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最後に見たのはいつだったか


 突然現れ決闘を申し込まれた一行だったが1戦目は幸助の圧勝により幕を閉じた


 仲間がやられたことにより怒りが混じった顔で乙姫はこちらを睨んでいる


「悪ぃな。ちょっとやり過ぎちまったか?」


 肩に担いだ玲王を渡すと乙姫は優しく抱きかかえ地面へと寝かせた

 玲王が目を覚ます様子はまだない


 幸助の全力をモロに受けたのだから当たり前だろう


「強い相手と戦いたがってたんだから玲王そのこも本望でしょう。けどあなたの戦いを見てたらあたしもなんだかヤル気出てきちゃったわ」


「出来れば俺もお前と戦いたいんだけどな。ほら、先客が待ってるぜ」


 幸助が自分の後ろを指さすとその先には優輝が立っていた

 既に武器を構えて乙姫と戦うのを心待ちにしている


「……そうね。じゃあ優輝ちゃんを倒してから幸助ちゃんと戦うことにするわ」


「望むところだ。まぁお前が優輝に勝てたらの話だけどな」


 幸助と乙姫は互いに視線を飛ばしその間には火花が散っている

 しかし今の乙姫の相手は幸助ではなく優輝だ


 勝利宣言をした後、乙姫は優輝の元へと向かって行った


「お待たせ。じゃあやりましょうか」


 乙姫が構えた剣は先ほどの玲王と同じように光に包まれる

 そして優輝にも見覚えのある鞭へと姿を変えた


「良かった。本気でやってくれるみたいだね」


「さっきまでは本当にそんなつもり無かったわよ? でもせっかく貰えたチャンスですもの。無駄にするつもりは更々ないわ」


「そう来なくっちゃ」


 互いに因縁のある相手が目の前にいてこれから戦うことが出来る

 2人とも高ぶる鼓動を抑えることなど出来なかった


 その様子を離れた位置で見守っている3人も固唾を飲む


「幸助はこの戦い、どうなると思う?」


 クロが幸助に尋ねると幸助は少し考える素振りを見せた後で答えた


「2人とも俺と違ってリーチがあるからな。それでも攻撃範囲で言えば優輝の方が上だ。つまりーーーー」


 幸助が話している最中だったが優輝と乙姫は動き出した


 距離を詰めようとする乙姫に対して優輝はハンマーを伸ばして掴まり大きく後退する


「早乙女は如何に自分の間合いに持ち込めるか。そんで優輝がどれだけその外側から殴れるかってとこだろ」


 立ち上がりは幸助の予想通り。迫る乙姫と離れる優輝という追いかけっこのような展開で始まった


 乙姫が走る速度より優輝のハンマーが伸びる速度の方が速い

 あっという間に距離を離した優輝がハンマーを振って先手を打つ


「確かに勇泉ゆうせんで戦った時とは違うみたいね。でも甘いわよ!」


 ハンマーを避けつつも優輝へと向かう足は止まらない。詰められた間合いを再び離そうとする優輝だったがそこは既に乙姫の攻撃範囲の中だ


 乙姫の振るった鞭は優輝の腹へと突き刺さる


「うあぁっ!」


「まだまだ止まらないわよぉ!」


 吹き飛ばされた優輝もすぐに体勢を立て直し今度は向かってくる乙姫を迎撃しようとハンマーを伸ばす


 しかしその軌道から逸れた乙姫は次に鞭をハンマーへと結び付けた

 そのまま力いっぱい鞭を引っ張ると優輝の体は簡単に浮き上がり2人の距離を縮める


「そぉれっ!」


 またしても乙姫の重く鋭い一撃が優輝の体を捉えた

 今度は体勢を立て直せずに地面を転がる


「大層な口を叩いた割に大したことないわねぇ〜。これじゃああの時と何も変わらないわよ?」


 乙姫の攻撃は止まることなく襲いかかり優輝はそれをハンマーで防ぐのが精一杯に見えた


「おいおい。なんかヤバそうだぞ?」


 今まで数々の戦いを乗り越えて優輝が強くなったのを幸助は知っている

 しかしそれは当然のことながら優輝に限った話ではない


 勇泉での敗北以来、修行を詰んだ乙姫も同様に強さに磨きを掛けていたのだ


 『優輝に勝てたらな』なんて言ったものの幸助は戦いの行く末が心配になってくる

 そして口には出していないがクロもどこか不安げな表情でそれを見守っていた


 優輝は今もハンマーを伸ばし乙姫から距離を取ったり迎撃しようとしたりしているが軽々といなされてしまっている


 そしてまた強い一撃が優輝の体へとのしかかった。吹っ飛ばされて地面を何度かバウンドした後に勢いは止まらず転がる


「クソッ! こうなったら俺がーーーー」


「なーに言ってんのよ。そんなことしたら優輝の頑張りが全て無駄になるじゃない」


 もう見ていられない。堪らず飛び出そうとした幸助の服を引っ張って止めたのは今まで黙っていた永愛だった


 心配そうに戦いを見守る幸助、クロと違って永愛は呑気な顔で眺めている


「てめぇ何しやがるーーーーって何だその顔は! 無関心か!」


「そんな訳ないでしょ! いい? あんたが最後に優輝の戦いを見たのはいつよ?」


「いつ? ってそりゃお前…………いつだ?」


 思い返してみると幸助の記憶の中に優輝が戦っている姿があまり思い当たらない


(勇泉で早乙女と戦って、詩巻でもガラ悪いのと戦って、花熊井で白猫の野郎とも戦ってーーーーあれ? もしかしてそれが最後か?)


 幸助が優輝の戦闘を見たのは花熊井が最後。つまり4ヶ月近く前のことになるのだ


 明日次との修行を開始した初日、幸助は優輝と一緒にいたはずだがその時は瞑想していたので見たと言うわけではない


 一緒に旅をしていると気が付かなかったが改めて聞かれるとそんなにも前のことになるのが意外だった


「一緒にいた期間が長いのはあんたの方だけどね。それでも優輝が頑張っているのを見てた時間は私だって負けてないわ」


 自分のことで必死になるあまり最近の幸助は優輝のことが見えていなかったのかもしれない


 永愛に面と向かって堂々と言われてしまうと少しばかり悔しさが込み上げてきた


「つまり! その私が大丈夫って言うなら大丈夫なのよ! 分かったら大人しく見てなさい。優輝が勝つ姿をね」


 腕を組み自信に満ち溢れた顔の永愛の視線の先には今も必死に戦う優輝の姿がある


 しかし状況は変わらず、攻める乙姫に守る優輝

 永愛はああ言ってたもののここから優輝がどう勝利へ導くのか。幸助には全く予想がつかなかった


「また2人の間が縮まってるね。これじゃあまたすぐに1発もらっちゃうよ」


 なんとか距離を取ろうと頑張る優輝だが乙姫はそれを許さない

 優輝がどれだけ逃げようとも確実に自分の武器が届く距離を保ち、隙があれば更にその先へと踏み込んでくる


「もう1発キツイのいくわよぉ!」


 優輝の隙を突いて乙姫が大きく前進した。そして鞭を振るおうと腕を振り上げた瞬間


「ここだぁ!」


 優輝もハンマーを伸ばした


 しかしそれは後ろへではなく前へ


 その姿を待っていたと言わんばかりに永愛はニヤリと笑う


「優輝の戦い方を見て接近戦はないと踏んでたんでしょうけど残念だったわね」


 不意の行動に対して乙姫は少し反応が遅れた。その間にも優輝は目の前まで迫りハンマーを振るおうとしている


(回避! ……は間に合わない。ならば防御よ!)


 ハンマーの軌道は読めている。ならばそこに腕を構えて衝撃を軽減させればいい


 しかし優輝が腕を振り抜いた時、来るはずの衝撃は来なかった

 なぜなら優輝の手にはハンマーが握られていなかったのだから


(じゃあハンマーはどこにーー?)


「こっちだよ」


 優輝が握っていた手を開くとそこには小さくなったハンマーが隠れていた

 そして乙姫に考えさせる時間も与えずにハンマーを大きくして再度振りかぶる



「今の優輝は接近戦でも充分戦えるのよ」



「くらえ必殺! ビックリハンマー!」


 優輝の攻撃は乙姫を捉え、大きく吹き飛ばした


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