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ハッピーボトル ~不運な男が世界を救う~  作者: 縞虎
海丘の街(双実桜)編
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深見深作


「俺が……お前らの仲間に?」


「そうだ。俺達は星降を目指して旅をしている。そうなりゃお前の妹に関する手がかりもきっと手に入るはずだ」


 一行は星降へ向けて、桜は妹を探して世界を回っている

 それに仲間が増えるのは心強いし互いにとって得になることは多い


 色々と考えて幸助は桜を誘ったのだ

 これなら桜も快く了承してくれるだろうと誰もがそう思っていた


「無理だな」


「無理か! よっしゃそうと決まればーーーーってはあぁぁぁぁぁぁ!?」


 返ってきたのは予想もしなかった返事。しかも考える素振りすら見せずに即答された

 当然、幸助は困惑が隠せない程に焦る


「なっ、なんでだよ! 悪くねぇ話じゃねぇのか!?」


「もちろん悪くねえ、というかいい話だ。けどさっきも言った通り紅葉の件に関しては俺の力でやらなきゃならねえんだ。誰かに頼るなんて情けねえこと出来っかよ」


 腕を組みながら堂々と語る桜はなんとも頑固な男だと思った

 それもさっき彼が言ってた『兄としてのプライド』というやつなのだろう


 そこまで意地を張る必要があるのか疑問ではあるがそこまで言われては無理に誘うことも出来ず一行はそれ以上何も言えなかった


「誘ってくれてありがとな。そんじゃまた、どこかで会おうぜ」


 固まる一行に一言礼を言うと桜は席を立ち勝手に全員の会計を済ませて早々に店から出て行ってしまった


「ど……どうすっか?」


「どうするも何もあいつがそう言うならどうしようもないわ。私達も旅を続けましょう」


 結局、桜が異端児なのか確証を掴むことは出来なかった

 しかし話してみて悪いヤツではないことは分かった


 今はダメでも次会ったときには違う答えをくれるかもしれない。そんな希望を持って一行も旅を再開することにした


「うおっ! あぶねっ」


「これは失礼しました。では私は急いでいるのでこれで」


 店の入口で幸助は背後より駆けて来た男とぶつかりそうになり慌てて避けた。男は何やら忙しそうに頭を下げるとすぐに向きを変えて走って店を出ていってしまった


「なんか感じ悪いね。あっちからぶつかりそうになったのに軽く頭下げただけでそそくさと出て行っちゃうなんて」


「別に気にしてねぇよ。一応謝ってたしな」


 ちょっとスッキリしない気はしたが向こうもわざとではないし謝罪もあった


 気を取り直して一行は旅を再開した 





「明日もここでイリュージョンやるつもりだったんだけどな。あいつら見てたらなんかウズウズしてきちまった。俺も次へ行くとするかな」


 一行より先に店を出た桜は海丘かいきゅうの入口まで来ていた。この街でイリュージョンを始めてそろそろ2週間が経つ


 人の多いこの街ならば何かいい話でも舞い込んで来るだろうと思っていたが期待外れだったみたいだ


 そんなことを考えていたところでふと、ある言葉が口を突いて出てきた


「……らしくねえな。チャンスを待ってるなんて」


 いつから自分は他人からの恵みを期待するような男に成り下がったのだろう


 ここで1度、己の目的を再確認する。自分は何故旅をしているのか。そのゴール地点はどこになるのか


 答えは妹である紅葉に出会う為


「ったく、何が『兄としてのプライド』だよ。こんなの他力本願もいいとこじゃねえか」


 各地でイリュージョンを披露していれば噂が広がっていつか有名になれる。運が良ければ誰か影響力のある人が声を掛けてくれる


 そうすれば紅葉に自分の存在を知らせることが出来ると思っていた


 しかしそれは他人に頼っているのと同じ。桜は自分の中にいつの間にか芽生えていた他人への期待を恥じた


「チャンスは自分の力で掴むもんだろうが」


 改めて固く決意した。それに幸助達から旅の話を聞いて刺激を受けた桜はいてもたってもいられなくなったようで旅の再開を決めた


 しかしそんな桜に声を掛ける者が現れた


「そこのお兄さん。ちょっとよろしいかな?」


「ん? 私のことですか?」


 桜が声のする方へ振り返るとそこには1人の男が立っていた


(この男いつの間に……。人が近づいてきたら分かると思ったんだけどな)


 きっと人が近づいて来ることも気づかない程深く考え込んでしまっていたのだろう。気を取り直して桜は話しかけてきた男に目をやった


 黒いスーツに身を包み黒いハットを深く被っている。更にサングラスを掛けており顔はよく分からないがその口元が大きく釣り上がっていることだけは分かる


「そうですあなたです。失礼だとは思いましたが先程、喫茶店であなたの話を聞いてしまいましてね。何かお力になれないかと思ったのです」


 他人の話を盗み聞きするとはなんとも失礼な男だとは思ったがその前にあれだけ大声で話していたのだ

 注目するのも無理はないし自分が逆の立場だったら同じことになっただろう


「そうですか。ところであなたはいったいどちら様で?」


「これは失礼。遅れましたが私、こういう者です」


 そう言って男は懐から名刺を1枚取り出して桜に差し出す


「……探偵、深見深作ふかみしんさく?」


 桜は名刺に書いてあることをそのまま口に出す。探偵なんかがいったい何の用で何の力になれるというのか


 少しばかり疑問に思ったが答えはすぐに出た。そしてそれは桜が尋ねなくとも向こうの口から出てくる


「あなた、妹さんをお探しのようですね。名刺を見ていただければわかる通り、私は探偵でしてこれでも人探しは得意なんですよ。どうです? 私と組む気はありませんか?」


 やはりそういうことだったかと言いたくなるくらいの予想通り過ぎる答え


 この深見深作という男もさっきの幸助達と同様に親切心からこうやって声を掛けてくれたのだとは思うが桜がそれを受け入れることはない


 ましてや先程幸助の誘いを断り、今まさに自分のすべきことを再確認した桜にとって返す言葉は決まっていた


「気持ちは嬉しいですがすいません。これは私1人の力でやりたいので……」


 答えを聞いた深見は唇を尖らせ大きく息を吐く


「そうですか……いやー残念だ」


「せっかく声を掛けてくれたのにすいませんね」


 頭を下げて桜は立ち去ろうとする。そして深見に背を向けた時だった

 振り返った先にもう1人、見知らぬ男がいたのだ


「だっ、誰だおまーーがあっ!?」


 いつの間に背後に立っていたのか、こいつは誰なのか

 そんなことを考える暇もなく桜の体に電流が走り動けなくなってしまった


 立っていられなくなった桜はうつ伏せになるように倒れ薄れゆく意識の中で深見の声を聞いた


「あっ、勘違いしないでくださいね。私が残念だと言ったのはーー」


「ーー手荒な方法であなたを連れて行かなければならなくなったからですよ」


 深見の言葉の意味がわからぬまま桜の意識は途切れてしまった


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