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チートの家に引きこもる  作者: ニビル
第一章 家
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もうひとりの自分

 カップ麺の評価はおおむね好評だった。


 「美味しかったですー。お湯を入れて、3分待つだけで食べられるなんて、夢のような食べ物です。これなら外で活動する私たちにピッタりの食事だと思います。他にも味があるのですよね?もっと食べてみたいです」

 「それはよかった。カレー味に、みそ味、とんこつ……また持ってきます。水は魔法で補給できるのは確認できました。しかし、食べ物は足りますか?カップ麺ならいくらでもあるので……」

 「現地調達もできますし、長めに森に滞在しようと計画を立てていたので問題ありませんよー。“家”に、食材は潤沢にあるのですか……そう……」


 ダリアは新野の後ろに悠然と佇む“家”を観察するように見る。

 こちらの情報をうかつに流したのはまずかった……か?大きくもなく、小さくもない、2階建ての一軒家。庭には車庫がある。どこかに食料が備蓄されてると推測されたのか。正解は“家”の効果で、使用しても補充されるだけ。


 「これからどうしますか?僕は甘い食べ物を食べて、ゆったりとした午後を楽しみたいので、そろそろ退散します」

 「甘い物があるんですか!ぜひください」

 「……わかりました。その代わりに取引してください。もう一度魔法を見せて下さい。できれば、先ほど見せていただいたのと違う魔法がいいです。欲を言えば……派手な魔法を!」

 「約束を守ってくださいね」


 ダリアが二言、呪文を唱え、手を一定の法則で宙に動かす。

 10メートル離れた距離に小さな風の渦が出来る。ゴォー、ゴオーーと、突風が吹いた時のような音がする。だんだん渦は大きくなり、小さな竜巻が発生する。

 これが竜巻、これが魔法。

 次第に竜巻は消えて元の景色に戻った。


 「すごいと思います。今の竜巻の魔法は、誰でも使えるものなのでしょうか?」

 「この程度、エルフが訓練すれば誰でも使えるようになりますね」

 「(この程度ね……思ったより魔法の威力が高い。魔法の存在を甘くみると痛い目にあうかもしれない。魔法についてあまりに無知すぎる)……そうですか。実演ありがとうございました。ちなみに、僕も今の魔法を使えるようになると思いますか?」

 「無理です」

 「……理由を聞いていいですか?」

 

 ダリアの説明によると、せっかく魔法が存在する異世界にいるのに、新野は通常・・の魔法は使えない。素質が全くないらしい。魔法が使えなくてもどうでもいいや……僕だけの“家”がある。働きたくない新野からすれば夢のような“家”。衣食住全て完備され、インターネットも使える。死ぬまで“家”から出たくない。


 約束を果たすため、冷凍庫からカップ型のバニラアイスを取り出す。日本だと冬、こちらは初夏。アイスを食べておかしくない季節。

 アイスとスプーンを渡したら喜んで食べてくれた。

 




 リビングで自分・・の魔法を試す。

 

 「僕に楽をさせてくれ存在よ、頼む出てくれ」

 

 眩しい光が部屋の中心から溢れる。目が開けていられなくなり、瞼を閉じてしまう。たった数秒目を離した瞬間に“それ”はいた。


 「君……が僕を補佐するためだけに生みだされたものか?」

 「ハイ」

 

 中性的な機械式の音声。声の主は人型ロボット。成人男性くらいの背丈。むき出しの金属製の体。むき出しの赤い2つの眼球はギョロっと動き、新野を見る。見た目は、人体模型の骨が金属製のロボット。

  

 「名前がまだだったな。……レイだ。今日からレイと名乗るがよい」

 「アリガトウゴザイマス。ワタシ、レイ、レイ……レイ」


 何度も自分の名前を繰り返す。


 「僕の名前は新野真しんのまこと。改めてよろしく。で、レイは何が出来るのか確認したいから教えてくれ」

 「カジゼンパン……」

 「おおー、家事全般できるとは素晴らしい。他には?」

 「ジコボウエイキノウ。(“壁”のようなものか。これも実際試してみたい)ゴシュジンサマガ オノゾミナラ ヨルノオセワモ」

 「……は?待て、まて。そんな事はしなくていいから。と、いうよりレイの性別は女性なの?」

 「セイベツ ナイデス」

 「レイには料理を中心に仕事を頼みたい。あと、しゃべり方が片言だけど何とかならないのか?」

 「ガクシュウ シテイキマス 二ホンゴ ムズカシイ ジカン カカリマス」

 「分かった。レイは何のエネルギーで動くの?」

 「セナカ コード デンキ」


 レイの背中に収容ケースがあり、中に1.5メートルのコードがあった。これをコンセントに差し込んで充電するようだ。

 

 「半日も充電して、たったの半日しか動けないのか?」

 

 片言の説明を聞く。

 新野の性格や気質を受け継いでいるので、怠け癖があると申告された。自分のせいなのか?本来なら充電すら必要なく、永遠に動ける。


 「まるで、もうひとりの自分みたいだ」


 機械の体。ロボットのレイは主人である新野を放って、寝ると言い、目を閉じて活動を停止させた。

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