ささくれて
庭木の手入れをしていて、手のひらに深く木の枝を刺してしまう。
木のささくれに気づかずに握り、思い切り手を滑らせてしまったのだ。
表面に見えた枝は引き抜けたが皮膚の中に小さいかけらが残ってしまった。
ちくちくした感覚があるが『痛い』というほどではない。
親指と人差し指のツメでしぼりだそうとしたが、どうにもうまくいかない。
深く皮膚に入り込んでしまったため取り出すこともできないだろう。
あいにく毛抜きのようなものも手元になかった。
いつまでも構っているわけにもいかず、我慢して作業を再開した。
――終わったら医者にでも行こう。
そう考えてはいたが、放置しているうちに痛みがなくなり、作業が終わるころにはすっかり存在を忘れていた。
次の日の朝、指の先から木のかけららしきものが出てきた。
自然と出てきてくれたようだ。
丁度いまは近くに毛抜きがあった。
かけらの先っぽを毛抜きではさみ引っ張る。
意外と固い。
今度は、力をこめて一気に引っ張る。
瞬間、腕から肩の骨をすべて引きずり出されるような感覚に襲われる。
思わず毛抜きを投げ出してしまう。
恐怖でそれ以上触れることが出来なくなった。
だからといって、指先から木を出したままにしておくわけにもいかない。
応急処置として、飛び出ている部分をはさみで切り落とした。
内側に異物感があるが、軽く指を動かすが問題はなさそうだ。
絆創膏を巻いてその日は済ませた。
次の日の朝、指先の絆創膏を貫いて木の枝が飛び出ていた。
扇のような形をした小さい葉っぱが一枚、枝の先端に芽吹いている。
葉を引っ張るが、取れそうにない。
枝ごと引っ張るが、抜けそうにない。
今度こそ医者に行かなければと思う反面、
――このままにしておいたらどうなるのだろう。
危うい好奇心が生まれ、好奇心に負けて、枝葉をそのままにした。
次の日の朝、葉は枯れ果て枝はやせ細っていた。
枝を引っ張ると、するりと抜け落ちてしまう。
指には細く深い穴が開いていた。
のぞき込むとなにかが動いているのが見える。
耳を近づけると、カリコリと固いものがぶつかり合う音がする。
気にせず、軽くもみほぐすだけでキレイに穴は埋まってしまった。




