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決着のその先に


 最後の攻撃を行うために走る2人の心にある思いは同じだった


((絶対に勝つ!!))


 優輝はハンマーを、乙姫は拳を握り締め目の前まで迫った相手に力一杯振るう


 優輝は下から持ち上げるように、乙姫は上から叩き潰すように振るう


 コンマ数秒の差だった


 先に攻撃を当てたのは乙姫


 優輝には持ち堪える力など残っておらずハンマーを手放してしまいそのまま吹き飛ばされた


 その瞬間、乙姫は勝利を確信した


「よりによってあの時と同じトドメの刺し方なんてね……ちょっぴりヒヤッとしたわ。でも、あたしの勝ちね」


 倒れて動かなくなった優輝に向かって賞賛を混じえつつ勝利宣言をする


 しかし乙姫は気づいていなかった


 優輝の攻撃がまだ終わっていないことを


 豪快に空を切る音、そして徐々に自分を覆っていく影。気づいた時にはもう遅かった


「何? この音は。そしてなんだか暗くーーーーなっ!?」


 音のする方ーーーーそれは上空。気になった乙姫が空を見上げた時

 自分の視界を埋め尽くす程大きくなったハンマーが降ってきていた


 そしてそのまま、避けることも出来ないまま、巨大なハンマーは乙姫を押し潰す


 響き渡る轟音、巻き起こる砂煙、振動は辺り一帯を支配した


「……決着がついたのか?」


「2人とも動かないってことは……引き分けかしら?」


「いや、ちょっと待って」


 戦いが終わったのだと判断した幸助と永愛は優輝の元へ駆け寄ろうとするがクロはそれを止めた


「あれを見てごらん?」


 クロが指さした先に幸助と永愛は目を向ける。その先には足を震わせながらも立ち上がる優輝の姿があったのだ


 ゆっくりながらも確実に1歩1歩踏み出し進む先にはハンマーと乙姫がいる


 かなりの時間を掛けてそこへ辿り着くと優輝はハンマーに触れて縮ませるとペンダントにしまった


 ハンマーを退かした後に残っていたのは仰向けになったまま動かない乙姫


 しかし気を失っている訳ではなさそうだ。晴れ渡る空に流れていく雲を無言で見つめている


「あたしはもう1歩も動けないんだけど……どうして優輝ちゃんは立っていられるのかしら? あと1発で倒せると思ってたんだけどねぇ……」


「……さぁね。正直僕自身もなんでなのかわかんないや」


 互いに喋るのもやっと、といった様子だが不思議と心地よい笑みが零れてくる


 それは互いに認めあった相手との真剣勝負の結果なのだろう


「フフッ。最後の最後で気持ちが負けちゃったのかしらねぇ。悔しいったらないわ」


「でも乙姫がああやって言ってくれなかったら僕が負けてたよ。こう言っていいのか分からないけどとりあえず言わせてもらうね」


 優輝の足は限界を迎えその場に座り込む。そして動かない乙姫の手を強く握るとこう言った


「ありがとう」


 優輝から偽りのない言葉と笑顔を受けて乙姫は微笑む


「次は負けないわよ」


「次だって僕が勝つよ」


 固い握手を交わし、またいつか訪れるであろう好敵手ライバルとの再戦を誓った


「でも最後の攻撃。本当に殺す気だったのね。あたしじゃなきゃ死んでたわよ?」


「乙姫がそうしろって言ったんじゃないか!?」


「…………ふふっ」


「…………あははっ」


 笑い合う2人の元へ幸助達は駆け寄っていく。その数歩後ろにはいつの間にか目を覚ましていた玲王の姿もあった


「スゲェじゃねぇか優輝! なんていうかこう……熱くなる勝負だったぜ!」


「だから言ったじゃない。優輝が勝つって」


「痛たたた! あんまり強く叩かないでよ!」


 仲間の勝利に喜ぶ姿を見て敗北した乙姫と玲王は何を思うだろうか

 悔しいという気持ちが1番だろう。しかし相手を妬んだり、恨んだりする気持ちは一切無かった


 負けたというのに清々しいと思うのは可笑しなことだと思うだろうか


 否、それだけ自分にとって良い勝負だったというだけのこと


「まさか星降守護部隊の幹部である俺たちがここまでやられるなんて思わなかったッスね〜」


「世界にはまだまだ強い人がいるってことよ。あたし達も怠けていらんないわ」


「うおお……なんだか燃えてきたッス! おい! 不破幸助!」


 目を覚ましたばかりだが玲王は既に調子を取り戻し、指差しながら大声で幸助の名を呼ぶ


「なんだよ? もう1回闘るか?」


「それはまた今度ッス! だからその時まで誰にも負けんじゃねえッスよ!」


「ハッ! 望むとこだ!」


 玲王から大胆な宣戦布告を受けて幸助は笑う。今までの幸助達はいつだって挑戦する側の立場にあった


 それがいつの間にか挑戦を受ける側になっていた

 それは彼らの成長、強くなったことを意味していたのだ


「けどあたし達を倒したくらいでいい気にならないことね。これからあなた達は狙われる身になるんだから」


「どういうこと?」


 乙姫の言葉に優輝は首を傾げる


「さっきも言ったッスけど俺がここに来たのはあんたらを倒す為ッス。それを退しりぞけけちゃったってことはーーーー」


「また次の追手が来るってことね」


 納得した様子で永愛はポンと手を叩く


「その通りッス。しかも乙姫姉さんの序列は9。俺は11。幹部の中じゃ下の方ッス」


「つまりこれからはもっと強い人が来る。幸助ちゃんは大丈夫そうだけどあたし相手にいっぱいいっぱいだった優輝ちゃんはどうかしらねぇ……?」


 心配ーーと言うよりは挑発の意がこもった乙姫の発言に優輝はムッとした顔で言い返す


「僕だって大丈夫だよ! これからもっと強くなってみせるからね!」


 優輝の言葉を聞いた乙姫は微笑む。まるでその言葉が返ってくるのを分かっていたかのようだった


「なら安心ね。じゃああたし達は帰るとしましょうか、玲王ちゃん」


「そ、そッスね……。あー、部隊長になんて言われるか……」


 『帰る』という言葉を聞いた瞬間に玲王の顔が曇り肩を落とす

 星降に帰った彼らがまず行うのは部隊長への報告


 任務を受けた玲王はもちろん、偶然居合わせた乙姫もいながら負けたと知ればどれほどの雷が落ちてくるか想像もつかない


 しかしそれを黙っていようものならもっと恐ろしい目に会うことは明白だ


 嫌々ながらも彼らは星降へと帰って行った


 さっきまで騒がしかったこの場所も静かになったものだ。残された一行の頭の中には乙姫の言葉が残っていた


『これからはもっと強い人が来る』


 まだ見ぬ星降守護部隊の強敵達、そしてその中には佐渡明日次もいる

 向かい合う時はいつになるだろうか。1ヵ月? 1週間? もしかしたら明日とは言わずこの後すぐにくるかもしれない


 晴れて狙われの身となった一行はそれでも旅を続けることを止めない


「向かって来るってんなら全員ぶっ飛ばして進むだけだ!」


 拳を突き上げた幸助に賛同するように一行の旅は再び幕を開けた


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