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獅子座の登場


 予想だにしない返事をもらった優輝は数秒間固まっていた


「……え?」


 乙姫に聞き返すように同じ言葉が自然と口から出てくる


「だから嫌よ」


 またしても数秒の間が空く


「なるほど……それはつまりどういうことだい?」


「何回聞いても同じよ。嫌、お断り、無理、拒否、却下!!」


 これ以上ないってくらいに断られた


 確かに乙姫は勇泉でのリベンジをしたいと言っていた

 だから良いチャンスだと思い優輝も再戦を申し込んだ


 しかし断られた


 何故断られたのか理解出来ない優輝は先程から固まりっぱなしである


 確実に受けてもらえるものだと思っていただけに少しカッコつけてしまったことが途端に恥ずかしくなってくる


「なんで!? どうしてよ!? リベンジするチャンスだよ!?」


 漸く断られたということを実感出来たのだろう

 優輝は声を荒らげて乙姫にしつこく尋ねる


 そんな優輝を見かねてため息をついた乙姫は静かに口を開いた


「リベンジしたいのは本当よ。でもしたいからといって出来るほど簡単な話じゃないのよ」


「……どういうこと?」


 したいけど出来ない?

 そこにどんな意味があるのか分からず優輝は首を傾げる


「言ったでしょ? 任務中なの。それを放棄してまであなたと戦うなんて一緒に頑張ってくれている部下に示しがつかないわ」


 乙姫が断った理由は立場の問題だった


 高苅に任務に来ているのは乙姫だけではなく彼の部下も来ているのだ


 かつて敗北した相手にリベンジをしたいと言えば部下達は快く了承し応援するだろう


 しかし乙姫自身がそれを許せなかったのだ


 部下が必死になって街の見回りや異端児との戦闘などに勤しんでいる中で乙姫だけが自分の都合で動くことなんて上司としてのプライドが許さない


 そこまで言われてしまうと優輝も納得せざるを得なかった


「そっか……。任務の邪魔して悪かったね」


「こっちこそ悪かったわね。せっかくいいお誘いをくれたっていうのに。……しかし不思議なものね」


「何が?」


「元々ーーーーいや、今もね。あなた達とは敵同士なはずなのに久しぶりに顔が見れて、お話出来て楽しかったって思っている自分がいるの」


 そう言って微かに微笑む乙姫の顔をどこか寂しそうに感じたのは優輝だけではない


 後ろに立っていた幸助もクロも永愛も同じことを感じていた


「なんか柄にもないこと言っちゃったわ。またどこかで会えたらいいわね……それじゃ、あたしは行くわ」


 だが乙姫に対してどんな言葉を掛ければいいのかが分からず去っていく後ろ姿をただ見送ることしか出来ない


 その時だった


「乙姫姉さぁぁぁぁぁん!!!」


 沈んだ空気と気持ちを吹き飛ばすかのような底抜けに元気で明るい声と共にある男が現れた


「玲王ちゃん!? どうしてここにいるのよ?」


 その男の正体は宍戸玲王ししどれお

 彼はいま別の場所で乙姫と同じように異端児相手に任務を行っていたはず


 普通ならばこんな所にいるはずがない玲王の姿がどうして高苅にあるのか


 乙姫は目を大きく見開き驚いていた


「いやー、ちょっと高苅ここに用があって飛んで来たんスけど急いでたら間違って隣の町に行っちゃったんスよ。だから超走って来たッス!」


「来たッス! ……じゃなくてあなた任務中でしょ? 部隊長にバレたらタダじゃ済まないわよ?」


 心配する乙姫の忠告など毛ほども気にしない様子の玲王は人差し指を立て左右に数回振った


「チッチッチッ。甘いッスね乙姫姉さん。それならもうとっくにバレてーーーーじゃないッス! 俺は今新たな任務を遂行中なんスよ!」


「新たな任務? どういうことかしら?」


 『新たな任務』という玲王の言葉に反応した乙姫は驚きから一転、眉間にシワを寄せて聞き返す


「不破幸助ってやつとその仲間の黒猫を探してるんスけど乙姫姉さんなんか知らないッスか? 高苅にいるだろうって部隊長が言ってたんスけどーー」


「それならあそこにいるわよ? ほら、こっちを見てるでしょ?」


 乙姫が指さした方向へ首を捻る玲王

 そこには何やら不思議そうな顔でこちらを見つめる男が2人、女が1人、そして黒猫が1匹


「……なんか思ってたより普通ッスね。乙姫姉さん倒したり明日次さんが褒めてたからもっとゴリゴリのマッチョマンを想像してたんスけど……」


「そうね。見た目は普通の男の子よ」


 玲王の頭の中には黒光りのムキムキボディでスキンヘッド。ニヒルな笑顔の似合うワイルドな男の勝手なイメージが出来上がっていた


 しかし実際に姿を見てみればイメージとは遠くかけ離れている


 身長は高いが飛び抜けて高い訳ではない。あの程度ならば自分の周りにもいるしもっと大きい人だっている


 筋肉もそれなりにありそうだが思っていたよりもずっと細い


 そして髪の毛が生えている


 正直ガッカリしたと言うのが初対面の感想だったがそれもすぐに撤回されることになる


「でも強いんスよね?」


「ええ。恐らく玲王あなたより、乙姫あたしよりもずっとね」


 見た目がどうであれその実力は本物

 それは今まで他の幹部から聞いた話が証明していた


「それならいいッス。んじゃ行ってくるッス」


「ちょっと待ちなさいよ。あなたの任務ってあの子達に関係あることなの?」


「あの不破幸助って奴を倒すのが俺の任務ッス! ちゃんと部隊長からは戦闘の許可も貰ってるッスよ」


 玲王が授かった任務はあくまで偵察だったがそんな言葉などとっくに忘れている上に自分の都合の良いように書き換えられている


 しかし玲王の言葉は結果的に乙姫の闘志に火をつける形になった


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