ。小麦色の長い髪。緑の瞳はこちらの目線を離さない力がある。

 銀細工の神秘的なアミュレットが首からかけられている。中央に濃い赤色の綺麗な石があった。


 「なんとか、間に合いました。まだ人族は結界を破れないようですね。それに悪魔……!?獣人まで……。どういうこと!?ゴホン、ま、またお会いできましたね。新野。来ちゃいました……」


 異世界に来て最初に接触したエルフ族のダリアだった。

 他にも美しいエルフの女性が4名と美形な男性エルフが5名。計10名もUFOの中から出てきた。


 「ダリア、お久しぶりです。その節はどうも。それより、この乗り物は何ですか?」

 「やはり、驚きますか。これは遥か“古代”に地上に来訪した“神”が乗っていた乗り物だと伝わっています。現存する最後の“天の月舟”。触ることは加護持ちにしか許されないのですが、緊急事態として私が操作してきました」


 神ねぇ……。新野には、現代地球より遥かに進んだ文明レベルの異星人の乗り物にしか見えない。何千年、何万年経って稼働する乗り物。この地にも地球と同じように、なんらかの異星人の痕跡があるのか。

 それにしてもエルフたちは全員美人に美形ぞろい。絹のような白いゆったりとしたローブを男女着用していた。


 「それで、今回僕の“家”に来たのはどういったご用件でしょうか?」

 「単刀直入に言います。人間側ではなく、私たちエルフ族……亜人側についていただけませんか?」


 人間側と亜人側の確執があることは聞いていた。

 

 「僕にどんなメリットがありますか?」

 「ここにいる私たちエルフを好きにしてください。もちろん私もです」

 

 色気作戦か。新野も男だ。何より美人のエルフを……。しかし、ひとつだけ分からないことがある。


 「ところで、男性のエルフもいるみたいですが。彼らは?」

 「いえ、新野が特殊な趣味を持つ可能性も考慮して」

 「その気はありません。というよりみなさんに聞いてもらいたい。僕は“家”から“外”に出るつもりはありません。僕が人間だからといって人間側に協力するとは限りません。亜人もです。できればよき隣人として共に過ごしたいです。まずはここの森では種族関係なく争うのは止めてもらいませんか?僕は静かに過ごしたいのです」


 「「「駄目 (だ)(です)」」」

 

 人間・魔物・亜人と三者争っていた者たちの意見が一つになった。

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