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ハッピーボトル ~不運な男が世界を救う~  作者: 縞虎
修行とクロの正体
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必殺ビックリハンマー


修行開始から2週間が経過していた

毎日クタクタになりながらも修行を続ける優輝と永愛はその力を順調に伸ばし受ける矢の数も日に日に減っていった


「行くわよー!」


開幕早々に突進をかける永愛の癖は相変わらずだが最初のような全力特攻ではなく回避に当てられるだけの余力も残しつつ相手に立ち向かう


まずは突撃した永愛が明日次にカウンターを貰うのがいつもの流れとして定着しつつあったが今ではその流れも払拭出来た


「いい動きが出来るようになったな。俺も迂闊に攻撃出来なくなっちまったよ」


だが明日次の動きにはまだまだ余裕が見られる。永愛の素早い攻撃にもしっかり反応し朝飯前といった感じで軽々と躱してみせる


永愛だけの攻撃では明日次を捉えることはまだ難しい。そこで優輝の出番なのだ


永愛の攻撃を目隠し代わりにしその背後から密かにハンマーを伸ばしてくる

急に永愛が退いたと思えばいきなり優輝のハンマーが現れた時は流石の明日次も冷や汗をかいた


しかしそれも数日前に試した事で次の日からはしっかりと警戒されてしまったため今も新たなコンビネーションを模索しているところだった


2人の当面の目標としては明日次から余裕を奪い去り本気を引き出すこと。そして本気にさせたうえで一撃入れて勝利を収めるのだ


その為には日々新しいことを試していく必要がある


(……?優輝からの攻撃が止まったぞ?)


永愛の攻撃を捌きながらも優輝の警戒を怠らなかった明日次だったが突如優輝からの援護が無くなった

と思いきや優輝がこちらに向かって走ってくる


(優輝は接近戦はそこまで得意じゃないはずだったが……いやそれよりもーーー)


正直言わせてもらえば優輝が近くにいることくらい明日次にとっては大した問題ではない


優輝の恐ろしいところはどこまでも伸びるハンマーをこちらの射程外から振るってくることだ

接近戦がヘタクソな優輝が近くに来て武器を振り回してしまっては自分の持ち味を全て殺してしまうことになる


しかし今の優輝にはいつもとの決定的な違いが1つだけあった


(ハンマーはどこいった?)


数秒前までは豪快に振り回していたハンマーの姿がどこにもない。上下?左右?それとも後ろか?

明日次がハンマーの行方に気を取られている間にも永愛の攻撃は止まず既のところで1発貰いそうだった


そうこうしている間にも優輝はどんどん距離を詰めてくる。1度大きく後ろに飛び距離を取ってから弓を構えて矢を放つ

しかしそう易々と上手くはいかず矢は永愛が弾き落とした


彼らとて伊達に何日も黙って攻撃を受けている訳ではないのだ


続けて放たれる矢を全て撃ち落としながら永愛、そしてその背後を優輝が走りながら迫る


(面白いな。もう細かいことを考えるのはやめだ。何をするか見切ったうえで完璧に避けてやるよ!)


矢を放つことをやめて明日次は躱すことに全神経を注ぐ。その様子を見た永愛と優輝にも緊張が走る


これが最後の攻防になるだろう


(絶対に当てる!)


(絶対に避ける!)


己の理想を描いた者がこの戦いの勝者となるのだ


短剣を強く握りしめた永愛は明日次の目前で大きく飛び上がった

自分の真上を飛び越えていく姿に明日次は一瞬驚き、そして見とれる


しかし彼らの本命はこの次に来る優輝だ。明日次が視線を戻した時には優輝は既に殴りかかってくる最中だった


「遅えよっ!」


優輝の拳は簡単に受け止められてしまった。しかし油断するにはまだ早い


「まさかこれだけでお終いなんて言うんじゃないだろうな?」


明日次の言葉にその背後で永愛はニヤリと笑う


「当たり前じゃない。見せてやりなさい優輝!」


「行くぞっ!くらえ必殺!ビックリハンマー!」


優輝が受け止められた拳とは逆の掌を開くとそこには居所の不明だったハンマーが小さく姿を変えて隠れていた


そして優輝の言葉でハンマーは瞬時に大きさを変化し明日次目掛けて飛び出す


それは明日次が避けるよりも速く彼の体を捉えた


「痛ってぇ〜……ってうおおっとっとっと……どわぁ!!」


「きゃあっ!」


ハンマーに押されよろけた明日次は後ろに2歩、3歩、最後は背後にいた永愛を巻き込んで派手に転んだ


「悪い!大丈夫か?」


すぐに立ち上がり明日次が手を差し伸べると永愛もそれを受け取った


「別に大丈夫よ。それよりもーーー」


「1発与えたよ!」


2人の作戦により見事課題をクリアした優輝と永愛は喜びからハイタッチをする


嬉しそうな2人の姿を見ていると負けた悔しさよりも子供の成長を喜ぶ親のような気持ちが大きくなる


「お見事、俺の負けだ。そんじゃあ一区切りついたし今日はここで終わりにするか」


「何言ってんのよ。まだ明るいじゃないの」


「そうだよ!まだまだ試したいことが沢山あるんだ!」


買い物では散々振り回されたし泣きたくなるほどの食事代を持っていかれた

しかしみるみる成長する姿や今もこうしてすこぶる元気な姿を見せられるとどうしても嫌とは言えない、むしろ嬉しくなってくる


「子供っていいもんだな……」


「子供扱いすんじゃないわよ」


「いや、そういうことじゃないんだ」


「じゃあどういうことよ」


「秘密さ」


「何よそれ。変なの」


この2人と行動するようになってから何かと親心を感じるようになった明日次だった

その後も元気な2人に引っ張られるように修行は続いたが明日次にもう1発与えることは叶わず日が暮れてその日の修行は終了となった


「うへぇ〜。疲れたね〜」


「それはこっちのセリフだよ。どれだけ付き合わせれば気が済むんだっての」


「終始涼しい顔してた癖によく言うわ」


「そんなことないさ。これでもかなり焦ってたんだからな」


「とにかく今日は1歩前進できたね。明日はもう1歩先に進めるよう頑張るよ!」


「勘弁してくれよ……。こっちは疲れが溜まってとれないんだから」


明日次の想像を上回るスピードで成長する2人に体力が追いつかなくなり始める31歳

明日次の中では自分と対等に渡り合えるまで修行を続けていくつもりだった


そうすればこの先の戦いでも生き残ることが充分可能だと考えていたからだ


しかしその2週間後


笑い合う3人を嘲笑うように運命は狂い始めていくのだった


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