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ハッピーボトル ~不運な男が世界を救う~  作者: 縞虎
海丘の街(双実桜)編
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双実桜


 星降守護部隊の幹部である早乙女乙姫、そして宍戸玲王を倒した一行は次なる街である海丘かいきゅうに訪れていた


「スゲェ! 街がキラキラしてて超うるせぇぞ!」


「海丘は娯楽の街として有名だからね。全国各地から人が集まってくるんだよ」


 きらびやかな街並みに目を輝かせる幸助はあっちにこっちに忙しなく目移りしている


 以前、修行の最中に羽壱はいちを訪れた時も夜とは思えない賑やかさと街のキラメキに興奮した一行だったが海丘はまた違った方向で輝いた街だった


 クロが言った通り海丘というのは娯楽の街でテーマパークのように子供が楽しめる施設もあれば賭博施設のように大人が楽しめる施設もある


 浮かれてこの街に入ったら最後、金を全て失い死にかけた顔で帰るという話もチラホラ聞く


 そんな素晴らしくも恐ろしい建物が並ぶ中に小さいながらも負けじと一際目立つものがあった


「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 双実桜ふたみさくらのイリュージョンが始まりますよぉ!」


 『もの』と言うよりは『人』と表すのが正しかった。街の入口に出来た人混みとその奥から聞こえる元気な声が気になった一行は様子を見に行く


 そこには1人の男がいて何かを始めようとしているところだった


「イリュージョン……ってことは手品かしら?」


「でも手品にしては随分身軽だね。こういう時はもっと道具とか用意してると思うんだけど」


「身軽ってか手ぶらじゃねぇか」


「何も無いと見せかけて何かあるのが手品ってものさ。きっと服の下に何か仕込んでるんだよ」


 これからどんな手品を見せてくれるのか興味を持った一行は双実桜と名乗る男のイリュージョンを少しだけ見ていくことにした


 着飾らないそのラフな服装、まさに種も仕掛けもない彼は一体何を見せてくれるのかと自然に期待が高まる


 一行が楽しみにしていると双実桜のイリュージョンはすぐに始まった


「まずは自己紹介がてら簡単なものをお見せしましょう。なんの変哲もない私の両手、種も仕掛けもございません」


 そう言いながら桜は両手を開いて長々と観客に見せつける


 おどけたような語り口調だが見るものは皆、彼が繰り広げる世界に引き込まれ興味津々だ


「そこからなんとぉ……火の玉が出現しましたぁ!」


 その瞬間、何も無かったはずの桜の両手には拳程度の小さな火の玉が現れた


「そして今度はこの火の玉がぁ……?」


 桜がギュッと両手を握ると掌に包まれてしまった火の玉は姿を消す


 火の玉だけでも十分に驚くことだがこれからまだ何かが起こると思うと観客は思わず唾を飲む


「なんと! 美しい桜の花びらへ姿を変えました! みなさーん! 今は秋ですよー! 季節外れとか言わないでくださいねー!」


 桜の言葉で観客から笑い声や歓声や拍手が巻き起こる

 桜の手からヒラヒラと舞い落ちる桜の花びらは暖かい春を彷彿ほうふつさせるほど美しかった


「というわけで私、双実桜と申しまーす! イリュージョンはまだ始まったばかりなのでどうぞ楽しんで行ってくださいねー!」


 完全に観客の心を掴んだ桜のイリュージョンは更に続いた

 掌から水を噴射したり電気で空中に文字を書いたりと全てが新鮮だった桜の世界観に自然と一行も引き込まれていった




「というわけで双実桜のイリュージョンでしたー! 皆さんどうもありがとうございましたー! よろしければお気持ちだけでもお願い致しまーす!」


 まるで夢でも見ているのかと疑う桜のイリュージョンは終わり、最後に惜しみない拍手が彼に送られると同時に彼がどこからか取り出したカゴにお金を入れていく


 湧き上がる拍手に桜は何度も頭を下げて去りゆく観客を最後まで見送った


「いやー! 凄かったねー!」


「ホントホント! あれ手品じゃなくて魔法なんじゃないかしら!」


 結局最後まで見てしまった一行だったが素晴らしいものが見られたと満足そうな顔をしている


 しかし幸助とクロの顔はそうでもなかった。むしろ優輝や永愛と違って険しい顔だ


「2人ともそんな怖い顔してどうしたの? 楽しくなかった?」


「いや、そうじゃねぇんだけどな……」


「何よ? もったいぶってないで言いなさいよ」


 言葉を催促する永愛に幸助が口を開こうとしたがそれよりも先にクロが話し出した


「火の玉、水、電気。どれも不思議だったよね。本当に魔法なんじゃないかって疑うくらいの『不思議な力』……」


 クロがそこまで言ったところで優輝と永愛も1つの単語が頭をよぎった


 不思議な力という言葉は最近よく聞くようになった言葉だ。火や電気は見たことないが水、土など思い返せば心当たりはいくらでもある


「まさか……あいつが『異端児いたんじ』だって言うの……?」


 異端児。それは今一行を騒がせているホットな話題だ


 普通の人間には有り得ないような不思議な力を使い関係のない一般人を苦しめている


 何度か戦闘を行ったことは一行の記憶に新しい


 星降守護部隊である早乙女乙姫の話によれば最近は大きな話題も無くおとなしかったらしいがまさかこんな所で手品を披露していたとは夢にも思わなかった


「まだ確定した訳ではないけどね。けど、このまま野放しにしておくのも気が引けると思わないかい?」


「……だよね。表向きじゃあんな楽しそうなことしておいて裏ではとんでもないことしてるかもしれない……」


「そうと決まれば奴に話を聞く必要があるな」


 幸助の提案に意義を唱える者はいなかった。桜はまだ入口前にいるかもしれない


 逃げられない為にも一行は足早にさっきの場所へと戻った


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