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ハッピーボトル ~不運な男が世界を救う~  作者: 縞虎
修行とクロの正体
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無限大胃袋


買い物と飯だ。という明日次に連れられて病院から出た優輝と永愛だったが3人集まってからどうも様子がおかしい

明日次はいきなり女性の扱い方とか聞いてくるし永愛は頬を膨らませて怒っている


2人の間に何かがあったのは確かだがそれがなんなのか、優輝には見当もつかなかった


「よ、よーし。まずは飯から行こうかー。何が食いたい?俺が奢ってやるぜー」


無理矢理テンションを上げている感じの明日次はどこか永愛の機嫌を伺っているようにも見える


「どこでもいいわよ」


「そんなこと言わずにさ。なんでもいいんだぞ?ラーメンか?焼肉か?」


男らしい明日次のチョイスに優輝も呆れてしまう。そりゃラーメンも焼肉も好きな女性は沢山いるが機嫌を取るためにそのチョイスはどうなんだろうかと思うがこの状況だと口に出し辛い


せっかくの休息だというのにこのままではギスギスした雰囲気で1日が終わってしまいリフレッシュどころか余計に体も心も重くなってしまいそうだ


「……何があったかは聞かないけど永愛も機嫌治してさ。明日次さんも謝ってそれで楽しくいこうよ。滅多にない機会なんだしさ」


間に優輝が入ることによって永愛の表情も少し和らいだ。助け船の登場に明日次は神を崇めるような顔で優輝を見る


「そうね。着替え覗かれたくらいでちょっと大人気なかったわ。幸いお腹しか見られてないんだし」


「ほんっとに済まなかった!次からは気をつけるから!」


明日次も謝って永愛も機嫌を治してこれでこの話はおしまいーーーという風にはいかなかった


「え?永愛が何されたって?」


「だから着替えを覗かれたーーーって何度も言うのは恥ずかしいんだけど」


仲介に入ったはずの優輝の様子が変わった。どうやら聞き捨てならない内容だったようだ


「ちょっと待て!覗いたって言うのには語弊があって扉を開けたらたまたま永愛が着替えててーーー」


必死に弁解する明日次の努力虚しく優輝の視線はゴミを見るように冷たい


「それは怒られて当然だよ佐渡さん」


「そんな目で見ないでくれ!あと距離もとらないで!」




病院を出て少し歩いた先には羽壱はいちという大きな街があった。街中には沢山の人が買い物をしたり食事をしたりと様々なことを楽しんでいる


そんな人混みを避けるかのように裏路地にひっそりと佇む寿司屋から出てきたのはさっきまで機嫌を悪くしていたとは思えないほど満面の笑みを浮かべる優輝と永愛の姿

そしてその数歩後ろで肩を落としゾンビのようにユラユラと歩く明日次は自身のLHMカードを見つめていた


「美味しかったね。街の人にオススメのお店聞いてよかったー」


「あんなに美味しいお寿司食べたの生まれて初めてよ」


「……満足いただけたようでなによりだよ」


LHMカードと一緒に明日次の手に握られていたのは領収書。それを見たくないとでも言いたげに無造作に財布に突っ込んだ


「花熊井でのバイト代あるんだし大丈夫でしょ?」


「星降守護部隊ってやっぱり給料いいのかしら?」


「やかましい!お前ら2人で10万円以上も食いやがって!どんな胃袋してやがんだ!」


彼らの寄った寿司屋は知る人ぞ知る名店なだけあって一般人には到底手が出せないような金額なのだ

しかし値段に見合うだけの味は保証されている

それを気持ちよい食べっぷりでたいらげる優輝と永愛に大将も嬉しそうな顔をしていたらしい


泣いたのは明日次だけであったがこれで2人の機嫌が治ったと思えば値段以上の価値があったかもしれない


「さて、それじゃあ買い物に行くか」


「買い物って何を買うつもりなの?」


「明日からの修行で使うものさ」


詳しい答えは教えてくれないまま明日次の後を付いていくと大きなお店に到着した

雑貨や洋服、食品にその他色々が揃うショッピングモールだ


見たことのない世界に優輝と永愛の心は踊る。どこもかしこも輝いて見えて何度も首を右へ左へ、まるで扇風機のようだ


「すっごい!なんなのよここ!?」


「キラッキラ!キラッキラだよ!」


「あんまりはしゃぐなって。目立つから」


小さな子供のようにはしゃぐ2人から目が離せない。片方を抑えればもう片方がフラフラとどこかへ消えて行きそうになる

結婚どころか恋人すらいない明日次だが休日の父親の気持ちというものが分かった気がした




「いやー凄かったね」


「世界にはこんなところがあったのね」


「ハァ……ハァ……。疲れた」


結局あっちこっち引っ張り回されてしまった。当初の予定など忘れ嵐のように沢山の店舗を駆け抜けご満悦の2人の側で明日次はイスに座ってグッタリしている


「いやーそれにしても………………お腹空いたね」


「そうね」


「嘘だろお前ら!?」


優輝から飛び出した衝撃発言に永愛も乗っかってきた。あれだけ寿司屋でたらふく食べたのにその小さな体のどこにそんな余裕があるのか

仕方なく2人を飲食店に連れていきそこで待っているように指示すると明日次は目的を済ますために人混みの中へと消えていった


「くっそー。俺が悪いとは言えここまで大変な目に会うとは思ってなかったぜ。……ってもうこんな時間か!早く帰らないと幸助もクロも心配するだろうな」


時刻はいつの間にか夜7時を過ぎていた。明るいショッピングモールの中からだと外の様子は分かりづらい


流石に幸助もクロも帰ってきていると考えると待たせる訳にはいかないのでさっさと買い物を済ませ優輝と永愛を待たせている飲食店に戻った


「満腹満腹!」


「悪いわね、またご馳走になっちゃって」


この店は昼の寿司屋と違って決して高い店ではない。リーズナブルな価格で食べられるごくごく普通の飲食店というのは周りにいる客層を考えればすぐに分かる

ーーーはずなのだがレジにて表示されたのはまたもや目を疑いたくなるような金額


明日次は再び泣くことになった


「なんか幸助とクロに申し訳ないね」


「次はまたみんなで来ればいいじゃない。ね!」


そう言って永愛は明日次に眩しい笑顔を見せる。その笑顔の裏にはとんでもない悪意が潜んでいそうで頬を一筋の冷や汗が伝う


「次は奢らねーからな」


「分かってるわよ!失礼ね!」


そんな卑しい女に見えたのかと永愛は怒るがその顔と言葉に明日次はホッと胸を撫で下ろした


初めてのショッピングモールや満腹になるまで食べたご飯にすっかり機嫌を治した優輝と永愛

失うものは多かったが無事仲直りもすることが出来た明日次


そんな3人が泥だらけ血だらけで帰ってきた幸助とクロを揃って怒鳴りつけるのはもう少し後の話になる


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